5分間の物語
@tetunoisi
第1話 5分間の物語
ああ、もう死のう。
こんなふうに考えるようになったのは、いつからだろうか。
生きることがとても退屈で、辛く、ゴールの見えないマラソンを走っているようで嫌だった。
「死にたいと思った時、5分間耐えたら死ななくて済むらしいよ。」
いつ聞いたかも分からない言葉を反芻して、息をしていた。
特に好きでもない缶チューハイに手を伸ばし、一気に流し込むと音にならないゲップをした。
息を止めたら苦しくて、飛び降りるには勇気がなかった。
そんな1歩を踏み出せない僕に、一体何ができるのだろうか?
きっと自殺で死んで行った人達は、生きていたら何かしらを成し遂げてた人なんだろう。心がぐちゃぐちゃになっても、生きる目的が無くなっても、死ぬ事の出来ない僕は生きていたって何者にもなれやしない。
そんなことを考えているとカップうどんが出来上がった。
決して広くはない部屋に、妻と娘と三人で暮らしている。
「あけましておめでとう!」
食卓を囲む家族が楽しそうにこちらに目を向ける。
「今年も1年よろしくね。」
「よろしく」
短く、ただしっかりとそう答えた。
5分間の物語 @tetunoisi
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