ifストーリー 『独りよがり』

「キミ達何してるの?」


「え?」


うーん…見たところこの辺の人じゃ無さそうだねぇ。


果物を探しに来たみたいだけど、こんな寒い所で出来る果物なんて聞いたこと無いしなぁ。


「んー怪しいなぁ。とりあえず殺っとこ!」


とりあえずこの小柄の男の子の首を跳ねてっと。


うひゃー…凄い血、帰ったら洗わないとなぁ。


「…二人とも!今はとにかく逃げるぞ!とにかく生きる事だけ考えろ!」


およ、逃げる気なんだ。逃げるって事はやっぱ悪い人だったんだね!


じゃあ次はその男の子で!


はい!喉をグサッと!






今度は水色の髪の女の子が敵討ちと言わんばかりにあたしに挑んできた。


まー泣いてて太刀筋も動きも滅茶苦茶だし、あたしの敵じゃないかな!


まず腕を切り落として~足も切って~


ザクザク~ザクザク~


はい、ダルマさんの完成~


もーそんなに泣かないでよ。でも大丈夫!今楽にしてあげるからね!






後はあの猫耳の子かな?さーて、どこかな~


んー…お!麓に居るんだ!足速いね~!


じゃあサクッと追い付いてっと!


「にゃあ…にゃあ…ここまでくれば大丈夫なはず…」


「みーつけた」


「にゃう!?」


あの間にここまで逃げるなんて…やっぱ獣人って足速いんだ!


でも疲れてるみたいだし、動きも遅いから簡単に倒せそう!


あ、その前に…


「にゃ!?な、何するにゃ!尻尾に触るにゃ!」


「ちょっと貸してー」


「にゃああああああ!?!?!?」


獣人の尻尾、前から触ってみたかったんだよね~…ちょっと切らせて!


みんな嫌がるから全然触れないし…


「おー!凄いモフモフ!これ病み付きになりそう!」


「痛い…痛いにゃぁ…」


うーん…ちょっと可哀想だなぁ。


すぐみんなの所に送ってあげるね!







「よーし、討伐完了!いやー!良いことすると気分良いね~!」


じゃあ帰ろっと!










「…」










うーんよく寝た!じゃあ今日も頑張って…


あれ?外が随分と騒がしいなぁ…


そう思ってるとヨアンが血相を変えてあたしの所に来た。


「おいニコラ!これはどういう事だ!」


「んー?」


今朝の新聞?それがどうしたの?


『雪山でアユルの男女3名が殺害される。犯人はニコラ・ルーチェとされており、全都市に指名手配を…』


あれ?この顔あたし…


「顔にフルネーム、間違いなくニコラの事ですわ!貴女何をやってるんですの!?」


「え?だって…」


「だっても何もあるか!一般人を襲うとか何を考えてるんだ!」


…あたし悪くないもん!


あの四人は怪しかったから倒しただけだもん!


悪いのはあの四人だもん!あたしは悪くない!


そう言っても二人は納得してくれなかった。


「え、どこ行くの?」


「もう知りません。ニコラとは縁を切らせて頂きます。ここまで常識が無いとは思いませんでしたわ」


「僕もだ。もう君には着いていけない」


…何それ!


いいもん!そっちがその気ならあたしだって!


「別に良いよー。どっか行けば?」


「~~~!!!勝手になさい!!!」


二人とも怒って出てっちゃった。














それから何日か経って


あれから二人とは会ってもないし、口も聞いてない。


そろそろ二人ともほとぼりが冷めただろうし、会ってみても良いかな~


あ!居た!


「それにしても…」


にっしっし!後ろからこっそり近付いて驚かせて…


「ニコラが居なくなって精々しましたわね」


え?


「強さは確かにあったが…本当にそれだけだったしな。それ以外に欠落している所が多すぎる」


え?え?二人とも何言ってるの?


あたし達、仲間で友達じゃ無かったの?


「しかも人殺しになってしまうとは思いませんでしたわ…」


「全くだ。常識だけでなく人道からも外れるとは」


ヨアン…カレン…どうして…?


仲間だと思ってたのはあたしだけだったの…?


「あんな女と関わるんじゃ無かったですわ」





………





ぽろっ


「あれ?」


ぽろっぽろっぽたっ


「あれ?あれ?何で涙が…」


そこであたしはやっと理解した


自分がやらかした事の重大さに



だから




あたしはもう





戻れない








誰もが寝静まった時、あたしは一人で家に帰っていた


もう二度と戻ってこれないし、最後の思い出作り?みたいな物で二人に手紙を書くことにした


あたしは今さら許されようとは思わないよ


だって、もう4人も殺しちゃったもん


だからさ、もし気が向いた時で良いから


この手紙、読んで欲しいかな


あぁ、あんな最低な女居たな~程度の感覚で良いからさ


これがあたしの最後のワガママ





***


この手紙を読んでる時、あたしは多分死んでると思うよ


だって今から出頭するしね


今のあたしは大量殺人鬼だもん


まあ死刑になると思うけど、運が良ければ終身刑かな~


だからさ、二人に最後のお願い


こんな最低なあたしの事は忘れてよ


だってさ~子供の頃から二人には迷惑かけたし、今やあたしと関わってたって事実だけで二人にはマイナスになっちゃうし


あたしの生きてた痕跡だって、関わってた思い出だって消しちゃって良いよ


二人ともあたしの事嫌いみたいだし、鬱憤晴らしみたいな感覚でやっちゃって


いや~参ったねぇ…あたしは友達とも仲間とも思ってたのに、まさかそう思ってるのはあたしだけだったとは


おっと、あんま長いとヨアンに簡潔に纏めろって怒られちゃうし、この辺にしとくよ


一先ず先にお空に行ってくるね~


***




これで良いかな?


じゃあ街に出てちゃんと罪を償いますか。


もう思い残す事も無いしね~


あ、強いて言えば喧嘩別れしたのはちょっと寂しいかな。


まあ仕方ないよね。仲良くしてたら二人に迷惑かけちゃうし。


さーて、ちゃっちゃと行きますか!



***


「誰だ…!お前はまさか!」


「そのまさかだよ~。ニコラ・ルーチェ、出頭しに来ました~」


***



あたしの取り調べはスムーズに終わった。そりゃそうだよね、聞かれた事は全部話したし。


当然っちゃ当然だけどあたしは死刑、そして今日はそれが執行される日。


「何か言い残す事はないか?」


「無いよ~」


「今から死ぬのに随分と呑気な女だな」


「もう生きるのに疲れちゃったんだもん。やるなら早くやってよ」


「…始めるぞ」


これであたしの人生も終わりか~…短かったなぁ。


んじゃ、最期に一言だけ言っとくよ。








…ごめんね









そこであたしの意識は途絶えた。








***


「お前ら、ようやく終わったぞ。だから…ゆっくり休んでくれ」


「俺がそっちに行くのは随分と先になっちまうな。まあ首を長くして待っててくれ。立派になった姿を見せてやるからよ」


「おっと、もうこんな時間か…今日はホワイトドラゴンの討伐依頼が入ってるんだ。戻ってきたらまた土産話を聞かせてやる」


「…不思議な物だ。今やあんなに欲しかった富も名声も手に入れたのに、全く満たされない」


「やっぱり俺には…いや、止めよう。こんなの俺の柄じゃ無い」


「また、明日な」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

誰よりも弱い俺は周りから見捨てられるが死ねば死ぬほど強くなる事が判明したから何としても死にたい。~でも俺の周りがあらゆる手段を使って生かそうとしてくるが頼むから死なせてくれ。 のぞみん @Nozomin1500

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