第15話
俺はストーリー上還らずのフロアと呼ばれた16階層に向かった。
この16階層のフロアはまだ誰も挑んでいないらしく、挑むのは俺たちが初めてだ。
「何だか寒くないですか?ここ」
ブルブル震えながらメイルが聞いてくる。
「確かにな。霧も濃いようだし」
今までのフロアと打って変わって雰囲気が変わっていた。
進めば進むほど霧が濃くなって寒くなる。
「怖いですっ!」
サーシャが俺の腕にしがみついてきた。
それを見てメイルも同じようにしてきてミーナも続いた。
「どうした?私にも飛びついて欲しいのか?」
マーズの方を見ていたら何を思ったのかそんなことを口にしていた。
「この程度朝飯ま……ひゃう!」
何故か飛びついてくるマーズ。
「朝飯前じゃないのかよ?」
ニヤニヤしながら聞いてみる。
「あ、朝飯前……だ」
恥ずかしそうに俺から離れてそう口にするマーズ。
「進み方があるのだ。こういうところは皆の者着いてくるがいい」
そう言って進んでいくマーズだったが着いていくと1時間後。
「迷ってしまった……」
だと思ったよ。正直。
途中から不安そうな顔をして、あれ?とかあれれー?とか言ってたから察してたよ。
「確かに還らずのフロアと言うだけのことはあるかもな」
俺がそう言うとサーシャが口を開く。
「サーシャ達ここから出られないのですか?!」
「出れるさ」
そう言いながら歩いていく。
このマップのストーリー上の会話は俺が覚えてる。
『先ずは西』
遠くに方角の分かる岩のようなものがあるからそれで方角を特定して歩いていく。
『壁に行き当たったら次に北』
そんなふうに思い出しながら進んでいく、が途中で俺は違う道を選んだ。
この還らずのフロアにもイベントがある。
そうして進んでみると
「ひっく、ひっく」
としゃがんで泣いている女性がいた。
「ど、どうしたんだ?」
マーズが声をかけようとしたが止める。
あれは人によって見えてるものが違う。
「何故だセツカ。あの男の子迷って」
「俺たちが一番最初にこのフロアに来たのに、どうやって男の子が迷うんだよ?」
と、問いかける。
もしかして記録も残ってないくらいの頃に誰か来たのかもしれないがそんな時に迷子になったら死んでるよ。
そう思いながら俺は歩いていく。
女を無視して。
ここで声をかけしまうと違う場所に誘われるという訳だ。
左横の壁に小さな窪みがある。
それを押すと
ガガガガガガガガと音を鳴らして開く扉。
こんなもの解析サイトがなければ分からなかっただろうな。
そんなことを思いながらその中にあった宝箱を開ける。
中に入っていたのは
【光を照らす魔導師の杖】
というアイテム。
そこそこ強いアイテムだ。
それを俺はサーシャに渡した。
この中で1番性能の低い杖を持っているのはサーシャだから少しでもいいものを渡したかった。
「い、いいんですか?!」
「うん」
「大好きです!ご主人様!」
そんなことを言いながら受け取ってくれる。
宝箱の部屋から出てみると男の子は消えていた。
このフロアが作り出した幻だ。
「消えてる……」
マーズが驚いていた。
それを見ながら俺は今度こそ寄り道せずに17階層を目指す。
そうして17階層まで来た俺たちはとりあえず近くでキャンプを始めることにした。
そして転移結晶というものを近くに置いた。
これは場所と場所を繋ぐ結晶。
次は16階層を通らずにここまでこれる。
16階層に挑むと口にしたらアヴァンに渡されたものだ。
ここに設置しておいてくれ、と。
実際あんなフロア突破出来ない人もいるだろうし、ということだ。
そうして設置して待っていると結晶が動き出して最初にシュラインが出てきた。
「ミーナがいたから余裕って訳か?」
そう聞いてくるシュライン。
「ち、違いますよ。セツカさんが凄いだけです」
と答えるミーナ。
そんなミーナを無視してシュラインは今度はサーシャの杖に目をやった。
「そ、その武器はなんだ?見たことがないが」
「16階層に落ちてる」
そう答えて取得方法を教えてやる。
「はっ!サンキューなテクゴミ!」
そう言ってシュラインは杖を取りに行くようだ。
1時間くらい待っていると下の方からシュラインの叫び声が聞こえてきた。
もしかして、あの幻に連れていかれて死んじまったかな?
残念だ。転生者だから、と目にかけておいたが。
まぁ俺には関係の無い話だ。
そう思いながら俺はこれ以上は誰も来なさそうだし、休憩も十分したということで17階層の攻略を始める。
「迷いがないな。すごいな。本当にまるで来たことがあるようだ」
そう言ってくるマーズ
「来たことは無いさ」
そう答えながら歩いていく。
そうして俺はみんなに止まるように指示を出す。
「罠だ」
下を見ると感知式の罠があったので注意して進むように口にする。
そんなこんなで19階層までたどり着けた。
次はボス戦。
たしかボスの名前はワイバーンだったかな。
ストーリー上で出てきていたワイバーンという名前。
「行くよ」
そう言いながら俺はボスフロアへと入っていく。
中には上空を飛び回るワイバーンの姿があった。
「フリーズ!!!!」
ミーナが魔法を使ってワイバーンを撃ち落としてくれる。
それを俺とマーズが切り裂いていく。
「ギャァアァァァァァァアア!!!!!!!!!」
と断末魔を上げて倒れるワイバーン。
ワイバーンを倒した俺たちは次のフロアへと進んでいく。
とりあえずの20階層最速到達は俺たち、となった。
だが問題はここからだろう。
恐らく甘く見ても序盤はここまでだ。
ここからをセツカでいけるかどうかは分からない。
20階層に入り雑魚をある程度倒した俺たちはベースとなるキャンプ場にテントを作り近くに転移結晶を設置して15階層へと戻る事になった。
アヴァンに20階層まで進んだことを報告する。
「よくやってくれたな」
そうとだけ言って俺の設置した転移結晶から20階層へなだれ込んでいくギルドの職員たち。
15階層の町がやっと完成したばかりと言うのにこれからまた20階層の町を作りに行くそうだ。
とりあえず俺はいつもの宿で今日は5人全員で集まっていた。
タワー教が動くとすれば今日だろうと思って。
だが、襲ってくる様子はなかった。
どうなってる?
そう思いながら何事もなく夜が明けた。
タワー教の考えていることがよく分からないな。
俺とマーズが交代で見張る形になっていたから寝不足では無いが、何故襲ってこなかったのだろうという疑問は残り続ける。
よく分からんなほんとに。
そうして1週間経ったが何事もなく20階層の街が完成した。
攻略されたくないのではないのか?
本当によく分からんな。
そう思いながら俺はその日。
あの日に貰ったタワー教の本に目を通した、がタワーは神からの贈り物であり神聖なものですみたいな事が書かれてあった。
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