第32話
翌日、クローゼットからしまってあった鉄の剣を出して、一人でスライムダンジョンへ来ていた。今日は一日中ここに籠る予定で、討伐対象はビックスライムとキングスライム。 最近は自分で中級のポーションを使うようになったので、その補充と麻痺や毒用の中級以上のポーションもあると助かると仁さんに言われたので、今日一気に集めるつもりでいる。
下級用のスライムゼリーは仁さんに押し付けられたものがあるので、討伐対象がリポップするまでの時間は薬草採取をしたり、鉄の剣の重さに慣れる為に素振りをしたり走ったりする予定だ。
南さんと望月さんはゴブリン狩りに行ってくれているので、パーティーとしての収入は問題ないはずだ。南さんの銃の腕が上がってきたからか、ウルフ相手に少しずつ戦い慣れてきたからか、あの二人の対ゴブリンでの殲滅スピードがかなり上がっていて、いつもかなりの数を魔石を持ち帰ってくれている。
おかげでこうやってお目当ての素材回収に来ることが出来ているのでありがたい。
リポップまでに時間が掛かるので、ダンジョンに入るなり、すぐにビックスライムの所まで走り一撃で倒すと、素材だけ回収してキングスライムの所へ向かい、こちらも一撃で倒す。
「初めてここに来たときは何回も斬りつけてたっけ。1年でだいぶ成長出来たなぁ。」
今日装備しているのはレイピアよりも重い鉄の剣だが、走ってもそこまで重さが気にならないし、振った後も剣の重さでよろけることもない。
キラーを取るために毎日走り回り、ゴブリンやコボルトと連戦しているうちに、この剣の重さに耐えられるような体つきになっていたようだ。
「これなら、もっと早くに鉄の剣に戻しててもよかったかもしれないな。レイピアが折れたのも、いい加減こっちを使えってことだったのかもな。」
素材を拾いリュックに入れると、来た道を戻りビックスライムがリポップする時間まで薬草採取をする。狩りと採取を繰り返し、素材で一杯になったらクランハウスへ戻って素材を置いてから、また狩りと採取を再開する。
大量に素材を集められたのは良かったが、長期保存のできない薬草を集めすぎたために使い切れないと思われる分はギルドへ売却する事になった。
「途中からスライム狩りに切り替えればよかったかな?魔石のがお金になったかも。」
「まぁ、ゼリーも大量にあるしいいんじゃない?薬草も少しだけどお金になったし。」
「うんうん、ゼリーは余ってるし、薬草は足りないより余るぐらいのがいいと思うよ。薬草がダメになるまでは取りに行かなくてすむし。」
望月さんと南さんがやさしくフォローしてくれるので、今回は甘えておいて、次からは持ち帰る分量とかもしっかり気を付けようと思う。
☆☆☆
side:望月
今日、私の腰には予備の短剣ではなく銃が下げてある。コウ君が「今日は一日中スライムダンジョンで素材集めをするから」と銃を貸してくれたからだ。
私にはエアバレットという空気の弾を打ち出す魔法があるけど、さっちゃんも銃を使い始めたので、パーティでは私だけが銃を持っていない。
基本的に魔法使いはレベルが上がると新しく強い魔法を覚えていくので、銃を持つよりも火力のある魔法を使った方が倒す時間も魔力面も節約になると言われている。
でも、私も銃が欲しいな、使ってみたいなと感じていた。今日は銃を貸して貰えたので早く使ってみたくてうずうずしている。
「めぐちゃん、なんだか嬉しそうだね。」
「さっちゃん達が使ってるの見てて、私も使ってみたいなぁって思ってたんだよね。今日は思う存分打ちまくってやるぞ~♪」
「あはは、めぐちゃんの場合はエアバレットの方が魔力コストはいいんだけどね…。でも、お金に余裕ができたら3人お揃いで持つのもいいかもね♪」
そう話しながら、さっちゃんは次々とゴブリンを撃ちぬいていく。私は、3発に1発は外してしまい、すぐに予備のマガジンの分も使い切ってしまった。やっぱり魔法のエアバレットとは違い当てるのが難しい。でも、銃を撃つのは魔法よりも楽しい。
私もお金を貯めて銃を買おう。さっちゃんも「お揃いでいいかも」って言ってくれたし、コウ君には「ダンジョンで魔力切れた時用に」とでも言っておけばいいや。
銃を撃つのが楽しかったとか、みんなとお揃いが良かったとか言うのは恥ずかしいから、実用的な理由を言っておくつもり。
「よしっ!エアバレット!」
撃ち出した5発の弾がゴブリン達の頭に穴を空けていくのを見て、すぐにドロップした魔石と素材を拾いに行く。お金を稼ぐ為にも、今はエアバレットで我慢しよう。
「めぐちゃん、もう銃はいいの?」
「うん、魔法のがたくさん倒せるから。銃を買うためにもどんどん倒さないと!」
「そっか、みんなでお揃いになるの楽しみだね♪」
その後、二人でさらにペースを上げてゴブリンを狩り続けたら、魔石の回収量が過去最高になり、クランハウスの納品ブースではみんなに驚かれてしまった。
あ~、早く私の銃欲しいなぁ。
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