第8.4話 誰かいる?!

 この手のトラップは考えたって答えが出るものではない。どれだけ歩いても家に帰れないと言う話は昔話の頃からある定番の展開のひとつだ。昔話の場合、それをやっているのは狐か狸だった。今の俺も、イタズラ好きな狐か狸に化かされているのかも知れない。

 だとすれば、さっき追いかけてきたゾンビ達も本物ではないのかも知れないな。


「あはは、なんだ、そーだったのかあ」


 俺は、さっきのゾンビの大群が本物じゃない可能性に辿り着いて大笑いする。追いかけられていたあの女子も狐とかが化けたもので、俺を騙すための仕掛けだったかも知れない。


「騙されないぞーッ! あははは!」


 あんなゾンビが本物であるはずがない。本物であってはいけない。だから本物じゃないんだと俺は自分に言い聞かせた。人を騙す動物がいたとしたらの前提ではあるけれど、俺は強引にこの現象の原因をそれだと決めつけて安心する。

 怪奇現象は幻であり、現実にはおかしな事は何も起こっていないんだと思いこむ事で俺の心は軽くなり、足取りも軽くなった。


 幻術はからくりが分かれば解除出来る。幻だと見切った以上、今度こそ元の帰り道ルートに辿り着くだろう。俺の中でその方程式が成立したので、後はそれを証明するだけになった。

 こうして心も足取りも軽くなったものの、結果はさっきまでと何ひとつ変わらなかった。どれだけ歩いても知っている帰宅ルートに戻れなかったのだ。


「何で帰れないんだよおお!」


 俺はリアクション芸人ばりに自分の考えが正しくなかった事に、現実の理不尽さに大声を上げて抗議する。こんなはずじゃなかった。上手く行くはずだったのに。

 どれだけ歩いてもループすると言う事は、まだ幻術が解けていないと言う事だ。この状況を作っている元凶を見つけ出して止めさせないと俺はずっと迷うばかりなんだ。そんな結論に達した俺はそいつを探す事にした。


「見てろよイタズラ狐め! お尻ペンペンの刑だ!」


 俺は心に静かな怒りを燃やしながら手当たり次第に目に止まった道を歩く。確証はひとつもないから、何もかもが当てずっぽうだ。クネクネと蛇行しながら歩いていると、前方に人影が見えてきた。今まではずっと人に会わなかったから、歩き回る事で何らかのフラグが立ったのかも知れない。

 あの人影は一体誰なんだろう? この状況を打破してくれる救世主なのか、それとも――。



 会いに行ってみよう

 https://kakuyomu.jp/works/16817330648988682894/episodes/16817330649105728213

 ここは逃げの一手!

 https://kakuyomu.jp/works/16817330648988682894/episodes/16817330649105765844

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