第1章:逃亡と絆の始まり

 アレサが城を脱出してから暗い夜が訪れた。

 彼女は森へと足を踏み入れる。彼女の心は不安でいっぱいだったが、その一歩が新たな未来への扉を開くことを、彼女は感じていた。

 アレサは森を抜けて、野原に出た。そこには美しい景色が広がっていた。野原は青々とした草に覆われ、柔らかな風が彼女の髪をなびかせる。

 その風に運ばれるように、アレサの鼻孔を花の香りがくすぐった。

「ここはどこなんだろう」

 アレサはつぶやく。しかし、その声に答える者はいない。彼女は見知らぬ場所を歩いていた。それでも、彼女は希望を捨てなかった。必ずどこかに辿り着くはずだと信じて前に進むことにした。

 夜も更けてきた頃だった。アレサは小さな村を見つける。その村は明かりに包まれ、多くの人々が楽しそうに過ごしていた。

 アレサは安堵して村へ向かうと、彼女は村人の一人に話しかけられた。

「あら、お嬢さん。こんな夜中にどうしましたか?」

 アレサが声の聞こえた方に振り返ると、金髪の若い女性がいた。アレサは不思議そうな表情を浮かべながら答える。

「私は道に迷いました。ここはどこでしょうか?」

 村人は少し考え込んだ後、優しい笑顔を浮かべて言った。

「ここは小さな村ですよ。名前は特にありませんが、みんなは『希望の村』と呼んでいます」

 アレサは驚いた表情を浮かべる。

「希望の村ですか? 素敵な名前ですね」

 村人は嬉しそうに笑った。

「ありがとうございます。この村では誰もが幸せになれる場所なんですよ。あなたもきっと幸せになれますよ」

 アレサは村人の言葉を聞いて心が和んだ。そして、彼女は尋ねた。

「この村に宿屋はありますか?」

 村人は優しい笑顔を浮かべる。

「ええ、ありますよ。よかったら案内しましょう」

 アレサは感謝の気持ちでいっぱいだった。そして、彼女は村人に付いて行くことにしたのだ。その後彼女は村人の案内で、とある修道院へ向かう。その修道院は美しい建物で、アレサは感動しながら中へ入っていった。


