第34話
2月後半。
ウルフダンジョンからの帰り道。
五十嵐さんの協力もあり、ウルフダンジョンに通い続けた事でようやく俺たちのパーティ全員がレベル20へと到達した。
ステータスが少し上昇したことで、ダンジョンも現在では3階層まで潜ることができるようになったし、討伐スピードが上がり収入も良くなった。
しかし、キラーの称号を取るには討伐スピードが足りないため、このまま先の階層へ進み、ボス討伐に成功したらこのダンジョンは一旦終了の予定だ。
他のGランクやFランクのダンジョンに向かうのか、スパイダーダンジョンにチャレンジするのかは、このダンジョンをクリアした後に仁さん、蓮さん、亜紀さんの三人が判断するとの事になっている。
3人のうち2人が「スパイダーダンジョンに潜っても問題なし」と判断すればチャレンジできるが、「まだ実力が足りない」となればキラー獲得のダンジョン巡りとなる。
「個人的には、キラー獲得のダンジョン巡りも楽しそうだと思うんだよな。」
そう言うと、南さんと望月さんが「分かる!」と同意してくれた。
「やってる最中は苦行だけどさ、獲れた時の達成感がすごいんだよね~♪」
「うんうん!まぁ、私はめぐちゃんのサポートがあったからアレだけど、獲れた時嬉しかったなぁ。」
そう、二人の言う通り、やってる時は苦行なのだ。なんせ1ヵ月に1万も同じ魔物を狩り続けるわけだから、1日のノルマを達成できなかった時なんて気が気じゃない。
強い冒険者であれば、低ランクダンジョンのモンスター相手に1万匹は楽勝かもしれないが、俺たちにとってはかなりのハードモードだ。現にEランクのウルフは討伐スピードが足りず諦めている。
「でも、もし他のダンジョンに行くとしたら、その間のアイテム作成ってどうするんだろ?今月みんなが頑張り過ぎたおかげで、クランの倉庫が素材で溢れかえってるよな?特に木で…。」
「いや、溢れかえってるっていうか、アレは完全に溢れてるって言うでしょ…。廊下とかの置ける所にも置いてあって邪魔じゃん?」
「一人ずつ一列にならないと通れないもんね。」
1月末のミーティングで仁さんに怒られた効果が出すぎたのか、蓮さんのパーティはありえないスピードで魔石の納品と木の回収を行っていた。
おかげで2月の中ごろには倉庫に他の素材が置けないぐらい木で埋め尽くされており、逆に怒られてしまうという結果になった。置ききれない木はギルドに納品することになり、今はスパイダーダンジョンに潜っているんだとか。
「そうそう、昨日仁さんたちが持って帰った鉄鉱石だけれど、鉄に精錬した物をクランハウスに届けたってギルドから連絡があったわよ。今日のアイテム作成は矢かしら?ちょっとは木が消費できそうね。」
俺たちの会話を聞いていた五十嵐さんが、鉄が手に入った事を教えてくれた。仁さんのパーティーから男二人が毎日ゴーレムダンジョンで鉱石集めをしているが、なかなかにハズレが多く、鉄は手に入ったと同時に矢に使ってしまうため常に在庫不足だ。
「やっと鉄が出たんですね!もう弓職人になれそうなぐらい弓作ってるので、そろそろ別の物も作りたかったんですよね。」
「あははっ。最近はポーションか弓しか作ってないもんね。」
「武器庫に増えていく弓を見て、スミレさんがちょっと困ってたよ。こんなにあっても使い切れないわよ~って。」
うちのクランに弓使いはスミレさんしかいないので、武器庫に大量にあった弓も予備だけを残して全てギルドへ納品され、新しく作った物も全て納品に回している。どこかで他の弓使いが使ってくれる事だろう。
「現状だと鉄が手に入らないと弓しか作れないから、もし他のダンジョンに行くことになっても問題ないんじゃないかしら?廊下の木はみんなが今のダンジョンクリアする頃には消費されていくと思うし、他のダンジョンへ修行に行っている間にこっちでは新しい素材集めして、帰ってきたらコウ君が一気にアイテム作成みたいな感じだと思うわよ。」
「じゃぁ、他のダンジョンに行くことになってもいいように、旅費を貯めておかないといけないなぁ。」
「うぅっ…旅費かぁ。私たちはいつまでお金に悩まされるんだろう…。」
「めぐちゃん、それは今さらだよ。収入が増えても結局は生活費と経費で飛んでいくの…。」
俺たちの収入は、ネカフェ暮らしをしていた時からすれば大幅に増えている。そして、クランに入ったことで生活費も削減されているはずなのに、なんでお金が貯まらないのか?単に武器の購入費のせいだったりする。
鉄が手に入ることで剣は俺のスキルで作ることが出来るが、銃は別だったりする。あれはダンジョンの素材を集めてもクラフト出来ないのだ。理由はこのファンタジーな世界になってから人間が作り出した物だから。この世界の仕様書には「銃」という武器は無かったらしい。
俺たちにとって必須の武器である銃がクラフト出来ないことで、きっとこれからも武器費用としてお金が飛んでいくのだろう。壊れない武器なんてないからな。
「とりあえず今は武器が一通り揃ってるわけだし、これからはちゃんと黒字になるだろ。稼げる金額は増えてるし、これからだって。」
そう二人を励ましておいてなんだが、これから挑むダンジョンが難しくなれば当然装備もいい物にしなければいけない。お金、本当に大丈夫かな?とちょっと心配になるのだった。
底辺の冒険者なので、スキルでポーション作って生計立てます。 KAZU @kazu855
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。底辺の冒険者なので、スキルでポーション作って生計立てます。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。