隣にいる資格

ゆうさん

第1話 蛙な私

私、高宮夏帆(たかみやかほ)には九重翼(ここのえつばさ)という付き合って1年になる彼氏がいる。高校の入学式の日に一目ぼれをしてから猛アタックを続けて1年の終わりに付き合えることになった。

だが、最近なぜかデート中の翼の行動の見て気持ち悪く思ってしまう自分がいた。翼のことは好きなはずなのによくわからない感情に襲われていた。だから私は、友人の本条七菜香(ほんじょうななか)に相談することにした。


 七菜香:

 「それで相談って何?」


 夏帆:

 「最近ねなぜか翼の行動とか言動が気持ち悪く感じるよになって。でも、冷めたとか嫌いになったじゃないの、なんかよくわからなくて。」 


 七菜香:

 「それって『蛙化現象』ってやつじゃない?」


 夏帆:

 「蛙化現象?」


七菜香はスマホで蛙化現象の画面を夏帆に見せた。

蛙化現象とは片思いの相手から好意を向けられると嫌悪感や興味がなくなったりする心理学用語の一つである。


 夏帆:

 「これって治す方法ってあるの?」


 七菜香:

 「ネット見る限りこれといった治療法はないね。これは心理状態が関係するっぽいから九重君に正直に言うのが一番だと思うよ。隠しててもお互いつらいだけだろうし。」


正直怖かった。このことを伝えるっていうことは本人に気持ち悪いっていうのと同義だからだ。でも、このままずるずる引きずるくらいなら伝えて嫌われたほうがマシだろうと思い、その日の放課後翼と話すため学校近くのファミレスに寄った。


 翼:

 「どうしたの急に?最近様子もおかしかったけど。」


 夏帆:

 「実はね・・。」


私は翼にありのままを伝えた。翼のほうに目を向けると下を向いて動かなかった。嫌われたかな?別れるとか言われるのかな?そんなことを考えて重い空気が流れた。

すると翼が


 翼:

 「わかった。1回距離を置こう。」


 夏帆:

 「え?」


 翼:

 「距離を置くといってもネガティブな感じじゃなくて自分の気持ちを整理するための期間を設けようってこと。夏帆自身も自分の気持ちがよくわかってないんだろ。」


 夏帆:

 「うん。」


 翼:

 「じゃあ気持ちを整理する期間が必要だよ。自分の気持ちが整理出来たらまた連絡して。それまでゆっくり休みなよ。」


翼はそう言って、お会計を済ませて帰っていった。その時の翼の背中はとてもさみしそうだった。



 


それから翼と連絡や話もせずに2週間がたった。


 七菜香:

 「最近、九重君と話してないみたいだけどどうしたの?まさか別れたの?」


 夏帆:

 「別れてないよ。自分の気持ちの整理がつくまで距離を置こうってことになったの。」


 七菜香:

 「ふーん、夏帆はそれでよかったの?」


 夏帆:

 「うん。」


そして、帰ろうと七菜香と下駄箱に向かっている途中、別クラスの教室から翼と翼の友人の南田康太(みなみだこうた)との会話が聞こえ、私は隠れてしまった。


 康太:

 「翼、お前の彼女蛙化現象になったんだろう。よく別れなかったな。あれ結構悲しくない?」


 翼:

 「そりゃ悲しいよ。でも、夏帆も自分の気持ちがわからなくて悩んでるんだから別れるのは違うし、多分お互い後悔するだろ。」


 翼:

 「本当は一緒に悩むのがいいと思うんだけど今の夏帆は俺と一緒にいるのがつらいだろうから答えが出るのを待つしかできないよ。」


 康太:

 「流石、お優しいね。万が一別れたら全力で慰めてやるよ。」


 翼:

 「ありがとよ。」


私はその会話を聞いて翼を傷付けた罪悪感と未だに待っていてくれてることの嬉しさで泣いてしまった。


 七菜香:

 「夏帆、ちょっと寄り道していかない?」


そう言って、七菜香と七菜香の両親が経営する喫茶店へとやってきた。


 七菜香:

 「落ち着いた?」


 夏帆:

 「うん、ありがとう。」


 七菜香:

 「どう答えは出た?」


 夏帆:

 「うん出たよ。でも、私は翼を傷つけたし、今更戻れるかな?」


 七菜香:

 「何言ってるの。夏帆がそうしたいんでしょ。だったらそれを素直に伝えないと、今更遠慮しないの。九重君も待っててくれてるんでしょ。」


 夏帆:

 「ありがとう七菜香。私行ってくるね。」


 七菜香:

 「いってらっしゃい、頑張りなさい。」


私はすぐに翼に連絡してファミレスで集合した。


 夏帆:

 「突然ごめんね。」


 翼:

 「大丈夫だよ。忙しいわけでもないし。」


 夏帆:

 「今日は伝えたいことがあって、あのね・・。」


翼に私の気持ちを伝えようとした瞬間、手が震え言葉が出なかった。すると翼は、私の手を握って


 翼:

 「大丈夫落ち着いて。ゆっくりでいいよ。」


その言葉で手の震えは収まった。私は1回深呼吸して


 夏帆:

 「翼、まずはあんなこと言ってあなたを傷つけてしまってごめんなさい。そして、ありがとうねあんなこと言った私を待っていてくれて。今日は私の気持ちを伝えに来たの。」


翼は何も言わず優しく微笑み私を見ていた。


 夏帆:

 「私やっぱり翼が好きだよ。一緒にいたい。あんなこと言った私だけど翼さえよければ一緒にいてくれないかな?」


 翼:

 「嬉しいよ。あんなこと言われたから本当に嫌われたと思っていたけど待っててよかった。こちらこそこれからもよろしくね。夏帆。」


 夏帆:

 「うん。」


お互い少し涙を流しファミレスを後にした。


蛙化現象は自己肯定感の低い女の子になりやすい現象。この現象で悩んでいつ人は相手に素直に伝えよう。隠していてもお互いもやもやするだけだから。

いつか理解して信じてくれる相手が見つかりますように。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

隣にいる資格 ゆうさん @kjasdbfcluink

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