4話 優華の心境

私の名前は天上院優華。天上院グループの一人娘で、テストでは常に1位を取っている。自慢では無いが、私は容姿が優れている。長く伸ばした金色の髪にぱっちりとした緑色の目、綺麗な肌に女性にしては高身長、更に出るところは出ている為、男ウケするらしい。告白の数は3桁はくだらない。



「はぁ、ほんとに疲れる....告白されても困るのに。杏奈は毎回どう対処してるの?」



「んーそうだねぇ...私の場合はもう慣れたかな。でも、よく懲りずに告ってくるなー位の軽い気持ちでいいんじゃない?」



「それができたら苦労しないわよ.....」



私の幼馴染である杏奈も私と同じくらいモテている。何回も告白されている私だが、告白されるのには未だ慣れない。だから、慣れている杏奈にはよく相談に乗ってもらっている。



「あ、そーいえば!優華聞いた?うちのお母さんが今日話があるって。優華と2人で来てって言ってたけど」



「分かった。じゃあこのまま杏奈の家行こっか」



何の話だろう?杏奈のお母さんに呼ばれるのなんていつぶりかしら?



「いらっしゃい優華ちゃん。あらあら、すっごく可愛くなって!学校ではモテモテなんじゃないの?うふふ」



「ちょっとお母さん!ごめん優華、うちのお母さんが.....そんな事よりお母さん!話ってなによ!」



「あ、そうそう!2人共、明日から高校生でしょ?このタイミングでね、一颯君が帰ってくるらしいのよ、その報告って思って」



「それは本当ですか!?いっくんが帰ってくるって!」



「一颯が帰ってくるの!?ほんとなのお母さん!??」



私も杏奈も興奮が隠しきれなかった。一颯は私たちの幼馴染で、サッカー留学で小5の時にスペインへ行ってしまった。その時は私も杏奈も大泣きして、一颯になだめてもらった。



私が一颯と初めて会ったのは小学校1年生の頃。一颯はその時から明るく、サッカーも上手だったのでクラスの人気者だった。



クラスに中々馴染めなかった私だが、一颯が話しかけてくれたおかげで杏奈っていう仲のいい友達も出来た。休日とか学校終わりは3人で遊ぶようになり、3人で遊ぶ時間が何よりも楽しかった。その頃から私は、一颯の事をいっくんと呼ぶようになった。



小学校4年生になると、女の子は皆恋バナを積極的にするようになり、皆好みの男子を言い合うのだが、皆いっくんの名前をあげる。確かにいっくんは顔が整ってるし、サッカー上手だし、皆に優しいし。モテるのは分かるが、皆がいっくんが好きって言う度に心がズキズキする。すごく嫌な気持ちになる。この頃からだろう。私はいっくんの事を目で追うようになったし、よく考えるようになった。これが恋心だと気づくのに時間はかからなかった。



いっくんと話す度にドキドキするし、顔を見るとなんだか恥ずかしくなる。でも、嬉しい。そんな日々を過ごしていたが、その日々は急に終わりを告げる事になる。



「優華と杏奈に話がある」



小4の3月、来月には小5になろうとした頃、私と杏奈はいっくんに呼ばれた。何かあったのだろうか。



「実は俺、来月から外国へ行くことになった。スペインって所。サッカー留学ってやつなんだけどさ。ごめんな、急な話で」



私の心臓がドクンッと大きく鳴る。頭が真っ白になる。そして、気づいたら両目から涙が溢れ出していた。杏奈も大泣きだった。そんな私たちを、いっくんは「ごめんな、2人とも」と言いながら優しく抱きしめる。それがトドメとなり、私たちは声を出して泣いた。



「なんでよ!いっくんとずっと一緒って、ずっと一緒にいるって思ってたのに.....やだよぉ、ずっとそばにいてよぉ...ひっく」



そんなことを言っても解決しないのは分かってる、けど言わないとやってられない。もういっくん無しの生活は私には考えられなかったから。



こんな形でバイバイするのは嫌だ、という杏奈の提案で、春休み期間中3人で沢山遊んで、思い出を作ろうということになった。バーベキュー、テーマパーク、水族館、映画、プラネタリウム、お泊まりなど。写真も沢山撮ったし、これで笑顔でいっくんを見送れる。



そしてお別れの日。空港で最後の挨拶をしようと思ったところ、突然いっくんが私と杏奈を抱き締めた。抱きしめられ、今までの楽しかったことを思い出してしまい、涙が止まらなくなった。これで会えなくなるならと、私は覚悟を決めてこう言った。



「いっくん!帰ってきて私の事忘れてなかったら、私と結婚して!!」



「優華だけじゃなくて私も!私とも結婚して!!約束して?」



「わかったよ、約束な?」



こうして私たちは別れ、今に至る。どうやらいっくんも同じ高校に通うらしい。明日からまたいっくんと過ごせる。そう思うと興奮がとまらず、その日は全然寝られなかった。



化粧も髪の毛もばっちり決め、杏奈と急いで学園へ向かう。遅刻ギリギリか。教室の前に着き、ドアを開ける。そして私の目は1人の男を捉えた。



「もしかして、優華と杏奈か?」



そう言われた瞬間、目から涙が溢れる。気づいたらその男に抱きついていた。いっくんだ。ずっと会いたかった。いっくんに会えると思って杏奈と化粧と髪の毛のセット頑張ったけど、そんなことどうでも良くなった。いっくんに会えた。その事で頭と胸がいっぱいで。もう離さないし、離れてやらない。これからはずっと一緒なんだから。







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帰国したら、取り合いが始まりました。 アル @arufred

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