 修道院ではシスターが迎えてくれた。

「ようこそ、希望の村へ」

 アレサは笑顔で挨拶を返す。

「はじめまして、シスター。私はアレサと申します」

 シスターは優しい微笑みを浮かべる。

「あなたが泊まる部屋を用意していますよ。ゆっくり休んでください」

 アレサはホッとした表情を浮かべ、深くお辞儀をする。

「本当にありがとうございます」

 彼女は自分の旅が報われた気がした。そして、その夜、アレサはぐっすりと眠りにつくことができたのだ。


 翌朝、アレサは目を覚ます。窓から差し込む日の光を浴びて、彼女は心地よい気分になった。

彼女は起き上がると、修道院内を歩いていた。すると、小さな庭を見つける。そこには美しい花が咲いていた。アレサは思わず見惚れてしまう。

 すると、そこに一人の女性がいることに気が付いた。

 女性は長い黒髪で青い瞳をしていた。年齢は20代前半くらいだろうか。彼女は優しそうな微笑みを浮かべて、アレサに話しかけた。

 彼女の名前はマリアというらしい。マリアはアレサに尋ねた。

 アレサは少し戸惑いながらも、自分の目的について話した。

 マリアは興味津々の表情で聞き入っている。

「それは素晴らしいですね。私も旅をしてみたいです」

 アレサは嬉しそうに笑った。

 その後、すぐに彼女は別の話を切り出す。

「昨日、私をこちらに案内した方はどなたですか?」

「ああ、キルエリッヒのことですか」

 マリアはアレサに説明する。

「キルエリッヒはとても親切な方ですよ。この村にいる全ての人が彼女を頼っています」

 アレサは興味津々で尋ねた。

「彼女はどんな人なのですか?」

 マリアは優しい笑顔を浮かべて答える。

「彼女はとても強い力を持っていますが、心も優しい人ですよ。キリーのおかげで私たちは安心して暮らせています」

 アレサは少し驚いた表情を浮かべる。そして、マリアは続けて話した。

「あ、私達はキルエリッヒのことをキリーと呼んでますの。もともと思いやりのある娘で、よく子供たちと遊んでいるんですよ」

 アレサは微笑んだ。

「キリーという方は本当に素敵な人ですね」

 マリアは頷く。

「ええ、彼はこの希望の村でもとても大事な存在なんです」

 アレサはマリアに問いかけた。

「私もキリーさんに会うことができるでしょうか?」

 マリアは笑顔で答える。

「もちろんです。いまは授業中ですが……」

 マリアは何かを思い出したように少し考え込んだ。そして、彼女はアレサに言う。

「せっかくなので、見学してみませんか? キルエリッヒがどんなことをしているのかを知ることはとても楽しいと思いますよ」

 アレサは目を輝かせて頷いた。

「ぜひお願いします!」

 二人は修道院内に戻り、マリアの案内で礼拝堂へと向かうことにした。

 礼拝堂は美しい装飾が施された建物で、中には多くの人々が集まっていた。アレサは興味津々で周囲を見回す。彼女らがさらに奥に進むと、部屋がある。

「ご覧くださいまし。今、子供たちに勉強を教えている人です」

 マリアに言われるままに目をやると、一人の女性の姿を見つけた。アレサが希望の村にたどり着いたとき、最初に声を掛けてきた女性その人である。

 彼女は長い金髪を三つ編みにし、青い瞳をまるで宝石のように輝かせている。年齢は20代前半くらいだろうか。彼女はシスターの服を着ており、凛とした表情を浮かべていた。

 授業中のため、キルエリッヒと話をするのはあとにしよう、という事になった。

 やがてキルエリッヒの用事が済んだので、アレサは彼女に話しかけることにした。

「こんにちは、キリーさん」

 マリアが彼女を紹介した。

「この方がキリーですよ」

 キルエリッヒはアレサに丁寧に答える。

「初めまして、私はキルエリッヒと申します。あなたのお名前は?」

 アレサは少し緊張しながら自己紹介をした。

「私はアレサと申します。よろしくお願いします」

 キルエリッヒは優しい笑顔を見せる。

「こちらこそ、よろしくお願いいたします」

 アレサはキルエリッヒに尋ねる。

「あなたはなぜこの村で暮らしているのですか?」

 キルエリッヒは考えるような表情をした後、ゆっくりと答える。

「私はこの希望の村の守護者であり、そしてこの村に住む人々の支えでもあるのです」

 アレサは驚いた表情を浮かべる。

「すごいですね! なぜそのような能力を持っているのでしょうか?」

 キルエリッヒは少し考えてから答えた。

「私の祖母は大魔女だったそうです。私はその力を受け継ぎました」

 彼女は話を続ける。

「しかし、私が受け継いだのはそれだけではありません。この村の住人たちへの愛情と優しさも受け継いでいるのです」

アレサはさらに尋ねる。

「キリーさん、あなたの夢は何ですか?」

 キルエリッヒは少し考え込んでから答えた。

「私の夢はこの村を守ることです」

 アレサは目を輝かせて言った。

「それはとても素晴らしいことですね!」

 キルエリッヒも嬉しそうに笑う。

