第12話 ゾンビ、数が多すぎんよ……

 集まってきていたゾンビは、見たところ20体くらいだろうか。俺はタコ頭を倒した事で、化け物も倒せるものだと知った。これ以上集まってこないのなら、ゾンビだろうともう全然怖くない。吹っ切れた俺はロッドを伸ばして臨戦態勢を取る。


「来んのかよ! やんのかよオラアア!」


 思わずヤンキー化した俺は、近付いてきたゾンビに向かってフルスイング! ゾンビは一撃で呆気なく倒れた。そこで分かった事は、人間やる気になれば結構やれると言う事だ。世の母親の常套句『この子はやれば出来るんです』を俺は今ここで実感する。

 どうやら、ここに集まってきたゾンビはみんな雑魚のようだ。俺の敵じゃない。ここで殲滅してやるぜ!


「うおおおおおお!」

「待って!」


 背後でマイが俺を止めようとしている。だけど、そんなのは当然無視だ。今の俺は無敵モード。このくらいのゾンビなら、すぐに全滅させられる。

 俺は襲ってくるゾンビを殴って殴って殴り続けた。面白いようにゾンビはふっ飛ばされていく。アドレナリンが俺をゾンビ殺戮マシーンに変える。集まってきた20体は、程なく全てバラバラになった。


「ハァハァ……やった。全部倒したぞーっ!」


 俺は振り返って、心配そうにしている彼女に向かって両手を上げる。もうゾンビはいない。もう怯える必要はないんだ。なのに、どうしてマイの表情はさっきから変わらないんだろう。


 まさか――ッ?!


 彼女の表情の理由に気付いた時にはもう手遅れだった。別のゾンビの増援部隊がもうこの場所に着いていたのだ。俺が振り返ろうとしたところで、そのゾンビが俺の左肩に噛みついた。


「ぐああああああ!」


 痛みに苦しみながらも、俺はそいつを何とか殴り倒す。その場に倒れかけながらも何とか顔を上げると、俺の目に映ったのは無数のゾンビの群れだった。多分100体以上はいるだろう。

 流石の俺もこの数の暴力に思考停止する。すると、このチャンスを逃すまいとゾンビ達が一斉に襲いかかってきた。


「う、うおおおおおお!」


 俺も力の限り応戦するものの、やはり多勢に無勢。どんどん状況は厳しくなってくる。ゾンビは楽に倒せても、腕を振る度に疲労は溜まっていくのだ。限度ってものがある。

 しかし、その限度をゾンビ達は全く配慮してくれなかった。


「ハァハァ……ちょ、ちょい待……」


 俺が膝を押さえて呼吸を整えていたタイミングで、10体程度のゾンビが一斉に襲いかかってきた。どうやらコイツらに恐怖心と言うものはないらしい。奮戦虚しく、俺は体の各部をゾンビ達に噛まれてしまう。

 腕、肩、くるぶし、太もも、腹、首……様々な場所を噛みちぎられて激しい痛みが襲い、俺の意識は徐々に遠くなる。


「もう、ここま……」

「キャアアア! あっちに行って! 行きなさいよォォォ!」


 薄れゆく意識の中で必死に振り返ると、守るはずだったマイもゾンビに襲われているのが目に入った。噛まれないように何かを振り回している。

 あいつ……逃げなかったのか……。時間は作ってやってたのに……な……。



 やがて、数の暴力に負けた俺達は2人共ゾンビに食べられてしまったのだった



 ゾンビの餌食になってしまったエンド




 もう一度最初から

 https://kakuyomu.jp/works/16817330648988682894/episodes/16817330648990233938

 このエピソードの最初から

 https://kakuyomu.jp/works/16817330648988682894/episodes/16817330649068856685

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