落ちる夢を見る男
仲仁へび(旧:離久)
第1話
こんな夢はやく終わってくればいいのに。
俺は札束をにぎりしめて、ボロボロのソファーの上でねむりについた。
札束のところどころは、赤い色で染まっている。
落ちる。
落ちていく。
まるで終わりが見えない。
俺は暗闇の中を、とにかく落ちていく。
いいかげん飽き飽きしてきた。
それくらいずっと落ちている。
最初の頃は、怖かった。
落下の終わりにどこかにたたきつけられるのではと思って、絶えずひやひやしていた。
けれど、じきに飽きてきた。
いい加減終わらせてくれよ。
そう思うようになった。
空中じゃ身動きができないんだよ。
どこにも行けない、何もできない。
はやく、終わってくれ。
コンビニから奪った札束をにぎりしめて路地に飛び込む。
背後では、防犯装置がならすけたたましいアラーム音。
パトカーの音が聞こえてきた。
無線に話す警察の声、どたばたとした足音。
けれど残念。
もう遠い。
今日も犯人は、ゆうゆうと野放しだ。
ほんとろくでもない人生だ。
唐突に思った。
会社をリストラされてから人生を転落していく一方。
いずれ社会を困らせるゴミとして、誰かが処理してくれるのだろうか。
そうなればきっと、その日こそあの夢の終わりが見れるはずだ。
落ちる夢を見る男 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032
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