 アレサとキルエリッヒの会話はまだ続いていった。マリアはその様子を微笑ましげに見守っていたのだった。

 キルエリッヒの能力はこの村の住人たちに大きな影響を与えていた。彼女は村を守るだけでなく、困っている人たちを助けたりもしていた。

 アレサはそんなキルエリッヒに尊敬のまなざしを向け、彼女から多くのことを学び取りたいと思っていた。

 そんなある日のこと……。

「こんにちは、キリーさん」アレサが挨拶すると、キルエリッヒも優しく微笑み返してくれる。

「こんにちは、アレサさん」

 彼女はいつもと変わらず美しい笑顔を浮かべている。アレサはキルエリッヒに尋ねた。

「キリーさんにとって一番大事なものは何ですか?」

 キルエリッヒは少し考え込んでから答えた。

「私にとって一番大事なものは、この村の人たちと仲良く過ごすことです」

 アレサは感動していた。彼女はキルエリッヒに尊敬の念を抱きながら、彼女から多くのことを学び取りたいと思っていた。

 それからというもの、アレサとキルエリッヒはよく話をするようになった。二人はお互いの夢について語り合ったり、村での出来事を話し合ったりした。

 こうしてしばらく続いてきた平穏が、ある者の手によって壊されようとは、彼女たちは知る由もなかった……。


 ある日、アレサはマリアと一緒に昼食を取っていた。食堂では村人たちが集まって食事をしていた。アレサはキルエリッヒの姿を見つけると、彼女に声をかけることにした。

「キリーさん」

 キルエリッヒは優しい笑顔で答える。

「こんにちは、アレサさん」

 彼女は話を続ける。

「何か御用ですか?」

 アレサは笑顔で答えた。

「はい、実はあなたに相談したいことがあって……」

 キルエリッヒは不思議そうに首を傾げる。

「どのような相談でしょうか?」

 アレサは悩み事について話し始めた。最近、村で不審な事件が頻発していることを……

 キルエリッヒは少し考えてから答えた。

「それは心配ですね」 

 彼女は話を続ける。

「でも、まずは調査をする必要がありますね」

 アレサは頷く。そして、二人は調査を始めることにした。


数日後、二人は村の見回りをしていた。アレサはキルエリッヒに尋ねる。

「キリーさん、最近村で起こっている事件について何か知っていますか?」

 キルエリッヒは少し考えてから答えた。

「はい、実は私も気になっていました」

 彼女は話を続ける。

「ただ、誰が犯人なのかはまだ分かりませんね」

 彼女は考え込んだ後、話を続けた。

「でも、何か手がかりを掴むことができれば……」

 アレサは驚いた表情を浮かべる。

「手がかりなんてあるのですか?」

 キルエリッヒは少し考えてから答えた。

「いえ、まだわかりませんが、試してみる価値はあります」

 アレサは決心した表情で言った。

「わかりました! 私も協力します!」

 そして、二人は手がかりを見つけるために調査を始めたのだ。


 数日後、アレサとキルエリッヒは村の広場にいた。彼女はキルエリッヒに尋ねる。

「キリーさん、何か分かりましたか?」

 キルエリッヒは少し考えてから答えた。

「いえ、まだ何も……」

 彼女は考え込んだ後、話を続けた。

「でも、これから何か起こるかもしれませんから……」

 アレサは心配そうな表情で尋ねた。

「それはどういうことですか?」

 キルエリッヒは少し考えてから答えた。

「いえ、今はまだわかりませんが、注意しておく必要があります。でも、私たちはまずはできることをしましょう」

 アレサは興味津々の表情で言った。

「そうですね! 一緒に頑張りましょう!」

 二人は今後も協力し合いながら事件解決に向けて行動することを決めたのだった。


 そして数日後……。

 村中に衝撃が走った。なんと、村の中に殺人事件が発生してしまったのだ。村人たちはパニックに陥り、口々に叫ぶ。

「なぜこんなことが……」

 アレサは呆然とした表情で呟く。

「信じられない……」

 キルエリッヒもまた衝撃を受けているようだったが、彼女は毅然とした態度で言った。

「でも、私たちにできることはまだあります」

 アレサは元気を取り戻す。そして、二人は協力して事件の解決に取り組むことにしたのだ。


 それから数日間、アレサとキルエリッヒは村中を調査して回った。しかし、なかなか手がかりを見つけることができないでいた。

 アレサは自分の部屋にいた。もやもやした気持ちをかかえた彼女は不安そうな表情を浮かべている。

「キリーさん……」

 彼女は呟いた。その時、ドアがノックされる音が聞こえる。アレサは慌てて起き上がると、ドアを開けた。そこにはキルエリッヒが立っていた。

彼女は心配そうに尋ねる。

「何かあったんですか?」

キルエリッヒは真剣な表情で答える。

「はい……実は村の中に不審者が現れたようです」

 アレサは驚いた表情を浮かべる。

「ええっ!?」

キルエリッヒはさらに続ける。

「それで、これからその不審者を捕まえる計画を立てようと思いまして……」

 アレサは不安そうな表情を浮かべる。

