血の夢

光模様

第1話

 気がつくと、白壁の建物の前に立っていた。入ってみると、中には個室が島のように並んでいる。何かのお店らしい。廊下は広く、余裕のあるつくりだ。入り口で立ち尽くしていると、直ぐに入り口に一番近い部屋のドアが内側から開き、それと同時に曲がり角から現れた男性にその部屋へ案内された。部屋の奥の左手にはダブルベッドが並び、シーツ、枕を含む調度品は白を基調にフリルやハートが多め。甘ったるい雰囲気だ。尿意を覚えてトイレを探したが、ラブホテルみたいな部屋にも関わらず、シャワー室もトイレもない。いや、トイレはあるにはあるのだが、部屋に入って右手、床の間のように一段高くなった壁際に、花瓶のように花がぎっしりと挿されている。お飾りのトイレだった。

 部屋の奥に探索を続けると濡れ縁を発見した。右側に前栽と塀があり、濡れ縁を真っ直ぐ進んで右に曲がると、開放された障子から広間が見える。しかしその手前に暗血色の液体のようなものが宙を浮き、触手を伸ばすように常に形を変えている。

 異常なものであると認識した私は来し方へ身を翻して走る。通り道にあった、行きでは閉まっていた障子が開いており、そこからは精神を侵された女たちが半裸で笑っているのが見えた。背後からは生理の経血が襲ってくる。どこへ逃げる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

血の夢 光模様 @inwater

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る