35話 ニコラの恩返し

怨霊がどうなったかは最早語る必要は無いだろう…


「いやー!スッキリした!…おーいヨアン、カレン、生きてるー?」


「まあ僕は不意討ちされただけだから大した問題は無いが…」


「いつつ…貴女は手加減と言う言葉を知らないのですか…」


「でも手加減したら気絶しないじゃん」


「間違っては無いのが腹立ちますわ…」






「ヤマー生きてるかにゃー?」


「ぐっ…いってぇ…本気でやりやがって…」


痛いとは言っても気を失う程度で済んでるから、ネネなりに手加減はしてくれてたんだろう。


「結果的にミラはほぼ無傷だから問題無いにゃ」


「えっと…僕を心配してくれるのは嬉しいんですが…」


ミラが眼を向けた先には…


「ヴィラさんの心配が先かと…」


ぶっ倒れたヴィラが居た。


「お、おい!大丈夫か!?」


「あ……う……」


これ不味いんじゃないか!?


「大丈夫ですよ。任せて下さい」


ミラさんは手を翳し、ヴィラが光に包まれた。


光が収まった瞬間、何事も無かったかの様に眼を覚まし、起き上がった。


「あれ…痛くない…?」


「何したんだにゃ?」


「痛覚や疲労と言った物を一時的に感じなくさせました。ですが魔法が切れたら急激に痛みが襲いますので注意して下さいね」


魔法って本当に何でもありなんだな…


「本当に大丈夫か?」


「大丈夫ですよ!これなら帰るまで持ちそうです!」


まあ本人が言うなら信じるしかないか…






「僕達はもう少しここを調べていく。あんな悪霊が居たとなると放置は出来ないからな」


「私も残りますわ。ニコラは彼達を守ってあげて下さいな」


「りょーかーい!謎も解けたし美味しいのも食べれたし、キッチリ恩返ししてくるねー!」


どうやら帰りはニコラの護衛が付く様だ。


今の彼女ならまあ大丈夫だろう。裏切ることも無さそうだしな。


「けっ、チビガキと一緒にならなくて精々するにゃ」


「何ですってぇ!?」


全くこの二人は…


「止めろカレン。これ以上問題事を起こすな」


「ネネさんも、煽っちゃ駄目ですよ?」


「うぐぐ…」


「うにゃぁ…」


「ほらほら、喧嘩するな」


よし…


「帰るか!」




***


雑談一部抜粋…


「そう言えばあのチビは何であんな変な口調してるんだにゃ?」


「カレンの事?前に都会のお嬢様に憧れてるって言ってたよー?」


***




山の麓


「では本日はありがとうございました。お金は依頼所に出してありますので、そちらから受け取って下さい。こちら受取書類です」


そう言い残してミラさんは帰って行った。


てか良く考えたらこんだけやって3500ルピって安いよな…


「命を掛けた割にはめっちゃ安いにゃ…」


「誰があんなアクシデント起こるって分かるんだよ…今回ばかりは仕方ないだろ」






「じゃあ次はあたしから!これあげるね!」


ニコラから細い氷の棒の様な物を渡された。


「何にゃこの冷たい棒…もしかしてレア物かにゃ!?」


「これ何だ?」


「氷のフルート!ちなみに一個8000ルピ!」


ぜ、絶妙な値段…いや、8000なら高いよな…?


「市販品かにゃ…レア物かと思ったにゃ…」


「んー…レアって訳じゃ無いけど、これ吹いたらあたし達の所に連絡が来るから!困った時は呼んでね!助けに行くから!」


「最初殺しあった時とはえらい態度が違って怖いにゃ…」


「受けた恩は必ず返す主義だから!キミ達のおかげで雪女の件も解決したし、悪霊も被害出る前に退治出来たしね!」


どっちも別に狙ってやった訳じゃ無いんだけどな。


ま、まあ敵対しないだけでも良しとしよう。


「な~に~よ~り~」


ニコラは貯める様に言ってから右のポケットに手を突っ込んで…


「こーんな美味しい物食べれたしねー!ん~!おいしー!」


「結局は食い気かにゃ…」


小さめのユキメロンを取り出したと思えば、その場で被りついた。


本当、幸せそうに食べるな…


とにかく最終的には全部丸く収まったな。ま、争うより平和が何よりだ。


さて、俺らも引き上げて…


「あれ?ヴィラは?」


「んにゃ?着いてきてないのかにゃ?」


「居ないけど…」


途中までは確かに居たはずだよな?


どこかに行くとしても必ず報告してくし…


「ん?あの水色のショートカットの子?それだったら…」








「途中から雪の中でお昼寝してたよ!」


その瞬間、俺達は固まった。


いや、全身から血の気が引いたとでも言っておくか。


「おい待てええ!!!それ絶対ヤバいやつだろ!?」


「何でそんな肝心な事黙ってるんだにゃ!!」


「え?別に眠いだけかと思って…」


バカか!?バカなのか!?


バカ通り越してもはや恐怖だよ!!


「んな訳あるかあああ!!!おいネネ!!すぐ戻るぞ!!」


「分かったにゃ!」


くそっ!何でこんな単純な事に気が付かなかったんだ!


待ってろよ!今助けに行くからな!


「あ!暇だったらまた遊びに来てねー!」


「この状況でマジで言ってんならぶっ飛ばすにゃ!!」


「言ってる場合か!!早く行くぞ!!」






そして俺達は無事に雪に埋まりかけて気絶してるヴィラを救出し、何とかアユルに帰還する事が出来た。





そして…






「飲み物とか回復薬とか色々買ってきたにゃー」


「お、サンキュ。ほら、ユキメロン剥いたぞ」


「あ…ありがと…う…ござい…げほっ!げほっうごぉ!ひ、響く…」


「無理に喋っちゃダメにゃ。熱も40℃近くあるし、何日かは素直に大人しくしろにゃ」


意識はすぐに取り戻したが、ネネからの猛攻と長い間雪に倒れてたのも相まって、高熱を出してまたぶっ倒れてしまった。


打撲、風邪、捻挫、骨折、出血etc…


最早生きてるのが不思議なレベルだ。


今回は流石にネネも責任を感じてるのか、ヴィラに付きっきりだ。


昼は俺が、夜はネネが、24時間体制で絶対に目を離さないようにしている。


鬱陶しいかもしれないが、今回ばかりは許してくれ。


「ま、幸いにも蓄えは結構あるし、何日かは働かなくても大丈夫だ。その辺は忘れてちゃんと休みな」


「とりあえず医者は呼んだにゃ。すぐ来てくれるみたいにゃ」


「ごほっ…ごほっおおお!?い、痛い……」




***


「全くこんなに無茶しおって!お前達に回復魔法を使える奴はおらんのか!」


「居ないにゃ」


「てか誰も魔法使えんよな」


「なら覚えるなり雇うなりせい!このままだと何れ野垂れ死にするぞ!」


「考えとくにゃ~」


「儂は忠告したからな!」


***

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