「一体、どんな人なのでしょうか……?」

キルエリッヒは少し考えてから答えた。

「それはまだわかりませんね……」

 そして翌日、アレサとキルエリッヒは村中を駆け回りながら、その不審者を探すことにした。

「キリーさん、どこにいると思いますか?」

 キルエリッヒは少し考えてから答えた。

「わかりませんが……きっとどこかに隠れているはずです」

 アレサは不安そうな表情で言った。

「でも、どうやって見つければいいんでしょう……」

 キルエリッヒは少し考えたうえで言う。

「まずは聞き込みをしてみましょう」

 彼女は村人に声をかけ始めた。アレサも彼女に続いて声をかけることにした。

「すみません、不審者のことについて何か知っていますか?」

 村人たちはアレサの質問に答える。

「いや、知りませんね」

 キルエリッヒは考え込む。そして、彼女は話を続ける。

「でも、これだけ探しても見つからないということは……」

 アレサは不安そうな表情を浮かべている。

「もしかして、もう逃げてしまったのでしょうか……?」

 キルエリッヒは首を横に振る。そして言った。

「いえ、まだそうと決まったわけではありませんよ」

 二人は引き続き聞き込みを続けていくことにした。


 次の日、アレサとキルエリッヒは村の広場に集まっていた。二人は村人たちから集めた情報をもとに話し合いを行うことにした。

「キリーさん、何かわかりましたか?」

キルエリッヒは首を振る。そして言った。

「いえ、残念ながら何も……」

 アレサは不安そうな表情を浮かべながら言う。

「でも、このままでは犠牲者が増えるかも……」

 キルエリッヒは少し考えてから答えた。

「はい、確かにその通りです」

 二人は協力して不審者を捕まえることにした。

 アレサとキルエリッヒは村の人たちに声をかけ始めました。

「すみません、不審者のことについて何か知っていることはありませんか?」

 村人たちはアレサの質問に答える。

「いや、知らないね」

 キルエリッヒは少し考えてから言った。

「村の中に不審な人物がいたという目撃情報があるのですが……」

 村人たちは顔を見合わせた後、話を続ける。

「でも、俺たちは何も見てないぜ」

 キルエリッヒは少し考えてから言った。

「そうですか……残念です」

 その時、突然どこかから悲鳴が聞こえた。アレサとキルエリッヒは驚いてその方向を見る。すると、そこには蒼白くなって倒れた男性の姿があった。

「きゃー!!」

 アレサは思わず叫んだ。キルエリッヒはすぐに男性に駆け寄り、体の状態を確認した。だが、体には傷らしきものが見られない……。

 キルエリッヒは男性を地面に寝かせると、周囲の人々を落ち着かせるために声をかける。

「皆さん、落ち着いてください!」

 アレサは恐怖で震えながらも、キルエリッヒに尋ねる。

「キリーさん……これは一体……?」

 アレサは恐怖に怯えていた。目の前で起きた惨劇に動揺していたのだ。彼女は震える声で言う。

「キリーさん……」

 キルエリッヒは少し考えてから言った。

「はい」

 アレサは震えながらも尋ねる。「これは……何が起こったのですか……?」

キルエリッヒは少し考えてから答えた。

「わかりません」

 アレサは不安そうな表情を浮かべながら言う。

「でも、このままでは犠牲者が増えてしまうかもしれません……」

 キルエリッヒは少し考えたうえで答える。「はい、確かにその通りです」二人は引き続き不審者を探すことにする。

 そしてその日の晩に、彼女らはついに不審者を発見した。そいつは黒いローブを身にまとい、怪しげに蒼白く光るランタンのようなものを持っている。

 アレサとキルエリッヒはそれぞれ修道院から剣を持ち出し、警戒しながら不審者に近づく。

「キリーさん、気をつけてください」

 キルエリッヒは頷く。

「わかりました。慎重にいきましょう」

 そして、二人は不審者に声をかけた。

「すみません、あなたは誰ですか?」

 しかし、不審者は何も答えず、ただ立ち尽くしていた。アレサとキルエリッヒは不安そうな表情を浮かべながら尋ねた。

「あなたは何者なのですか?」

 しかし、不審者は何も答えない……。

 アレサとキルエリッヒは警戒しながら、不審者に向かって近づいていく。

「あなたの目的は何ですか?」

 しかし、不審者は薄笑いを浮かべるだけで何も答えない。アレサとキルエリッヒは不思議に思いながらも声をかけることにした。

 すると、突然その不審者は走り出したのだ!

 アレサとキルエリッヒは慌てて追いかける! だが、その不審者はかなり足が速く、なかなか追いつけない……。

 そして、しばらく追いかけた後、アレサとキルエリッヒはついに追いつくことができた! しかし、その不審者は突然足を止めた……。

 アレサとキルエリッヒは警戒しながら近づいていく。

「もう一度ききます。あなたの目的は何なのですか?」

 その時、不審者が突然後ろを振り向いた! 二人は驚いて後ろに下がる。次の瞬間、その不審者は大きな声で笑い出したのだ!

