第33話

 1月末、クランのメンバーが集まりミーティングが行われることになった。主な議題はクランの財務状況・これからの予定に関してだ。


 「よし、全員集まったな!それじゃミーティングを始めるぞ~!」

 

 リーダーの仁さんが声を掛けると、隣に座っている副リーダーの亜紀さんが話し始めた。


 「それじゃ、まずはこのクランの財務状況から発表していくわね!まず、1月の今までの収益は…赤字よっ!!家具や備品を揃えるのに支出がかさんだから仕方がないけど、私たちの納品時のクラン活動費比率からすればもっとマイナスを減らせたはずよ!」


 そう言って、仁さんを挟んで反対側にいる蓮さんを睨んでいる。


 「蓮たちのパーティだけど、ゴーレムダンジョンに行き過ぎじゃない?今はお金が必要な時だから、私たちだって我慢してスパイダーダンジョンに潜ってるし、コウ達だって頑張ってアイテムと素材も納品して稼いでるんだよ?」


 蓮さんパーティメンバーみんなが冷や汗を流しながら目を泳がせている中、蓮さんが反論をし始めた。


 「いやいや、俺たちは鉄を集める目的もあって行ってたんだって!コウにクラフトしてもらう素材は少しでも多い方がいいだろ?それにもし当たりを引けばガツンと金が入ってくるし…。」


 この言い訳を聞いて亜紀さんが切れてしまった。


 「だ・か・ら!その当たりの確率が低いから今は地道に稼ごうって話だったでしょうが!今は赤字状態だから、仁さんの持ち出しのお金で運営してんのよ!?しかもコウにはクラン倉庫に入れてくれたアイテム代の支払いを待って貰ってるんだからね!」


 そう、実はクランの運営が赤字だから倉庫に入れたアイテム代の支払いを少し待ってくれと仁さんと亜紀さんに言われていたのだ。俺たちの納品時のクランへの活動費は、クランへ入金された途端に支払いで消費されている。それでも足りない分は仁さんのポケットマネーから補填されていたらしい。


 クランへの活動費の入金額が一番多いのは仁さんのパーティで、次いで亜紀さんパーティだ。そこからかなり金額が減っての蓮さんパーティ、俺たちのパーティとなっていたが、蓮さんパーティがちゃんと活動していればもっと収入があり、赤字も少なくすんでいるはずだと亜紀さん達は判断している。それでこのようにミーティングを行うことにしたらしい。


 仁さんもこれに関しては怒っているようで、蓮さん達を凄い勢いで睨んでいる。


 「俺はお前たちを養うためにクランに誘った訳じゃない。新人組の3人のスキルをしっかりと活かしてやってお互いに稼げる関係になるまで育てるのが元々の目的だ。スキルを上手くいかせれば、ここでならかなりの稼ぎになる。それまでは俺たち先輩が引っ張ってやらなきゃだろう?後々は彼らのスキルが大金を稼いでくれることになるんだからな。今、目先の欲に負けるようならお前たちは抜けてもらっても構わないぞ?他のパーティーを探す。」


 そう坦々と話した仁さんを前に、蓮さんパーティのメンバーがダラダラと冷や汗を流し、最終的には土下座をしていた。




 その後、これからの活動に関しての話に進んで行き、俺たちのウルフダンジョンで進捗やレベルの上がり具合を報告して、2月の間にレベルカンスト(20レベル)まではいって欲しいなという話になった。


 レベルが20になれば、俺の魔力量は200になる。そうすればこれから集める素材でのクラフトに掛かる魔力消費でも、ある程度の数は生産出来るだろうということだった。


 亜紀さんのパーティは遠方にあるバードダンジョン。ここでは色々な種類の羽が手に入り、クラフトに使う羽によって特殊な矢を作ることができる。この特殊な矢は弓使いがいるパーティーではよく使う物らしく、ギルドへ納品する際も高値で買い取ってくれるらしい。


 本来なら仁さんパーティーと鉄を集める役割だった蓮さんのパーティは、トレントダンジョン送りとなった。ひたすら木と魔石を集めてくるように言われている。


 仁さんのパーティは2人ずつに別れてスパイダーダンジョンで糸と魔石集め、ゴーレムダンジョンで鉄集めをすることになった。


 2月中に1月の赤字を取り返すつもりらしく、3パーティで徹底的に魔石と素材を集めまくるらしい。


 俺たちはウルフダンジョンに通う回数を増やし、レベルアップに努める事となった。そして五十嵐さんが動けず、こちらで活動するときは出来るだけ魔石集めに集中するように言われている。


 アイテムやポーションはいつも通り作るように言われたが、中級、上級ポーションを作るためにビックスライムやキングスライムを倒しに行く手間よりも、ゴブリン狩りで魔石を集めた方が効率が良いだろうということだ。



 ミーティングが終わり、それぞれが明日からの準備に散っていくと、仁さんが「これで来月は光熱費も抑えられるな…」とボヤいていたので、仁さんのお財布事情もちょっと危ういのかもしれない。

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