気だるく、奥ゆかしく、いじらしい……。

 全ての表現が愛おしく感じられるほど、素晴らしい作品だと感じました。登場人物の細やかな心理描写が魅力です。気だるい雰囲気の中にも、いじらしい人間の本性のようなものを感じさせられました。登場人物の所作の一つひとつが無骨ながらも奥ゆかしく、不思議なロマンスを感じてしまう……、そんな感想を抱きました。

 人間を獣でも鳥でもなく、「虫」と表現するところに生々しい美しさを感じます。ドキリとする鋭い眼差しで人間を観察している作者様の様子を想像し、ヒヤリとしながらも脱帽せずにはいられません。豊富な語彙と鋭敏な表現で、どうしようもない人間の哀しさを描いていると思います。素晴らしい作品でした。今後のご活躍を期待しております。