死神のカウントダウン

影束ライト

ある一つの滅びの話

 俺には不思議な力がある。


「っ!?」


「あぶねぇなっ!どこみて歩いてんだ!!」


 人とぶつかった。人通りの多い道だ、肩がぶつかるくらいよくあることだろう。

 例えそれが、相手が歩きスマホをしていたとしても。そしてそんな相手が悪いと思ってしまうのは悪いことだろうか?


 俺はその時、その人に怒りを覚えた。

 その瞬間に、その人の頭に見えていた50という数字が、30まで下がった。


 その数字こそ俺の力の一つだ。

 その数字は俺がその人に感じた思いを数値化したもの。

 50を平均とし、俺がその人のことを良いと思えば数値が上がり、逆に不快に感じれば数値が下がる。

 そして、数値が0になった人は死ぬ。

 死に方は様々であり、そのどれもが自然な死だ。


 俺はこの力を『死神の機嫌デス・カウント』そう名付けた。






 ______________


 俺がこの力を持っていることは誰も知らない。

 俺の思い一つで人が死ぬ、そんな恐ろしい力を持っている。そんなことがしられれば、そいつは俺に恐怖を感じ、排除しようとするだろう。


 だがそんなことをすれば、俺がそいつに感じる思いが0になり、そいつは死ぬことになる。だからこの力のことを俺は誰にも言うつもりはないし、知られてはならない。


 そんな力を持つ俺だが、あくまで俺は高校生。学校に行かななければならない。

 正直学校なんてストレスのかかる場所に俺が行けばどうなるか分からないが、行かなけらば両親がうるさく言い、それで両親のことを嫌いになる可能性がある。


 それはさすがに俺も嫌なので、どうか俺を不快な思いにさせないでくれと願って学校に行く。


 _________


 俺には友達がいない。

 人と関われば、いい思いも嫌な思いもする。そして人は嫌な思いを強く感じ、記憶に残る。

 だからこそ、俺は出来るだけ人と関わらないようにしてきたのだ。


 だがそんな生き方は、学校という組織においては異分子でしかない。


「あ、あいつ今日も一人だぞ」


「うっわぁー。まじかわいそ~ww」


 教室に入った瞬間に、そんな声が聞こえる。

 最悪だ。その声を聞いた瞬間にそいつらの数値が下がる。


 正直に言えば、このクラスで50を下回っていない奴の方が少ない。0になっている奴は居ないが、正直ギリギリな奴は大量にいる。


 ちなみに俺の力は俺の意思ではどうにもならない。いや、正確に言うならこの力は俺の無意識で使用されるもの。なので俺がそいつを殺したいと思っても数値がすぐに0になるわけではないし。逆にそいつが俺に対して数値が上がるようなことをしなければ永遠と数値は下がったまま、そのまま数値が下がるような行動をとり続ければそいつは死ぬ。


 俺は出来るだけ人と関わらにようにギリギリの時間で登校して、部活にも入らずにすぐに家に帰る。


 だがその行動も、教師からすれば不真面目ととられるようで、何人かの教師はかなり数値が下がっている。


 そんなこんなで授業を受け、次は体育の授業になる。今回の体育はバトミントン。

 ただし人数的に、男子は奇数。つまり一人あまるのだ。

 その役目は当然俺。


 俺は少し離れた場所で他の奴らが楽しそうに体育をやっているのをただ眺めている。

 そんな俺に対しては、クラスメイト達は自分たちが楽しむのに集中して気にしないし、教師だって面倒事が嫌なのかノータッチだ。


 だがそんな楽しい練習が出来なくても、成績をつけるために試合は強制的に組まされる。


 そしてろくに練習もしていない俺と、楽しく練習していた運動部の奴との戦いが始まる。

 当然結果は決まっている。俺の完全敗北だ。


 勝てるわけがない。昔同じような状態でこのことを愚痴った時に、お前も練習すればいいという奴がいた。俺はその時、その相手がいないのにどうやって練習するんだ!と心の中で叫んだ。直接言うのはやめておいた。


 まぁ当然勝ったあいつらは笑い、俺は無表情のまま、隅の方に移動する。

 この一連で、また奴らの数値が下がった。


 _________


 どうにか数値を0にしないようにし、ようやく帰る時間になった。


 そして俺が校門の方へ歩いて行く時、偶然にも中学が同じった奴と目が合った。

 そいつとはたまに話すくらいで、俺にしては仲が良かった部類に入る人間だが、そいつはすれ違った瞬間、


「きっしょ」


 そう言った。理由は分からない。だが俺に言われたことだけは確かだ。


 その瞬間、60あったそいつの数値が0になった。


 そんなに一気に数値が下がった理由だが、なんとも思っていない人間と仲良くしていた人間、後者に悪口を言われた場合の方はどこか裏切られたと感じ、数値が下がったのだ。


 そいつはもう行ってしまい、そいつはいますぐに俺に対して数値が上がる行動や言動をしなければ、おそらく今日中に死ぬ。


 だが俺にはどうすることも出来ない。

 、俺の力は俺に対して因果応報の結果をもたらすもの。

 先ほど0になった人間が死ぬといったが、逆に数値が上がった人間には幸運なことが起こる。それと数値が下がった人間は死にはしないが、それ相応の不運が訪れる。


 もう一度言おう。俺にはどうすることも出来ない。

 なぜなら俺をこんな気持ちにさせたのはあいつらなのだから。





 _________


 聞いた話だが、昨日俺が帰った後に学校の近くで交通事故があったらしい。

 運転手はこのまえ俺にぶつかってきた奴で、トラックでスマホ運転で信号無視。

 そして被害者は俺のクラスの奴が何人かと、昨日帰りにすれ違った同じ中学の奴。


 クラスメイトの方は、かなりひどい骨折をしたが命は助かったらしい。

 だが同じ中学の奴は命を落とした。




 そうして俺は精神をすり減らしながら生きた。

 だがさすがに限界が来てしまった。俺の周りで人が死に過ぎたのだ。


 いくら俺が関わっているという事実がないとはいえ、さすがに他の人は俺を奇妙な目で見て、避けるようになる。


 だが人は俺のような人間を完全に無視などは出来ない。

 そしてそういった人間の陰口は、ふとした時に聞こえてくるものだ。


 そしてまた人が死ぬ。だが俺にはどうすることも出来ない。いわば因果応報の倍返し。


 そんな俺の異常性についには世界が動く。そして、俺は殺された。


「うっ!?……どう、して……」


 俺は何か悪いことをしただろうか?

 ただ、人と付き合うのが苦手というだけで、俺は何かしたのだろうか?

 どうして俺は殺されたんだ?


 どうして?なぜ?そんな思いが頭の中を駆け巡り、そして……


「最悪だな人類」


 最後に見た空には、巨大な隕石が、まるで0を描くような形で大量に振ってきた。




 _________


 周りで不確かで明確な死が巻き起こる少年の殺害を行った日。

 人類は隕石の衝突により滅んだ。

 いったい我々が、何をしたというのだろうか?

(これは加害者か被害者か)


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