「アハハハッ!」

 その声は不気味で恐ろしかった……。そして、次の瞬間には奴の仲間と思しき者たちが一斉に姿を現す。アレサとキルエリッヒは恐怖に怯えながらも、武器を構える。

「アレサさん、ここは私が!」

 キルエリッヒは剣を構えながら言う。

 アレサは震えながらも答える。

「いいえ! 私も戦います!」

 彼女は勇気を振り絞り、剣を構えた。

 二人は覚悟を決めて戦いに挑むことにした。

 不審者たちは波が押し寄せるように襲いかかってくる。

 アレサとキルエリッヒは必死に応戦するも多勢に無勢。数が多く、なかなか突破できない。ついに二人は追い詰められてしまう。不審者たちは不気味な笑いを浮かべながら迫ってくる……。

「キリーさん! このままではやられてしまいます!」

 キルエリッヒはただうなることしかできない。

 と、そこへ大柄の生き物が突如舞い降りてきた。角がついたトカゲのような、かつコウモリのような羽を持つものが……。

 それを見たアレサは思わずあっ、と声をあげた。彼女はそれに見覚えがあった。

 アレサが城を脱出する際に助けたあのドラゴンなのだ。アレサは嬉しそうに叫んだ。

「ドラゴンさん! 助けて!」

 ドラゴンはその声に応えるかのように咆哮し、不審者たちに襲いかかる。不審者たちは突然現れたドラゴンに驚き、逃げ惑う。だが、ドラゴンは敵めがけて炎を吐き、容赦なく追撃する。

 キルエリッヒもまた驚きつつも剣を振るう。

「アレサさん! 今のうちに逃げましょう!」

 二人は急いでその場を離れた。数分後、ドラゴンは敵を一掃したようだった。アレサとキルエリッヒは安堵のため息をつく。

「キリーさん、ありがとうございます」

 キルエリッヒは少し照れくさそうに言う。

「いえいえ、当然のことをしたまでです」

 二人が話しているそばで、先程のドラゴンが近づいてきた。

「ドラゴンさん! お久しぶりね!」

 アレサは嬉しそうに言う。すると、ドラゴンはこう言った。

「おいらはセリオンってんだ。二人ともケガはないかい?」

 アレサもキルエリッヒもこのときはあっ気にとられていた。ドラゴンがヒトの言葉を話すなんて想像だにしなかったのだから……。

 アレサは少し考えてから答える。

「えっと……。私は大丈夫よ」

 キルエリッヒも同様に答えた。

「私も……、平気です」

 セリオンは安心するような表情を浮かべた後、こう言った。

「そうか、それならよかったよ」

 彼は続けて言った。

「これからどこかに行くのかい?」

 アレサは少し考えてから答える。

「いいえ、特に決めていないわ!」

 彼女は微笑みながら言う。

「でも、どこか安全な場所に身を潜めようと思っているの」

 セリオンは考えるようなそぶりをみせた後、言った。

「じゃあ、おいらの背中に乗りな。安全な場所まで連れていってやるよ!」

 彼は二人に背を向けると身を屈めた。アレサとキルエリッヒは顔を見合わせる。そして、頷きあった後、彼の背中に飛び乗った。

 セリオンは二人を背中に乗せると羽を広げながら飛び立った。空高く舞い上がった彼らはどんどんスピードを上げていく。

 風を切る音が耳に届く。アレサとキルエリッヒはドキドキしながらセリオンの背中にしがみついていた。

 しばらく飛んだ後、セリオンは言った。

「もうすぐ安全な場所に着くぞ」

 二人はほっとして胸をなで下ろす。セリオンは高度を下げて、とある森の中に着地する。

「ここなら安心だ」

 アレサとキルエリッヒはセリオンに礼を言った後、森の中へと入っていく。

「本当にありがとう」

 二人は感謝の気持ちでいっぱいだった。

 そして、二人は森の奥深くまで進んでいく……。すると、小さな小屋を見つけた。アレサとキルエリッヒは喜びの声を上げる!

