第7話 学年一の美少女
「それじゃあこの英文を……。新庄くん、日本語に訳してくれるかな?」
四時間目の英語の授業にて。俺はクラス担任兼英語の教科担当でもある先生に、ここぞとばかりに活躍の場を与えられているところだ。
ここは帰国子女の腕の見せ所というわけか。
――俺は難なく教科書の英文を訳してみせた。
クラスメイトたちの反応はと言うと、尊敬の念を送られているような気がする。
正直、高校一年生で習う英語くらいなら、今の俺には日本語に訳すことなど朝飯前だ。
やがて授業も終わったところで、昼休みがやってきた。今日の昼休みは何だか忙しいことになりそうな予感がする――。
***
「新庄、俺たちと一緒に昼飯を食べないか?」
「いやいや、私たちと食べるよね?」
現在、昼休み。俺はクラスの中心人物である二人に、一緒に昼飯を食べないかという誘いを受けていた。
それも、かなり猛烈な。
「新庄だって女子ばっかのグループは嫌だよな?」
「海外慣れしてる新庄くんはそんなこと気にしないと思うけどな〜?」
先ほどから、戸惑う俺をよそに火花をばちばちと散らしているのは、女子の方が学級委員長こと静川。男子の方が
磯村というのは、俺に実行委員になるきっかけを与えた人物であり、あの後名前を聞いて仲良くなった。
話してみるとやはり中々面白いやつで、予想通りクラスの中心人物だったようだ。
静川が中心人物であることは言わずもがな。
しかし、なぜこの二人がいがみ合っているのかと言えば……。
「あーあー、またやってるよあの二人」
俺の近くで一人の女子が呟いた。
「もしかして、よくあることなの?」
「まあねー。お互いなーんかライバル視しちゃってるんだよ。あの二人」
この人物は、確か
「新庄くんは磯村くんたちの方で食べなよ。流石に女子ばっかりのところは肩身が狭いだろうから」
「ああ、そうさせてもらうよ」
「暁音のことは私に任せて。新庄くんを困らせないように、きっちり言い聞かせておくから!」
「助かるけど、ほどほどにね……」
瀬戸が腕をポキポキと鳴らしながら言うので、俺は既視感を覚えながら静川の身を案じた。
一瞬だが、うちの姉と何だか姿が重なったような気がしたのは気のせいだと願いたい。
「ちょ、待って待って。若菜ぁぁぁぁぁぁ」
静川……、御愁傷様。
「バカもいなくなったことだし、早く飯にしようぜ。ふざけてたせいで時間もなくなっちまいそうだ」
磯村の鶴の一声で、一連のやり取りを側から眺めていたクラスメイトたちも、それぞれの食事の席に着いていった。
***
「いやぁ、それにしても賑やかなクラスだな……」
「まあ主にあのバカがな」
「静川と仲がいいみたいだな」
「はぁ?そいつは流石に心外だな。俺はもっとお淑やかな女性がタイプだ。それこそ学年一の美少女さんとかな。まああれは高望みすぎるか」
「……学年一の美少女?」
「「え?」」
俺がその言葉にピンとこないという顔をすると、一緒に食べていた他の男子たちも驚いたような顔をした。
「あー、そういや転校生の新庄が知るわけないか。この学年じゃ常識すぎて、一瞬何言ってんだコイツ?ってなっちまったわ」
おい、それは失礼すぎるだろ。
「この学年には“学年一の美少女”って呼ばれてる人がいてな。成績優秀、運動は知らないが、誰にでも優しい正に理想の美少女……って感じだな」
「そんなに?」
俺が尋ね返すと、周りの男子たちも大きく頷いている。
「入学してから一学期の間に学年の男子の三分の一くらいが既に撃沈してるそうだ」
「そ、それはすごいな……」
「何でも、心に決めた相手がいるとか何とか……」
「あ、俺もそれ言われた」
一人の男子がそう言った。
「あ、そういやお前も告白したんだっけか」
「あえなく撃沈だったよ……」
何だかお通夜みたいな雰囲気になりかけていたので、俺は慌てて話題を逸らす。
「お、俺もどんな人なのか気になるなー!」
我ながら、下手くそすぎる。しかし、俺に注目を集めるには十分だった。
「お、帰国子女の新庄ならワンチャンあるんじゃねぇか?」
「いや何も告白するとは言ってないが!?」
「ああ、そうだったか」
「それで、その学年一の美少女さんは、何組の何さんなんだ?」
「隣のクラスの小日向葉音だ」
「は?」
俺は一瞬、磯村が何と言ったのか分からなかった。
「聞こえなかったか?隣のクラスの小日向葉音だ」
その名前は、俺のよく知る人物と完全に一致していた。
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お久しぶりです。休日ということで時間がありましたので更新しました。
海外に留学していた帰国子女の俺、一つ年下の幼馴染が高校デビューに成功したらしいのでからかってやろうと思う あすとりあ @Astlia
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