第17話 二度目の改変

21階層を攻略し始める前にまず20階層の街でフラグを立てることにした。


裏路地に入っていく。数回角を曲がったところでこの前の爺さんに出会う。

あの時のフェニックスの尾をくれた冒険者だった爺さんだ。


「よう、久しぶりだな爺さん」


そんな爺さんに声をかける事がフラグを立てる条件。


「おう、若いの久しいな」


返事をする爺さん。

その爺さんの足に義足が付いていた。


「お前がパンをくれたからもう少し足掻いてみるかという気分になっての」


ふぉっふぉっふぉと笑う爺さん。

俺はそんな爺さんに質問をする。


「この前くれたアイテムって何処で拾ったんだ?」

「25階層じゃよ。25階層にはそれはとても綺麗な海が広がっていてな。そこの岬の神殿に落ちていたのじゃ」


と、そう口にする爺さん。

イベント発生条件はこれで終わりだ。

しかしもう少し話を聞いておくとこの先有利になるフラグが立つので少し話しかける。


「爺さんはまた冒険者を目指さないのか?」

「ふぉっふぉっふぉ。こんな老いぼれにまだ働かせる気か?お主は」


そう口にする爺さんの目には確かに炎が点っていた。


「また、何処かで会えるといいな」


そう言って爺さんは去っていった。

これで爺さんに関するイベントは終わり。


さて、25階層に進みますか。


特に障害はなく25階層まで到着した。


「さて、ここで隠しイベントがあるんだが」


俺はストーリーを知っているからロザリーが死ぬのも知っていた。

正直結構可愛い方のキャラだったから死ぬことに対して思うことはあった。


だから解析サイトの隠しイベント一覧が出回った際はどうにか出来ないか、とモニターに画面が空くのではと思うくらい睨みつけて色々と探していた。


その時に見つけたのが、フェニックスの尾が獲得できる隠しイベントだった。


勿論隠しイベントであって通常発生するイベントではない。

だから主人公達は通常のストーリーでは、謎の病で死んでいくロザリーを見守ることしか出来なかった。


でもゲームのストーリーにこういう選択肢があったのを今でも覚えている。


【ロザリーを回復できるアイテムを探せ】


とそうして探すイベントが挟まるようだったのだが、このイベントを知らない通常ストーリーではそのままロザリーは命を落とす。

だが、今の俺は使える隠しイベントを一通りは把握してある。


解析サイトの備考欄にもこう書いてあった。

ここのフェニックスの尾でロザリーを助けられる、と。


きっちり運営は一応生存ルートを残していた。


そんなことを思い出しながら向かった岬の神殿。

遠くからでもここの存在は見えていたので難なく来れた。


ちなみに次に繋がる階段も見えているので普通の人は先にそっちに向かうと思うので、普通ならこんなとこまで来ないだろうが。


なんてことを思いながら俺は神殿を操作する。

同行していたアヴァンが口を開く。


「黙っていたがどうして階段に向かわないんだ?」


俺は理由を話した。


「か、解析サイトまで見ていたのか?!」

「使えるもんは全部使うさ。俺別にネタバレとか気にならないし」


普通は見ないだろうが見ていたお陰で今は助かっている。

NPC最強と言われたマーズは生存しているし。


「ちなみにセツカのデータはどんな感じだった?」


そう聞いてくるアヴァンに首を横に振る。


「キャラの解析は進んでいなかった。多分見つけ出せないくらい深いとこにあったんじゃないかな?」


その事からもセツカのスキルについても分かっていなかったから、レベル20に辿り着く前にみんな諦めてしまっていた。

俺もそうだが。


「隠しイベントやストーリーくらいだったよ。全部解析されてたの」

「ちなみにゲームでは途中までしか遊べなかったが、その先のデータも作られていたのか?」


その言葉に頷く。


「きっちり作られてたっぽいよ。詳細はよくは分からんけど」


俺が知っているのは作られていた、ということだけだ。


「解析を見るなど褒められた事じゃないだろうが今はナイスだとしか言いようがないな。よくやってくれた」


そう言ってくるアヴァン。

