第13話 歌って踊れて魔物も倒す、勇者パーティはアイドル★ユニット!

「オーリー……君の気持ちはわかった。とてもよくわかりました」


 オーリーの告白に、俺は神妙な面持ちで頷いた。


 まさか世界平和維持機構の人たちが、魔王を討伐した後の勇者の生活について真剣に考えているなんて思いもしなかった。


 勇者とは、魔王を倒してそれで終わり、だと思っていたから。


「儂らを生かそうとしてくれてるっちゅーことは、よぉくわかったからの。アイドル、継続してもええぞ」


「ですね! あっ、でも……僕らの衣装……魔物の返り血で……」


 イヴァンの言葉に、俺もウルスラも青やら緑に染まり酸化して濁った色に変わりゆく衣装を見下ろした。


 ウルスラいわく、オーリーが夜なべして作った一点ものの大事な衣装。


 攻撃に特化した俺たち勇者一行パーティは、繊細な生活魔法は使えない。


 魔法の杖をひと振りするだけで解決する、なんてのは夢のまた夢だ。


 けれどオーリーは、首を振った。縦ではなく、横へ。衣装が台無しになった事実を否定するように。


「大丈夫です、問題ありません。このような事態は想定しておりませんでしたが、管理支援官マネージャーには隠密スキルの他に、野営支援スキルもあるのです!」


 オーリーはそう言うと、俺たちの衣装に両手をかざして何事か唱えた。


「すごい……あっという間に綺麗になった……」


 浄化と洗浄の魔法だ。魔物の血塗れ衣装は、あっという間にピカピカ新品状態へと戻っていた。


「凄いですよオーリーさん! こんな魔法が使えるなら僕、文化的生活を捨ててもいいかもしれません!」


「イヴァン! 滅多なことを言うんじゃないッ! ……オーリー、儂らは引き続き文化的生活だけは死守するからの!」


 イヴァンの失言をウルスラが全面的に拒否をした。

 それについては俺も完全に同意だ。文化的生活だけは死守したい。絶対に。絶対にだ。


 そのための第一歩としてのアイドル活動である。


 オーリーいわく、アイドルは民衆の幸福度を底上げし、健康増進にも役立つらしい。その上、好かれてお金も稼げる。


 やらない手はない。


「よし、仕切り直しだ!」


 俺はイヴァンとウルスラ、そしてオーリーに向かってそう告げた。そうして観衆であふれたステージへと駆け戻る。


 熱狂と歓声に迎えられた俺たちのアイドル活動はこれからだ。


 ——とりあえず、打ち上げはお腹いっぱいご飯が食べたい。




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