「やったわ!」

 二人は早速中に入った……。

し かし、そこには誰もいなかった。二人はがっかりしたが、仕方がないので休むことにした。

 その夜……アレサとキルエリッヒは小屋の中で休んでいた。アレサは外で見張りをしてくれているキルエリッヒに感謝しつつ、眠りについた……。


 翌朝、アレサとキルエリッヒが目覚めるとセリオンの姿はそこになかった。アレサは不安そうな表情を浮かべ、キルエリッヒに尋ねる。

「キリーさん……セリオンさんはどこへ行ったのでしょうか……?」

 キルエリッヒは少し考え込んだ。

「わかりません……。しかし、きっと何か理由があるはずです」

 二人はセリオンが帰ってくることを信じて待つことにした……。

 しばらくして、彼女らの前に馬に乗った女性が現れた。その人はランスを手にしている。ランスを持つ女性は険しい表情を見せてこう言った。

「お前たち、人の家で何してるんだい!!」

 アレサとキルエリッヒは慌てて答える。

「私はアレサと申します」

 キルエリッヒも続けて言う。

「私はキルエリッヒと申します」

 すると、女性は驚いた表情を浮かべ、アレサを見てこうつぶやいた。

「アレサと言ったか? まさか……あなたはルミナリア王国のアレサ姫じゃないか!?」

 はい、そうです、と答えるアレサ。

 すると、今度はキルエリッヒが驚いた。

「アレサさん、あなたは王女様だったのですね・・・・・・。聞いたことのあるお名前だとは思いましたが」

アレサはキルエリッヒに答える。

「あれ? 言ってなかったですか?……」

「聞いてませんでしたよ」

「ごめんなさい」

 アレサは申し訳なさそうに謝った。

「いいえ、私こそ知らぬとはいえご無礼いたしました。でもなぜここにいるのですか?」

 キルエリッヒの問いにアレサが答える。

「実は、私はルミナリア王国から逃げてきたのです……」

 アレサの告白にキルエリッヒは驚きを隠せない。

「それは本当ですか!?」

 アレサは悲しげな表情を浮かべながら言う。

「はい……」

 キルエリッヒは少し考え込んだ後、言った。

「わかりました……。私も一緒に行きしょう!」

「ありがとうございます」

 アレサは嬉しそうにお礼を言った。

 そのあとすぐにアレサとキルエリッヒは、槍を手にしていた女性を見る。

「あの、あなたは?」

 アレサは恐る恐る尋ねる。すると女性はこう言った。

「ああ、さっきは悪かったね。あたいはテレジアってんだ。あんたたちはなぜここにいるんだい?」

 アレサは答えた。

「私たちもルミナリア王国から逃げてきたのです……」

 テレジアと名乗る女性は少し考え込んだ後、言った。

「わかった……。一緒に行こうか!」

 アレサとキルエリッヒは安堵した表情を浮かべたが、すぐに驚きの表情に変わった!なぜならそこにはセリオンがいたからだ!

「ドラゴンさん!」

 アレサとキルエリッヒはセリオンに向かって叫んだ。

「あれ? 嬢ちゃんたち、どうしてここにいるんだ?」

 セリオンは不思議そうな顔で言う。

 アレサとキルエリッヒはこれまでの出来事を説明した。

 すると、セリオンが言った。

「そうか……大変だったな」

 それからしばらく沈黙が続いた後、三人は小屋を後にしたのだった……。

 そして、彼らはテレジアという女性とともにルミナリア王国に旅立ったのであった……。


 それから数週間後、アレサたちは無事にルミナリア王国にたどり着いた。

 アレサとキルエリッヒはルミナリア王国の光景を見て驚愕した!なぜならそこには荒れ果てた土地があり、大勢の人々が飢えていたのだから……。

 アレサは悲痛な表情を浮かべた。そんな彼女にキルエリッヒが話しかける。

 二人は見つめ合い、手を握り合った……。

 すると、テレジアが話しかけてきた。彼女は二人にやさしく言うのだった。

 テレジアの案内でルミナリア王国に到着したアレサとキルエリッヒ。しかし、そこで見たものは荒れ果てた土地と大勢の人々だった!

