日常
私たちは、次の目的地地点まで透の運転により、たびたび休憩を挟みながら向かっていた。
今回私は、助手席ではなく後部座席に座り、助手席には澪が座っていた。そして、澪はいつにもまして超が付くほどご機嫌であった。
「撮るよ~~はい、チーズ!(カシャ)」
そう言って、澪は昨日初めて使ったカメラのシャッターを押した。そして、今のでちょうど十枚目である。つまり澪は絶賛、カメラにドはまり中なのである。
「もう一枚撮るよ~~はい!チー」
「待て待て待て!何枚目だよそれ!俺、今運転してるから集中できないんだよ!」
「ズ!(カシャ)」
「おぉぉぉい!!」
「まあまあ、いいじゃないですか。これも、思い出の一つになるわけですし」
私自身も正直、何枚も写真を撮っては確認するのが少し楽しくなってきていた。運転をしてくれている透には悪いが、これも思い出作りのためなのだ。許してほしい。
「ねぇ、結衣ちゃん見てよこの写真!透の顔、ブッサく撮れたよ」
「ぷふっ」
透が注意しようと横を見ようとするが、前も気になったのか…運転に集中しようとしたのか、顔の変化の途中で撮られていて、それがとても可笑しすぎたので思わず吹いてしまった。
「お前らなぁ!もう、運転やめるぞ!」
「ごめんごめん。日記に貼るときは、もっとちゃんと撮れたの貼るからさ!許してよ。ぷふっ」
「お前なぁぁ!!」
透も本気で怒っているわけではなく、ちょっとしたおふざけだということを分かっているので、できる弄りだろう。それにしても本当にこの写真に写っている透の顔は…。
「ぷふっ」
「結衣ちゃんまで酷すぎだろぉぉ!」
「満もこの写真見てよ!」
澪は、後部座席の私の隣に座っていた満に透の顔がうまく撮られなかった写真を渡した。そして、満はその写真をまじまじと見つめる。
「ぷふっ」
「満まで!?」
「ご、ごめん!わ、悪気はないんだよ!ぷふっ」
満は、あまりにも面白かったのか平然を取り繕うとしてもうまくいかず、笑いを堪えることができていなかった。
「もう人を信じられない…。相手の心の声を聴いて善悪を判断していこう…」
本当に聞こえたのか…!?
「冗談だけどね」
こいつぅぅ…。
そして、私の日記にはまた一つ思い出が加わったのだった。もちろんちゃんとした写真を貼りました。そして、もう一枚、透のうまく撮れなかったブサイク写真も貼っておきました。私を弄んだ罰です。ふふふ。
「何か不穏な気配を背後から感じるんだけど…」
「きっと気のせいです」
私と澪は新しく更新された日記のページを見て、共ににやにやとするのでした。
◇◇◇
そして、しばらく車の旅が続き、ようやく二時間おきの休憩の時間がやってきた。
「それじゃあ、はじめよっか」
そう言うと、澪は銃を持って立ち上がった。私もそれに続き銃に取り付けた紐を肩から下げて立ち上がる。
「はい!」
そして、私たちは車の外へと出た。
「銃を構えてみて」
「はい!」
私は、澪に指示され銃を構える。銃の構え方は、できるだけ安定させるために頬にしっかりとつけて手でしっかりと銃を持つ。そう、澪に教わった。
「それじゃあ、目の前にちょうどいい岩があるし、そこに撃ってみようか」
昨日の探索で銃の材料をリュックいっぱいになるほどに集めていたので、現在の物資は潤っていた。ちなみに昨日の探索終わりからコツコツと満ちゃ、満くんが作ってくれていたので、悪い気もしたが笑顔で「れ、練習頑張って!」と励ましを頂いたので、気兼ねなく練習に取り組むことができた。
「はい!」
私は、銃を撃つ。銃は、けたたましい音と共に実弾を岩に向けて発砲した。岩の下側には、弾が当たったであろう弾痕が刻まれた。初めて使った時よりは、幾分銃の精度もましになったと思う。まだまだ、澪の足元にも及ばないが…。
「もうすこし銃口を上げて、しっかりとサイトを覗いて、撃つ場所を確認して」
