目覚めた朝にはきみが隣に(全裸)



――翌日 朝





カーテンの隙間から差し込む朝日に、目が覚める。


「……はぁ、もう朝か……」


寝ぼけ眼をこすり、ベッドから起き上がる。


隣で寝ている姫華。一糸まとわぬその姿に、私も同様の格好だということに遅れて気づく。


おかしい、ぱんつすら……履いてない。


「何で、私裸なんだ……?」


あれ、昨日確か……あの後、姫華の家に遊びに行って……それで……。


「……?」


格好はさておいて、泊まったということは覚えている。


ただ、何故二人して裸で、しかも同じベッドに寝ているのかが思い出せない。


「……とりあえず、服着よ」


あくびをしながら、私はゆっくりと着替え始める。


考えても無駄だ。このことは、隣で寝ているロリに帰ってから、問い詰めよう。


構っている余裕はない、今日も今日とて、学園に行かなければいけないのだから――






「あー……昨日は大変だったぁ」


相変わらずの暑さにうっとうしさを感じながら、いちょう並木道を歩く。


当然だが、足取りは重い。


「今更だけど、何で受けちゃったんだ私は……」


その場の雰囲気に思わず承諾したけど、夏休みの半分は失われるよね、これ。


「全てはあの、鬼畜メガネのせいだ……」


何というか、まんまと乗せられてしまったような気がする。


運動なんて嫌いだというのに、悲しきかな……リレー選手……。


「あ、美紀ー! おはよー!」


背後から快活な挨拶を飛ばしてくるのは、晴れやかな笑顔の藍。


「あ、おはよー藍ー!」


さっきまでの陰鬱な気持ちが、藍によって少し晴れる。


「いやーこんな朝から登校なんて、優等生の鑑だね!」


「冗談よしておくれよ……今夏休みだよ? それとも、ただ持ち上げてるだけ?」


「えへへ、後者が正解かな。それはさておき、美紀は今、陸上部において救世主だからね!」


臆面もなく、そんなことを言ってのける藍。何というか、素直というか。


「や、やめてやめて! これでリレー中にこけたりなんてしたら、一体どれだけの批判が……」


おそらくきっと、市中引き回しは免れない気がする。


「まあまあ、一緒に練習して速くなろうよ!」


「それが地獄なんですよ、藍サン……」


気だるい様子を隠そうともせず、私は藍と共に学園の門をくぐる。


やがて校庭にたどり着くと、早速準備運動している部員がちらほら見かけられた。


「あ、良かった来てくれたー!」


私の姿を見るや否や、一安心した様子の部長。それに続き、ほとんどの部員が喜びを露わにする。


「え、え? 何ですかこの騒ぎようは!」


「そりゃーだって、来てくれないかもって思っちゃうじゃない?」


「ま、まあ確かに……」


それもそうか、たかだか口約束だもんね。


「じゃあ、来なくても良かったってわけか……」


「安心しろ、来なかったら赤点となり、晴れて早期卒業コースだ」


唐突に後ろから現れ、そんな恐ろしいことを言ってくる如月先輩。


「うえぇっ! 出たー! というか早期卒業って何ですか! ただの中退じゃないですかそれっ!」


「できる限り、ポジティブに言ってみたつもりだったんだがな」


「ポジティブに言っても変わりませんよ! 中退、退学、意味は揺るぎません!」


中退なんてしようものなら、一生姫華に笑われること間違いなしだ。


「あー良かった、今日起きれて」


さっきとは打って変わり、ほっと一息つく私。


「正直、君は来てくれると信じていた」


そうボソッと呟いて、如月先輩は去っていく。


「……そういうの、ずるいよなぁ」


やれやれ、と思いながらも私は、支度を始める。


なーんか、見事に乗せられてしまっている気がするけど。


それでも、悪い気はしないから、ひとまずは許そうか……なんて。




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倒錯乙女と百合の華 七瀬 @witchmihuyu

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