第18話 とりあえず
アヴァンは30階層の街の建築は最優先で進ませてくれたのでとりあえず街が完成した。
俺たち転生者組はとりあえずこのままストーリーを進めてみようという方針を固めた。
現状転生者だと判明しているのは俺、アヴァン、ミズノ、ロザリーの4人。
あと一人いたシュラインは死んだものと思われるのでもうカウントしない。
現状この後のストーリー展開を把握しているのは俺だけ。
ロザリーはネタバレを見てしまいロザリーが死ぬこと以外は知らないらしい。
とりあえずタワー教の脅威は無くなった訳だが。
「割とそのポンポン転生者と出会うな。他にもいるかもしれない」
俺はそうみんなに告げて各自念の為気をつけるように伝えておく。
ロザリーがその知識を使って教祖になったようにゲームの知識を使って何か企んでいるやつがいるかもしれないし、ということだ。
「この先のストーリー展開について聞いてもいいか?セツカ」
アヴァンの言葉に答える。
「31階層に進めばロザリーの病気が進行し死ぬ予定だったのだが、それは回避された」
俺がフェニックスの羽で助けたからだ。
そんなロザリーは俺の横に座っていた。
「その後のストーリー展開だが、これと言った大きなストーリーはなかった気はするが、主人公達が旅を続ける理由の一つにとあるものが追加された」
俺はロザリーを1度だけ見て答える。
「仲間のロザリーの死因について調べる、というものだったな」
ロザリーの病気は原因不明だった。
何故ロザリーが死んでしまったのを探るというので主人公達は攻略を続けるのだが。
「何が原因でこんな病気に?」
アヴァンの質問に答える。
「ストーリーでは触れられてなかった気がする。悪いな」
その後シナリオライターが忘れたのか知らないが淡々と冒険は進んでいった記憶がある。
「このタワーは何のために建てられた?」
「分からない」
一応アクションゲームだったからかシナリオなど薄味のものだった。
だがここは現実。
ゲームで遊んでるよりはこの世界の事の方が気になる。
「とりあえずストーリーを進めてみるしかないと思う」
「結局そこに戻るのだな」
アヴァンの声に頷く。
それで今日の集まりは終わった。
「アヴァン」
「どうした?」
「お前にアルフを任せたいと思う。俺のパーティでは水と油だ」
俺はそう口にする。
俺はアタッカーはもういらないし。
現状アルフはまだしっくりくるパーティを見つけられていないらしい。
「アルフとミズノを連れてパーティを組む、というのはどう?ミーナ程の力はなくてもミズノはサポーターだと聞くし」
そう提案してみると頷くアヴァン。
こいつならきっと上手く使ってくれるだろうと思う。
「あぁ。任せてくれ」
「ここからは本当に俺の能力じゃ厳しくなると思う」
そういう話をして俺たちは今日の集まりを終えた。
最後に部屋を出るとロザリーが待っていた。
「あ、あのセツカ様」
「なに?」
「私たちはどうして転生したのでしょう」
「分からないな」
俺はそう答えてから続ける。
「まぁせっかくこの世界にこれたし俺は楽しむつもりだよ」
そう答えておく。
「ロザリーも適度に楽しむといい」
そう言って歩き去ろうとしたら手を掴まれた。
「なに?」
「で、デートしてくださいませんか」
もじもじしながらそう口にする。
「ゲームをプレイしてる時から推しだったんです」
なんてことを口にするロザリー。
「俺は別人だぞ?ガワだけ同じで」
「わ、私は今のセツカ様の方が好きです」
と口にするロザリー。
「ちょっとだけな」
「は、はい。嬉しいです」
と、ロザリーの買い物に付き合ったりした。
そうして、1人で街を歩く。
「よう、セツカ」
そんな時酒場から出てきたアルフに出会った。
「お前が紹介してくれたアヴァンとミズノって奴とは中々気が合う」
そう言ってくるアルフ。
あいつらは転生組だからアルフの使い方も理解しているからだろう。
「良かったなそれは」
そんな事を言いつつ少し歩くとアルフもついてくる。
「俺らは明日にでもここから先を攻略してみよう、なんて話をしてるぜ」
