第31話
あれから少ししてから蓮さん達が大量のトレントの木とDランク魔石を持ち帰り、俺はさっそくトレントの木を使い弓を作ることになった。
間に合わせで作った弓は、消費魔力5・木の棒+糸で、Dランクのドロップ品を使っているのに本当にただの弓だった。
そして、今回作ったトレントの弓は、消費魔力10・トレントの木+糸で、トレント弓が出来上がった。見るからに丈夫そうで、少し重そうだ。弓使いのスミレさんが「ありがとう」と手に持つと、うんうんと頷きながら確認をしている。
「これなら大丈夫そうね。間に合わせの弓は、いつ壊れるか心配でヒヤヒヤしたわ。」
いつものように射ると壊れちゃいそうで…と言っていたので、やっぱり間に合わせの弓では実力が発揮できなかったようだ。
「それにしても、こんなにトレントの木をどうするんですか?倉庫の一角が木で埋まってますけど…。」
蓮さん達が大量にトレントの木を持ち帰ってくれたが、倉庫の一角に木が沢山置かれている。車に無理やり積んで、運転手以外は電車で帰ってきたんだとか。
「スミレさんの矢を作ってもらうのと、俺たちの盾を作って欲しいんだ。」
「足りない素材はこれから徹底的に集めるから、コウはレベ上げ頑張れよ!」
まずは、自分たちが使う事になる装備を作るということで、蓮さんや仁さんたちは鉄を求めてゴーレムダンジョンで鉱石集めをするらしく、亜紀さんたちは鳥系のモンスターの出るダンジョンで羽集めをするらしい。
鉄がある程度集まったところで、蓮さんはまたトレントの木を採りに行き、仁さんは高品質の糸を求めてDランクダンジョンの下層へ向かうそうだ。
高品質の糸を使って作られたインナーシャツは、丈夫で破れにくいため少しだが防御力が期待できるらしい。仁さんは、クランのみんなが少しでも安心してダンジョンに潜れるようにと、全員分のシャツを作るつもりらしく、全員にシャツが行き渡るまでは下層へアタックし続けると言っていた。
「全部Dランクのドロップ品だからかなり魔力が必要になりそうだな…。」
「素材のランクが上がると消費魔力も増えるんだっけ?」
俺がボヤいていると、望月さんが質問してきた。
「基本的には、ランクが上がれば消費魔力も増えるな。作るものによるけどDランクだと1回に少なくとも10前後は消費するはず。あ、でもサンドゴーレムの砂岩だけは消費3で瓶が10本作れるんだったかな?」
「それなら砂岩も持って帰ってきてもらえば?クラフト出来るなら、買わなくて済むんじゃないの?」
「いや…お金にならないのに重いから悪いかなぁって思って。空瓶10本で200円だから、ドロップ品の砂岩の売値ってほぼ無いに等しいからさ。瓶を作るなら矢とかシャツとか別の物を作るのに魔力使った方がいいと思うし。」
「それもそっか。高い物作った方がお金になるもんね!」
望月さんと喋っていると「二人ともそろそろ行くよー」と南さんが呼びに来たので、五十嵐さんの運転でウルフダンジョンへ向かった。
☆☆☆
あれから何度もウルフと戦闘を重ねているうちに、3人共レベルが少し上がり、俺と南さんが12レベルに、望月さんが13レベルになった。
そして、一番の問題だったウルフへの攻撃もヒット率が上がり、一日の討伐数が増えて、今では一人あたり6000円程度を稼げるようになってきている。
今までは防具を作るために持ち帰っていた革も、ストックがある程度出来ており、今日からは売却することに決めているので稼ぎはもっと多くなる予定だ。
戦闘に関しては最初の頃と変わらず、最初に銃撃してから剣での戦闘という流れだ。ウルフを二匹まで減らしたら、望月さんが一匹を、俺と南さんでもう一匹を相手取る。
向かってくるウルフに対して俺が突撃して行くと、足の遅い獲物に見えるのか高確率で俺に飛び掛かってくるので、ウルフの気を自分に引き付ける為にもレイピアを突き出す。いい感じに当たれば御の字。当たらなくても早さを生かしてウルフの側面に回り込んだ南さんが横っ腹に攻撃する手はずになっている。
「グルァァ!!」
「串刺しにしてやるっ!(何回やっても怖え~っ!)」
正直めちゃくちゃ怖い。自分自身を囮にしているから仕方がないが、この戦法にしてから何回噛みつかれたことか…。おかげでゴブリンの時にはほとんど使われなかったポーションのお世話になる回数が増えた。でも南さんにカッコ悪い所は見せたくないので、気合を入れてレイピアを突き出すが、今回もまた避けられ腕に噛みつかれてしまった。
「痛ってぇっ!バカッ!噛みすぎだ!革貫通してんじゃねぇかっ!」
「やーーっ!」
ウルフが俺の腕に噛みついている間に、南さんが横からウルフを攻撃し倒してくれた。
「あ、ありがとう。」
「ど、どういたしまして。ってコウ君、腕から血が出てるよ!ポーション掛けとかないとっ!」
南さんがポーチからポーションを取り出し、腕に掛けてくれる。ちょっとした傷なら低級で済むが、今回のように牙がしっかりと刺さっていると中級じゃないと穴が塞がらない。そろそろビックゼリーを獲りに行かないとなと考えながら、今日もまた南さんに手当してもらう羽目になり、カッコ悪いところを見せてしまったなぁと落ち込むのだった。
それからもダンジョン内を歩き回り、ウルフとの戦闘を続ける。あれからはポーションを使うような事にはなっていないが、俺の攻撃は避けられる事の方が多く、隙をついた南さんが倒してくれている。
「よし!今度こそは当ててやる!」
心なしか今回の個体は足が遅いように感じる。こいつになら当てられる!そう思い突き出すと、ウルフの首に刺さった。
「もらった!!」
そう思った矢先「パキンッ!」と音を立ててレイピアが中ほどで折れてしまった。
急いでウルフから距離を取り、銃を抜き構えると、南さんがいつも通りに攻撃して倒してくれている。
「剣折れちゃったね…。はい、予備の短剣。」
南さんのリュックに預けてあった、駆け出しの頃に買った予備の短剣を取り出し渡してくれた。
「ありがとう。このタイミングで壊れるか…短剣預けておいて正解だったな。」
「ライフルより先にコウ君の剣を準備しなきゃだね。」
「あぁ、剣は最初に買った鉄の剣があるからそれを使うことにするよ。あれから筋力も体力も付いたから、今なら重さにも耐えられると思うし。」
そう二人で話していると、もう一匹を倒して素材と魔石を持った望月さんがこちらに近づいてきた。
「今日はもう帰ろっか。コウ君の剣折れちゃったし、短剣あってもちょっと心もとないでしょ。」
まだ時間は早かったが、望月さんの言葉に頷き今日は帰る事になった。
今日の稼ぎは革も売ったが一人当たり7000円ほどだった。俺の剣が折れさえしなければもっと稼げたのになと思い、二人に申し訳なかったので帰りにスイーツを奢ることにした。
二人とも最初は「気にしなくていい」と言ってくれていたが、美味しいものは食べたかったらしく並んでいた商品の中でも高めの物を選んでいた。
お財布的には痛かったが、二人がニコニコと美味しそうに食べていたので良しとしよう。
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