第16話 理由
20階層に移り住んだ。
しかしタワー教に動きはやはり見られない。
諦めたとかでは無いと思うが。
まぁ今回襲ってこないならそれでいいと思っていた。
それよりもなんか色々とめちゃくちゃになっていた。
俺がギルドに入ると女の子がすごい押し寄せるようになっていて困る。
前から話しかっただのとどうだのと囲まれて大変なことになっている。
そしてミズノもダンジョン内に住むようになっていた。
「久々」
そう言いながら俺に話しかけてくるミズノ。
「どうしたんだよ呼び出して」
「それがね。私なりに色々考えてたんだけどタワー教がセツカに手を出してこないのはセツカの存在が大きくなったからじゃないかなって」
俺に手を出して殺害に成功した場合最近俺によってくる女の子を中心に犯人探しが始まる。
そうなった時に奴らも困るからじゃないかという事らしい。
俺としては1度手を出された以上きっちりケジメを付けたいと思ってはいるが。
「やり方変えてくるかもね。例えば懐柔しにくるとか」
そう言いながら彼女は去っていった。
なるほどな。
殺さなくても懐柔して俺にダンジョン攻略させなければ不都合は生じない、とそういうことか。
とりあえず今日から21階層と新たな攻略を始めたいところだが。
そう思い攻略するという旨を伝えにギルドに入ったら
「セツカ」
とアヴァンに呼び止められた。
こいつが呼び止めるなんて珍しいと思いながら続きを促す。
「21階層に挑むつもりなら俺も同行しよう」
そんなことを言い出した。
「何故?」
「疑っているのだろう?俺を。打ち明けようと思う。俺はタワー教の者ではない、信じられないだろうがセツカサイドだ」
と口にするアヴァン。
「あんたタワー教の人間だろ?」
「違う、場所を変えよう」
そう言われ俺は俺が選んだ宿屋へ向かった。
「俺は転生者だ。セツカ、君もだろう?」
今更隠す事でもないだろうし頷いた。
「あぁ」
「俺はお前と手を組みたいと思っている」
と口にするアヴァン。
先程懐柔に来るかもしれないと言われたばかりだが。
「俺はゲームをプレイしていたしエルザが死ぬことは知っていた。だからこの世界にこのキャラで転生した時、次のギルマスを狙うために努力した」
なるほど。こいつの考えは理解出来たが。
「ゲーム通りいけばあの頼りない少女がギルマスになるからな。あれでは誰かの操り人形になるかもしれない、と考えた」
まさかタワー教なんてものが出てくるとは思わなかったがな、と続ける。
「何かお前を信用できる物はあるか?」
現状アヴァンを信用するのは難しいということを伝える。
「ギルドには恐らく内通者がいる。お前が怪しいと思ったものはいくらでも処分しよう。例え俺への不満が溜まることになろうとな。俺は自分の立場をお前に預けていいと思っている」
そう口にしてくるアヴァン。
ふむ。
内通者を炙り出す、というのもありか。
そんな風に思う。
ギルドにスパイを送り込んだのか、買われているのかは分からないが送り込まれているのだとしたらタワー教での地位も高そうだが。
そうなれば捕縛する価値はある。
いい加減チョロチョロ動き回りやがって鬱陶しいんだよなあいつら。
「お前の中で内通者として怪しいのは何人くらいいる?」
「3人だ」
と答えるアヴァン。
なるほど。
それなら簡単だな。
だが、その前に。
俺はこの前タワー教で貰った本とライターをアヴァンに渡した。
何が言いたいのか理解したのか躊躇なく燃やす。
「俺は信者ではない」
「そのようだな」
俺はその後アヴァンと共にギルドへ戻り内通者候補をそれぞれ3人を個別に呼び出してそれぞれ違う話をした。
話の肝は明日21階層へ向かうというものだが、攻略を始める時間だけ6時間の間隔を開けて伝えた。
3人が知っている時間はそれぞれ違う時間。
そして翌日、俺はアヴァン、マーズと共に21階層へ続く扉が見渡せる位置に陣取った。
1人目の時間。
誰も来ない。
2人目の時間。誰も来ない。
「ほんとにくるのか?」
そう聞いてくるマーズに黙ってろと伝えて。
3人目に伝えた時間に1人ぽつんと人影が現れて21階層に続く階段を登っていく。
「いくぞ」
俺はアヴァン達に伝えてその人影を追った。
そして
「ぐあっ!」
その男を取り押さえた。
勿論魔力を使えなくさせる。
自爆されては困るからな。
「は、離せ!!!」
そう叫んでくる男の覆面を剥ぎ取る。
見覚えのない顔だ。
タワー教に知り合いなどいないから当然の話だが。
マーズにその男の監視を任せて俺はアヴァンとギルドに向かう。
内通者は確定した。
「これで、分からなかった内通者が判明したな流石セツカ」
と話しかけてくるアヴァンに喋るなと言って俺はギルドの中に向かった。
そしてギルマスの部屋に入ると。
「な、何故アヴァンさんが!」
その中にこの時間にダンジョン攻略を始めると伝えていた1人がいた。
「動くな」
俺は強力なアンチマジックを使い魔力による自爆を防ぐ。
「ぐっ!アンチマジックだと?!」
そう言っている男に近付きアヴァンにロープで身動きを取れなくさせる。
「な、何の真似ですかな、これは」
そう言ってくる男に答える。
「お前は踊ったんだよ。俺達の手のひらの上でさ」
俺達がこいつらにやった事を話してやる。
「そ、そんな……あれは嘘の時間だったのか」
「そういうことだ」
そう言いながら俺は前リリアにやったように拷問の準備をする。
「聞かれたことに答えろ。教祖は何処にいる」
「教祖様は30階層におられる」
意外な事にもすんなり答えてくる男。
準備など要らなかった。
「守秘義務とかはないのか?」
「聞かれたら答えてやりなさいと言われていたからだ」
そう口にする男。
「名前は?」
「ロザリー様だ」
そう口にする男。
待て、ロザリーって聞いたことがあるぞ。
思い出した。
ロザリーってあいつだ。
俺はアヴァンと顔を見合せた。
「ロザリーって知ってるか?アヴァンは」
「ストーリー以上の事は知らんがそこそこの強キャラだったことは覚えてる」
「あいつ死ぬんだよ。メインキャラの中で唯一」
「え?」
口を開くアヴァン。
「
ロザリーが転生者で解析サイトのストーリーのネタバレを知っていると仮定するならば全て辻褄が合う。
そもそも面白がってネットでロザリーが死ぬことをネタバレする奴もいたしな。知るのは難しい事じゃなかった。
タワー教。
その目的が分かった気がする。
そりゃ俺達を殺しに来ようとするわけだ。
俺たちにストーリーを進ませたら進ませた分だけロザリーの死が1歩1歩近付くのだから。
だから他人を犠牲にしてでも俺達を止めようとする。
「どっちにしろ俺に手を出した以上は放っておけないな。ケジメはつけさせる」
そう口にして俺はアヴァンに目をやる。
「そこの男の処分は任せる。ロザリーさえ止めてしまえば後はタワー教など終わる」
「あ、あぁ」
そう答えるアヴァンを見て俺はギルドを出ていくのだった。
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