と言ってくる。
「是非とも頑張ってくれよ」
そんな会話をしていたら感じる殺気。
アルフに指示を出して飛び退くと俺たちがいた場所にクナイが飛んできていた。
「ちっ」
小さく聞こえた舌打ち。
それと共に何者かが走り去っていく音が聞こえた。
「何だよ今の」
愚痴りながらそう口にするアルフの横で俺はクナイを拾い上げた。
「ダイヤでできてるなこれ」
そう呟くとダイヤァ?と口にするアルフ。
「40階層以上でしか取れない鉱石だよ」
そう答えてクナイをポーチにしまう。
「何でそんなもんがこんなところに、ていうか。どうして投げたやつは持ってたわけよ」
一気にまくし立ててくるアルフ。
「知らんよ」
そう答えるが1つアルフには忠告しておく。
「気をつけろよ。何が起きるか分からんなこれ」
俺の言葉に真面目な顔で頷くアルフ。
タワー教の脅威は去ったはずだが。
また新勢力か、これは。
「いや、この襲撃はストーリーにもあったな」
「あ?ストーリー?」
「こっちの話さ」
そう答えて思い出す。
主人公達がここの街で暮らすようになってから暫くしたらクナイを投げられていたことを。
この世界限定の要素であるタワー教の残党などではないだろう。
結局ストーリー上はここで誰が投げつけてきたかは判明しなかったはずだが、進めれば何れ分かるだろう。
とにかく、今俺たちに出来るのは攻略を進めることだけだな。
「そうそう。ゼスタがお前のこと探してたぜ」
そう言ってアルフは用事があるからじゃあなーと去っていった。
ゼスタが酒場にいると聞いて俺は酒場に向かったが。
「よう、兄弟」
相変わらず低い声でそう声をかけてくるゼスタ。
「俺を探してたらしいじゃないかよ」
そう答えながらカウンターで1人で飲み食いしてたゼスタの横に座る。
「用件は?」
「大したことでは無い。俺はお前と腕試しがしたい、そう思ってな」
いや、大したことだろと内心思う。
「最近のセツカの活躍は俺の耳にも届いている。そんなお前と今の俺どちらが強いのかを試してみたくてな」
獲物を狩るハンターのような目で俺を見てくる。
俺の知らないイベントだな。
セツカ限定のイベントか?これは。
「どうだ?俺と模擬戦をしてくれないか?」
そう目で訴えかけてくるゼスタ。
ゼスタと勝負はした事がなかったな。
「俺の鋼鉄の拳とお前の連撃どちらが上なのか白黒付けはせんか」
ガタッと立ち上がるゼスタ。
こいつのやる気は満々なようだ。
よく見ると股間が膨らんでいた。
そっちのやる気も満々なようだ。
「どうだセツカ。俺はお前とヤリ合いたいんだよ。俺の鋼鉄の拳をお前にねじ込んでみたい」
わざと自分のテントを見せつけるかのように位置取るゼスタ。
「俺のこの興奮を鎮めてくれるのは……お前しかいないんだよ」
ゼスタは対策さえしっかりすればPVPではそこまで強敵ではなかった。
攻撃してくるタイミングがハッキリと分かるからだ。
だからアルフ達のいる評価グループには入ってこなかったが。
ちなみに
1人だけ特別にグループセツカなんて名前を付けられて分けられていた。
そのゲーム知識がどこまで通用するのか試してみたくなった。
「いいよ。やろうかゼスタ」
「いい返事だ」
そう言って酒場のボーイを呼び付けるゼスタ。
この酒場の地下には闘技場があるらしい。
今この瞬間は誰も使っていないらしい。
だから直ぐに2人で入ってこれた。
以前シュラインと戦った時のように俺達は向かい合う。
「兄弟。お前とやれる日を俺は楽しみにしていた」
そう言って拳をぐっと握りしめるゼスタ。
ゼスタの体力は全キャラ中最高値の1800。
俺の330の約6倍だ。
さて、どこまでやれるか。
ゲーム通り倒せるかどうか。
ゲームの世界に転生したらモブより弱いと評価されてるキャラだったけどダンジョン攻略してたら俺の活躍でストーリーが変わりまくりました~アクションゲームで俺だけ音ゲーやらされてる件 にこん @nicon
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