「はい!」
「お前ら、よくやるよな」
そこで車から透が何か面白いことないかなといった様子で降りてきた。つまり、暇なのだろう。
「別に暇ってわけじゃねぇよ…。ちょっと、気になっただけだよ」
「まぁ、結衣に殺されるのは御免だからね。これぐらいの面倒は見ないとさ」
澪は、意地悪っぽく笑ってみせた後、柔らかい表情となり、優しく微笑んだ。その微笑んだ澪になぜか私はドキリとしてしまった。それぐらい、いつものやんちゃな澪と今の優しく微笑む澪とではギャップの差がありすぎた。これはそう、ギャップ萌えというやつではないだろうか…。
「結衣ちゃん…。まあいいや。俺も一応、銃なら使えるし分からないことがあったら聞いてくれ」
「助かります!」
そう言い残して透は車の中に戻っていった。そして、私と澪はその後も銃の訓練を続けるのであった。
◇◇◇
「それにしても、よくやるよな。こんな日差しが出てて、暑い砂漠の中。俺だったら、絶対に倒れてるよ。なぁ、満もそう思うだろ?」
「う~ん。ぼ、僕は元々、外で活動するタイプじゃないから…。そ、それよりも、透はいいの?」
「何が?」
「へ、変に撮られた写真のう、恨みを返すなら、今だと思うんだけど…」
俺は、全く考えていなかったといわんばかりのキョトンとした顔になり、その後にやりと悪い笑みを浮かべた。
「グッドアイデアだ、満!ふふふ。ここで積年の恨み。返させてもらう!」
そして、俺はカメラを装備し窓を開け、ばれないようにカメラを澪に向けながらズームしてはっきりと写真いっぱいに映るように調節する。
「さてさて、どんな変顔を見せてくれるかな(カシャ)」
そして撮った澪の写真は、ばっちりとかっこよく撮られていた。銃を構えた姿がとても印象的でかっこよさを醸し出していた。それもブレがない。驚きである。
「これじゃあ、だめなんだぁ!」
そして、次々と結衣ちゃんと澪を交互に撮っていく。だがしかし、そのすべての写真がなぜかブレがなく、ばっちりと二人ともきまっていたのだ。
おかしい…。おかしすぎる…。こんなに毎回、ちゃんと綺麗に撮れるものなのか…?それとも、俺に撮影の才能でもあったのか?
「ふ、二人とも写真写りいいね。ぷふっ。あ、ご、ごめん。思い出し笑いしちゃった」
「今の絶対に俺の変顔写真、思い出したよね?」
「ち、ちち違うよ?」
満の目は、明らかに泳いでおり、いつにもまして動揺していた。満も分かりやすい部類の人間である。そんな感じでわちゃわちゃと写真のことや積年の恨みなどは忘れ、会話に勤しむのだった。
◇◇◇
「(結衣、撮られてるよ)」
「(気付いています)」
私と澪は、アイコンタクトにより状況を確認し合っていた。そう、今現在私たちは、透にカメラを向けられ撮られているのである。
「(ここはもちろん、かっこいいところを撮ってもらう。残念だったわね。透!)」
「(できるだけいい写真を撮ってもらわないと!日記に貼るかもだし…)」
そして、私たちは透がシャッターを押すであろうタイミングを見図り、一時いい感じで撮れそうなポーズをとり、いかにも今銃の訓練に一生懸命に取り組んでいますよというようなかっこいい姿を演じることにした。
「(結衣、なかなかいいポーズをするわね…)」
「(澪のポーズ、かっこいい…!)」
そして、私たちは残りの休憩時間、謎のかっこよさげのポーズをとり続けながら過ごしたのだった。その後、満と楽しそうに雑談していた透を殴りました(澪が)
そして数日後、私たちの旅は新たな出会いを伴い、大きく自分自身を成長するきっかけを得ることになるのであった――。
truthypanion~トラシパニオン~ 神無月かなめ @kaname_sei
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