「これは一体……」

 アレサは信じられないといった表情でつぶやく。キルエリッヒも言葉を失う。テレジアはアレサたちに言った。

「これが今のルミナリア王国の現状さ」

 アレサは深刻な表情で言った。

「どうしてこんなことに……?」

 テレジアは悲しそうに言う。

「全てはあの邪教徒どものせいだよ」

 アレサは不思議そうに尋ねる。

「どうして奴らが関係しているの?」

 テレジアは答えた。

「あいつらは力で攻め落としては人々を支配するからね。支配された人々は奴隷のような扱いを受けているんだよ」

 アレサとキルエリッヒは驚愕する。

 その後、アレサたちはルミナリア王国の人々を助けるために立ち上がることを決意した。

 彼らは協力しながら魔法を使える者や武術を使える者など、さまざまな特技を持つ者たちを集め、邪教徒たちに立ち向かうために、義勇兵を結成することにした。

キルエリッヒは自信を持って言った。「私たちは力を合わせればどんな困難にも立ち向かえます」

 アレサもうなずいて言う。

「私たちならきっとできるわ!」

 キルエリッヒは嬉しそうに笑う。

「よし!じゃあ一緒に頑張ろう!」

 アレサとキルエリッヒは手を取り合って誓い合った。

 こうして、ルミナリア王国の人々を救うために立ち上がった義勇兵たちは、邪教徒たちとの戦いに身を投じることになるのであった。

アレサたちは決意を固めて、義勇兵として戦う覚悟を決めた。

しかし、彼らはまだ知らなかった。この先に待ち受ける困難の数々を……。アレサとキルエリッヒは、ルミナリア王国の人々のため、義勇兵として戦うことを決意した。

彼らはまず、仲間を集めるために近隣の村や町を回った。しかし、人々は彼らに対して不信感を抱いていた。

「あなたたちは何者ですか?」「どうして私たちを助けるのですか?」

アレサたちはその質問に対して丁寧に答えた。

「私たちは力を合わせて戦うことができるんです」

「私たちはルミナリア王国の人々を救うために立ち上がったのです」

 人々は彼らの言葉に耳を傾けた。

「それなら、私たちも力になりたい」

 アレサたちはその言葉を聞き、とても喜んだ。

 と、そのとき

「そういうことなら私たちも参加したい」

 アレサ達が振り返ると、その視線の先には男二人の姿があった。

 一人は長い髪で、かつ大剣を持っている。もう一人は髪を天に向けるようにつんと立てており、弓を手にし、矢筒を背負っている。アレサたちは彼らを見て驚き、警戒した。

「あなたは誰ですか?」とキルエリッヒは尋ねた。

「私の名前はジョバンニという」と髪の長い男は答えた。

続いてもう一人も名乗った。

「俺はビルヘルムだ」

 アレサたちは彼らの名前を聞いた後、警戒しながらもアレサたちは彼らに尋ねた。

「あなたたちは何者なのですか?」

 ジョバンニはこう答えた。

「私たちはルミナリア王国の平和を取り戻すために戦うものだ」

 アレサは尋ねた。

「どうして私たちに力を貸そうと思ったんですか?」

 ジョバンニは答えた。

「私たちは君たちと同じように、この国を変えたいと思っているからだ」

キルエリッヒは尋ねた。

「それで、あなたたちはどんな力を持っているんですか?」

「俺は弓を扱える。しかも百発百中だ」

 と、ビルヘルムは自信たっぷりに言う。

 アレサは言った。

「そうですか、ありがとうございます!」

 ジョバンニはアレサたちに言った。

「私たちは君たちと共に邪教の連中と戦いたい。共にルミナリア王国を救おう!」

 アレサたちは彼らの言葉を聞いて喜んだ。男二人は一緒に戦うことを約束した。アレサとキルエリッヒは 彼らに感謝の言葉を述べ、新たな仲間として受け入れた。

 こうして、ルミナリア王国を救うための義勇軍が誕生したのであった。


 翌朝、アレサは目を覚ました。まだ外は薄暗く、小鳥のさえずりが聞こえる。アレサはゆっくりと起き上がり、身支度を整えた。そして、朝食を摂るために食堂へと向かった。

 アレサが食堂に入ると、そこには既に他の仲間たちが揃っていた。彼らは皆、アレサに挨拶をした。

「おはよう、みんな」と彼女は言った。

「おはようございます!」と彼らは答えた後、アレサの服装を見て尋ねた。

「今日はどんな予定なんですか?」と彼らは興味津々だった。アレサは微笑んで答える。

「今日はこれからみんな義兄弟の契りを交わすのよ」

 ジョバンニとビルヘルムは驚きの声を上げた。

「本当ですか!?」と彼らは叫ぶ。

 アレサは微笑みながら言った。

「そうよ」

 その後、アレサたちは食堂で食事を食べ、義兄弟の契りを結んだ。それぞれが盃を交わし合い、アレサは長姉役、テレジアとキルエリッヒは妹分、ジョバンニとビルヘルムは弟分となり、兄弟としての絆を誓った。

