正直者の嘘
ゆうさん
第1話 不器用なやさしさ
私、
嘘をつこうとすると目が泳ぐし問い詰めるとすぐに話を逸らそうとする。
それでも毎年私の誕生日には必ずサプライズパーティーをしようとする。毎年準備段階で私にばれるが
「来年は必ず成功させるね。」
と必ず宣言する。
そんな彼とは高校2年生から付き合っており大学4年になった今でも関係は続いて半年前からは結婚を見据えて同棲も始めた。底なしに明るい彼の隣はとても心地よくて暖かく感じた。
そして、今年の私の誕生日の2日前。私は仕事を終え、家へと帰った。
「ただいま。」
しかし、いつもは聞こえるはずの『おかえり』はなく静寂が続いていた。
「誠太~?いないの?」
リビングに向かっても誠太の姿はなく、机の上には見知らぬ通帳と置手紙があるだけだった。
「何この通帳?私と誠太のは一緒にしてるはずだけど。」
「えっ?」
通帳の中身を見るとそこには誠太の名義で1000万という大金が入っていた。
「どういうこと?」
私は通帳の下にあった置手紙にも恐る恐る目を通した。そこにはたった一言『ごめんね』と書かれていた。
急な出来事で混乱していると私の携帯に誠太の母さんから一本の電話が入った。
「もしもし、お義母さんどうしました?」
「小夜ちゃん。誠太が!誠太が!」
お義母さんからの連絡は誠太が危ないという連絡だった。その連絡を受けて私は急いでお義母さんから聞いた大学病院へと急いで向かった。
病院に到着し、病室に入るとそこにはベットで寝ている誠太の姿があった。
「誠太なんで?」
すると、病院の先生が私に近づいて
「あなたは旭さんとどのようなご関係で?」
「私は誠太の恋人です。」
「そうでしたか。では、旭さんの容体についてご説明致します。こちらへどうぞ。」
そして私は誠太のお母さんと看護師さんとともに別室へ向かった。先生によると誠太は重度の癌で腫瘍が全身に転移していて手術しても助かる確率が低いらしい。
さらに、抗がん剤治療をすれば多少は延命できるが誠太自身が拒否したらしい。
「そんな、つい最近までは元気だったんですよ。」
「旭さんの場合、腫瘍が転移するスピードが速く本人が異変に気付いて検診に来た時にはすでにステージ3まで進んでいました。」
「残念ですがこのままではもって1週間でしょう。後はご本人とよく相談してください。」
その後、お義母さんと病室へ戻ると誠太が目を覚ましていた。
「小夜、来たんだ。大丈夫だよちょっと体調が悪いだけだから。だからそんな泣きそうな顔しないで。」
「こんな時までつけない嘘つかないで。お願いだから本当のこと言って。」
誠太はこうなった経緯を少しずつ話し始めた。
「異変に気付いたのは同棲を始めて少ししてからだよ。それでこの病院で検査したら心臓癌だったよ、しかもすでにステージ3の。抗がん剤治療も考えたけどそんな高額な治療したら母さんにも小夜にも迷惑かけるからな。」
「だから、あの通帳を残して何も言わずにさよならと。」
「隠そうとしてもばれるからね。それに最後は小夜の笑った顔がよかったから泣かせちゃったけど。」
「そんな変な優しさはいらないよ。私たち恋人だよ結婚も見据えていたんだよ。あなたの隣に立てるなら一緒に戦うよ、一緒に悩むよ。だからあなたの隣で一緒に歩かせてよ。」
「ごめんな。」
誠太は私の目をまっすぐ見つめそう言った。
「すぐには死なないよ。また会えるさ。」
「・・・絶対よ。」
誠太の目は私ではないどこかを見つめていた。
次に彼と会った時は彼は帰らぬ人となっていた。
病院の机の上には私へのプレゼントと思わしきものがあったが、私は彼を失ったことによる大きな喪失感によりその箱を開けられずにいた。
すると、お義母さんが私のそばに来て
「小夜ちゃん、あの子を愛してくれてありがとうね。あの子からはあなたの話をたくさんきいたわ。あなたがいたから頑張れたって。」
「いえ、支えられたのは私の方です。彼の底なしの明るさに優しさに何度の助けられました。あわよくば彼の隣に・・・。」
「あの子からあなたに伝言を受け取ってるの聞いてくれる?」
「伝言ですか?」
『嘘ついてごめんってばれてたかな。最後の最後で泣かせちゃったね。それが最後のプレゼントになるけど受け取ってほしい。最愛の人の幸せを一番に願ってます。今までありがとう。』
決心した私は箱を開けたそこには白のポインセチアがあった。
「どこまで私優先なのよ。ありがとう大好きよ。」
天国で彼に笑われないように最高に幸せになると決心できた。最後まで彼らしいプレゼントに私は心が満たされた。
白のポインセチアの花言葉
『あなたの幸せを願っています』
正直者の嘘 ゆうさん @kjasdbfcluink
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