俺も解析サイト見るなんて行為がこんな形で役に立つとは思っていなかった。


「で、ここからどうすればいいんだ?」


そう聞いてくるアヴァンに答える。


「この真ん中の石碑に絵があるだろ」

「これか?このよく分からない鳥みたいなのに人間が祈りを捧げている絵?」


俺はそれに頷く。


「その鳥はフェニックスだ」


そう言うと指示を出して絵の通りに俺たちは五芒星の頂点に立ち祈りを捧げた。

その時大きな羽ばたく音と共に体を火で包んだデカい鳥が俺達の目前に現れた。


「ひぃぃぃぃぃ!!!!何か出ました!!!!サーシャは美味しくないですよぉぉぉぉ!!!」


と戸惑うサーシャ。

フェニックスは何も言わずに帰っていく。

その時にパサリと1枚の羽根が落ちてきた。


それが


「不死鳥の羽」


俺はそのアイテムを回収する。


「す、すごいな、こんなイベントがあるなんて」


と口にするアヴァン。

本当の隠しイベントだしまだ未開放のエリアだったから解析でも見ないと分からないものだ。


ま、これで用意は済んだでしょう。


「じゃ、このまま30階層まで行こうか」


解析で読んだストーリーだと30階層まではそんなに強敵が出ない。

だが今のこの現実で行くと懸念点はタワー教だったが、それにも特に邪魔されることなく俺たちは30階層まで上がれた。


そこはまだ攻略報告がないエリアだったが、その真ん中にロザリーがいた。

お嬢様風のキャラ。それがロザリーだった。


「ゲームとは随分違うようですわね。セツカ様」


そう声をかけてくるロザリー。

やはり転生者なようだ。


サーシャ達はやはりゲーム?と首を傾げる中俺はロザリーと会話しようとするが、近付いてくるロザリー。


「もう、私に貴方は止められないと悟りましたわ」


とそう口にする。


「私を殺しに来たのでしょう?どうぞ」


そう言って座り込むロザリー。


「覚悟は出来ています。私が全ての元凶」


そう言って全てを自白し始めたロザリー。


「別に誰も殺しに来たなんて言ってない」


そう言いながらロザリーに近付くとロザリーが口を開いた。


「どのような手段を使ったのか知りませんがギルドマスターのマーズが生存しましたわね?」


隠しイベントやフェニックスの羽の事まではどうやら知らないように見える。


「セツカ様が生存させたことは直ぐに分かりました。あなたはギノスのお爺様を率いてこの塔を攻略しようとしていた事から直ぐに理解しました」


あれは別に攻略しようとし訳じゃないけどな。

ギノスの爺さんが俺にダンジョンがどんなものなのかを教えたかっただけだし。


「このまま攻略を進めるのであれば私の病状は進行し死にます」


そう口にする彼女に俺はフェニックスの羽を差し出した。


「使えよ」

「こ、このアイテムは?」

「それはアンタを唯一助けることが出来るものさ」


そう言って使わせるとパァァァっと緑の光に包まれてロザリーの黒くなっていた腕が白く戻っていく。


「わ、私の腕が……な、治っていきます」


そうして俺の手を握ってくるロザリー。


「こ、こんな私のためにこんな貴重なアイテムを使ってくれたのですか?!」


別にフェニックスの羽はこのダンジョンを進めればまだ入手法がある。

だからそんなにどうしても使えないくらい貴重なものではない。


その時アヴァンが話しかけてきた。


「セツカ。転移結晶を」


そう言われて俺は30階層に転移結晶を設置。

それからテントの用意もしておく。


これでこの階層にも街を作れるようになるはずだ。


そうしてからロザリーに口を開く。


「死にたくなかったのは分かるが、それでも死んで行った者たちくらいは弔ってやれよ」

「はい」


そう答えるロザリーを見てから俺はこれからの方針を決める。

これでタワー教とやらの因縁は終わった訳だが


そういえばロザリーの病気って何なんだろうな?

それはストーリーで触れられていなかった気がするが見落としだろうか。


進めれば分かるんだろうか。

ま、とりあえずストーリーをこのまま進めてみようか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る