第9話 俺の前に現れた人影、その正体
1人になってからは誰にも会わなかった。きっとそれはループに入ったと言う事と関係があるのだろう。突然目の前に人が現れたと言う事はつまり、そのループのワナから脱したと考えて間違いない。俺は助かったんだ。これで家に帰れる!
嬉しくなった俺はその人影に向かって歩いて行く。突然知らない人に声をかけるのは不自然かも知れないけれど、会釈くらいはしてもいいだろう。普段は知らない人には近付かないのだけど、感謝したくなったのだから仕方ない。
相手もこちらに向かって歩いていたので、距離はどんどん近付いていく。ループしている間に日が暮れてしまっていたので、空にはいくつもの星々がキラキラと輝いていた。当然、周りは真っ暗だ。だから、どう言う人が歩いてきたのかはかなり接近しないと分からない。
ただ軽く頭を下げるためだけに近付いたものの、やはりハッキリ顔を確認してから感謝を伝えたい。と言う訳で、俺はズンズンと不審者のように歩行者に近付いていった。
「あ、あのっ。有難うご……」
「ウガ?」
「え?」
思わず声をかけてしまった俺は、相手からの反応に悪い予感を感じる。少なくとも、まともな人間の反応ではない。予想外の展開に身体が硬直したところで、相手の姿がハッキリ視認出来た。
生気のない顔色に光を失った両目。ボロボロの服に腐った両手両足。これは――。
「ぞ、ゾンビだーッ!」
「ウボオォォォ!」
正体が分かったところで、俺はまだ悪夢が終わっていない事実に愕然とする。絶望して膝から崩れ落ちるのを、ゾンビが見逃すはずもない。獲物を発見したハンターと化したゾンビは俺の肩を強い力で掴むと、ガバリと大きく口を開けた。
「うわあああーッ!」
極限の恐怖で大声を出した俺はベッドから転げ落ちる。その刺激で俺は目を覚ました。そう、俺は最初から自室にいたのだ。そして、醒めない悪夢から無事に逃れる事が出来た。当たり前の日常に戻ってこられた事に俺は胸をなでおろす。
時間を確認すると午前4時を少し過ぎた辺り。起きるにはまだ早いと言う事で、俺はもう一度ベッドに潜り込む。
「マジで夢だったのかよ。でも……」
いつから俺はこの悪夢を見ていたんだろう? あの女の子も、それ以前の様々な出来事も、全てが夢の中の出来事だったんだろうか?
頭の中のモヤモヤが晴れなかたっために、結局起床時間まで俺は一睡も出来なかったのだった。
悪夢から目覚めたエンド
あとがき
https://kakuyomu.jp/works/16817330648988682894/episodes/16817330651643883383
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