34話 仲間割れ

そして遂に…


「この白い実が…」


「はい!これがユキメロンです!」


いやぁ長かった!本当に長かった!


「へー!こんな美味しそうな実があるんだ!」


「こんな奥地に果物があったのか…まだまだ知らない事が多いな…」


『…』


とにかく採るぞ!沢山採るぞ!


頑張ったんだ!バチは当たらんだろ!


「あ、良かったら少しだけ食べてきませんか?僕はこれだけあれば足りますので」


「あ!食べたーい!」


『…』





「んめーにゃ!」


「おいしー!」


こ、これは…


強い甘味と程よい水分が疲れた体を癒してくれる様だ…!


「ん?ヴィラは食べないのか?」


『…いえ私は要りません』


「さっきから変だにゃ…」


ヴィラは素っ気ない返事をして、ミラさん達の所に向かった。


『ミラさん、ヨアンさん、少し良いですか?』


「ん?何か様か…」


「僕に何か様です…」


二人の頭を掴んだと思えば、雪に思い切り叩き付けた。


雪だから大した怪我は無いだろうが、衝撃もあり二人は気絶してしまった。


「おいヴィラ!お前何して…」


「待って!何か様子が変だよ!」


真面目と正義が服着て歩いてる様な人がこんな事をするとは到底思えない。


どうしたんだ…?


『煩いぞ人間。この私に指図する気か?』


口調が明らかに可笑しい。そして雰囲気も全然違う。


もはや別人としか思えない。


「お前ヴィラじゃないな?…何者だ」


『私は…怨霊とでも言っておくか』


怨霊…?


『面白半分で封印されて…どれほどの時が経っただろう…。だが!遂に封印は解かれた!永き苦しみから遂に解放されたのだ!』


『放たれた私は誰にも止められぬ!これは私を面白半分で封印した人間どもに対する復讐だ!』


くそ…見た目や声色のせいで調子が狂う…


だが敵としてはかなり強力であろう。


「やること分かりやすくていーねー」


「こんなテンプレみたいな悪役も珍しいにゃ」


そんな呑気に言ってる場合か!?体が奪われてるんだぞ!?


『小手調べにその辺の雪女を使って遊んでみたが…中々骨のある連中みたいだな』


「あぁ!あの雪女ちゃん嘘ついてなかったんだね!」


最後の謎だった吹雪はそう言う事だったのか…


『だが!この女とお前達は仲間!手を出す事など出来ない!』


それにしても厄介な相手だ…憑依能力か。


確かにこれだと戦いにく…


「出来るにゃ」


『あっさりとぉ!?』


そんな事は無さそうだな。


ネネの蹴りがヴィラの顔面に直撃した。


『お、お前達仲間じゃないのか!?』


「関係無いにゃ。ヤマとミラを守る為にゃ!」


『あぶっ!ごぼぉっ!?ぶべぇ!?』


うわぁ…容赦ねぇ…


ネネの容赦無い攻撃が怨霊(体はヴィラ)を襲う!


『なら……ネ、ネネさん止めて下さい!グーは痛いです!私達仲間じゃないですか!!』


こいつ…真似をして同情を誘う気だな。口調も声色も仕草もそっくりだ。


卑怯な手を使いやがって…


「じゃあパーにしとくにゃ」


『そ、そう言う問題では…へぶぅ!』


問題無さそうだな。


『な、何だこの体!力とか最大限引き出してるはずなのに、弱すぎにも程がある!』


「0に何をかけても0だから仕方ないにゃ」


「ひでぇ言われ様だ…」





一方その頃カレン達は


「見て見て!やってる事は悪霊退治なのに仲間割れしてるみたい!これ凄くない!?」


「何でそんなに興奮してるんですの…」


何故かテンションが上がっていた。





そしてそんな攻撃を続けてる内に…


『くそっ…この体は駄目だ!なら次はその男に!』


口に何かが入り込んだと思えば、体の中から何か気持ち悪い気配がした。


体が重い、上手く考えられない、何だ…この不快感は…


「ぐっ…ネネ!俺は良いからミラさんを連れて麓まで…逃げろ!』


「ヤマ…」


駄目だ…来るな…逃げろ…俺はお前を傷付けたりは…


「ごめんにゃ。ちょっと気絶しててにゃ」


『ごぽぉ!?』


ネネが俺の腹部に手痛い攻撃!


「あの獣人容赦無いですわ…」


「あーっはっはっは!!おもしろーい!!」


覚えてろよこのやろう…


俺は意識を手放した。





side三人称


『ぐっ…ならばそのチビだ!』


「やる気ですの!?良いですわ!相手になって…」


カレンなら先程の二人とは違い、返り討ちに出来る可能性は充分にある。


怨霊との対決が今始まる…


「ごめんねー!ちょっとだけ寝てて!」


「ですわぁ!?」


前にニコラの拳がカレンの鳩尾にめり込んだ。







乗り移れる体が少なくなって来た事も相まって、実体化した怨霊が二人の前に姿を現した。


『お前達に仲間を思う気持ちは無いのか!?』


「あるよー?あるからこそ気絶させてるじゃん」


どうやら気絶してる肉体には憑依出来ないらしい。


今、意識があるのはネネとニコラだけだが、この二人はそんな簡単に憑依させてはくれないだろう。


『こうなればそのイカれた女に…!』


姿を消した怨霊はニコラを標的にし、口目掛けて突っ込んだ。


…が、相手が悪かった。


「つーかまーえた♪」


『うお!?』


パッと見は黒いモヤモヤを掴んでる様にしか見えない。


しかし生き物の様に動いてるのを見ると、やはり怨霊で間違いないだろう。


『貴様!何故私に触れる!?』


「今まで色んなの相手にしてきたんだもん。ユーレイに触れるようにする魔法は取得済だよ?」


口調こそ穏やかだが、その言葉の所々にただならぬ雰囲気を出している。


こう見えてニコラもキレてるからだ。


「キミ見るからに『悪』だしさー…殺っちゃって良いよね?」


「ネネも加勢するにゃ」


二人の殺気が怨霊を襲う。そして流石の怨霊も不味いと思ったのか、二人に恐怖し始めた。


『お、おい待て、話せば分かる。落ち着け!』


「「ヤダ(にゃ)」」


『ヴォォォォォ!?!?!?』


暫くお待ち下さい…






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