 その夜、アレサたちは同じ部屋で過ごし、お互いのことについて話し合った。ジョバンニとビルヘルムは自分たちの経験や夢について語り合った。

 そして夜が明けると、彼らは再び義兄弟の契りを結んだ。

「私たちの絆は永遠です」とアレサは言った。

 ジョバンニたちは嬉しそうな表情を浮かべ、アレサに感謝の言葉を述べた。

 その後、アレサたちは兄弟として共に戦い、邪教との戦いに身を投じるのであった。

義勇兵たちもまた、力を合わせて戦うことを決めた。彼らは互いに協力し合い、共に戦うことを誓った。


そして翌日に初陣となった。

 アレサたちはルミナリア王国の北部に位置する山岳地帯に足を踏み入れた。

 そこで彼らは、邪教徒たちのアジトの一つを発見した。彼らはそのアジトを襲撃することにした。

 その手前に布陣してアジトの様子を見たところ、どうやらグランディア教によって招かれたと思われるゴブリンが大勢いるようである。

 一つ問題なのは、敵方がアジトに立て籠もっていること。これでは戦う術が見当たらない。そこでアレサたちはゴブリンを撃退するために、まずテレジアに指示を出す。

「まずはテレジア、あなたは敵の大将を挑発しておびき寄せてほしい。やってくれるかしら?」

「任せておくれよ、義姉貴あねき。口の悪いのが自慢でね。思い切り罵ってやるさ」

テレジアは自信たっぷりに答える。

 アレサは続けてビルヘルムに指示を出す。

「あなたはあの櫓にいるゴブリンたちを攻撃してほしいの。でも無理はしないでね」

「了解だぜ、義姉ねえ!必ず成功させてみせる!」と彼も力強く答える。

 最後に、キルエリッヒとジョバンニには敵方のアジトを襲撃する役目が与えられた。

「キルエリッヒ、あなたが指揮する軍と精鋭部隊でアジトに乗り込んでほしいの。そしてゴブリンたちに目に物を見せてやりなさい」

「かしこまりました。義姉君様あねぎみさま

「ジョバンニ、あなたもキルエリッヒに協力するように」

「おまかせあれ、義姉上あねうえ

 その後アレサたちは作戦を立てながら行動を始めた。

 まずテレジアはアジトに近づき、挑発を仕掛ける。

「おい、そこの大将!お前に私と戦える勇気があるか。あるんならこそこそしないで出て来い!我らが王女アレサ様の妹分たるこのテレジアと一騎打ちをしようじゃないか!」

 すると、敵の大将であるゴブリンが姿を現した。そいつは柄の長い斧ポールアクスを手にしている。

「お前ごときがわしを侮るとは小癪こしゃくよのう、小娘が。よかろう、相手をしてやる」

 敵はテレジアに向かってきた。テレジアもランスを構えて馬を走らせる。

 アレサと義姉妹たちはアジト近くの茂みからそれを見ており、一対一の勝負を見守っている。

 しかしテレジアは意外にも華麗に動き回りながら戦っていた。敵の攻撃を避けつつ側面や後方からの攻撃も行い確実にダメージを与えていく。

 その姿はまるで舞うかのような優雅な戦い方だった。

 そしてついに敵の大将をテレジアのランスが捉えた。突き倒すことに成功したのだ!

 その直後に、ビルヘルムは弓隊を率いて櫓を攻撃した。キルエリッヒは頃合いを見て突撃を開始した。それに続くように精鋭たちも参戦し、敵であるゴブリンの一団をを混乱させた。その光景を目にしたアレサと義姉妹たちは歓声を上げる。

 初陣を勝利で飾り、彼女らは更に高らかに歓声を上げ喜んだ。アレサとテレジアは互いに抱き合い、この勝利を祝った。

 この戦いを通じて彼女たちはさらに強く結ばれたのであった……。

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竜と姫と悪の教団 ダイヤのT @adachinoryotsu

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