第九話 ~食堂へと向かう中、優花の本心を聞いた件~
第九話
四時間目の授業を終えるチャイムが鳴った。
「では、本日の授業はこれまで」
国語の先生はそう言うと教材をまとめて教室を後にした。
こうして午前中の授業を終えて、昼休みの時間がやって来た。
「じゃあいつものように学食に行くか」
俺がそう言って後ろの席の幸也に話を振ると、
「そうだね。奏のお昼ご飯は美凪さんが作ってくれるようになったけど、俺の分は無いからね。凛太郎が作ってくれるなら話は別だけど?」
そんな言葉が返ってきたので、少し思案した後に言葉を返す。
「そうだな。材料費と手間賃をくれるなら作ってやってもいいぞ?」
二人前も三人前も大して変わらないからな。
なんて思っていると、美凪の方からダメが入ってきた。
「むー……凛太郎さんの手料理は私だけのものにしたいんですけど……」
「すまないな、幸也。雇い主からのダメ出しが入ったわ」
「あはは。なるほどね。美凪さんにそう言われたら諦めるしかないな」
そうしていると、朝と同じように俺たちの所に桜井さんがやって来た。
「ねぇねぇ、もし良かったら今日は皆と一緒にお昼ご飯食べてもいいかな?」
「珍しいですね。美鈴さんはいつもはお兄さんたちと一緒に食べてませんでしたか?」
桜井さんのその言葉に、美凪が軽く首を傾げながらそう問いかけた。
別に拒否をしている感じでは無いな。単純に疑問に思ってるように見える。
「あはは。たまには私もお兄ちゃんたち以外の人と親睦を深めようと思ってね!!どうかな?」
「私は構いませんよ。というかダメという人は居ないと思いますが」
「そうだな。優花が了承した時点で全員了承だろ?」
「……なんですかそれは。まるで私が美鈴さんを毛嫌いしてるような言い方じゃないですか」
ジトーっとした目でこちらを見てくる美凪に、
『いや、どう見ても毛嫌いしてただろ……』
という言葉は飲み込んだ。
「いや、そういう訳じゃ無いんだけどな。幸也も奏も大丈夫だよな?」
「うん。別に大丈夫だよ」
「うん。私も大丈夫だよ!!というか、美鈴ちゃんとは親睦を深めたかったからね!!」
「ありがとう、奏さん!!そう言ってくれると嬉しいよ!!」
「じゃあ、席が埋まりきらないうちに行こうか。いつもの場所が空いてるといいな」
こうして、俺たちはいつものメンバーに桜井を加えて食堂へと足を運んだ。
「……別に、私は美鈴さんのことを嫌ってるわけじゃないですからね?」
食堂に向けて歩いていると、隣の美凪が俺にそう話を振ってきた。
「あの場では言わなかったけど、ぶっちゃけ嫌ってると思ってたわ」
「まぁ……そう思われても仕方ないと思える発言はしてきましたからね」
俺の言葉に、美凪は少しだけ苦笑いを浮かべながら言葉を返した。
「嫉妬してたんですよ。貴方と特別仲が良いように見えてましたからね」
「……そういうことは無いんだけどな。まぁある種の誤解はもう解けたのか?」
「はい。とは言ってもライバルは美鈴さんだけでは無いので油断は出来ませんけどね」
……ライバル?俺と話をする良い異性なんて限られてると思うけどな。
「貴方はとてもモテるんですよ。そんな自覚ないでしょうけどね」
「……その言葉。そっくりそのまま返してやるよ」
入学して一ヶ月。幸也と付き合ってる発言をした奏や、超絶ブラコン兄狂いの桜井さんにはそういう事は無かったが、美凪に言い寄る男は少なくなかった。
まぁ、美凪は相手にしてなかったけど面白くなかったのは言うまでもないよな。
「ふふーん。私がモテるのは当然ですよ?なんと言っても超絶美少女の美凪優花ちゃんですからね」
「久しぶりに聞いたなその言葉」
「ふふーん。これ程の美少女で、現界に降り立った天使……いや美の女神の私を彼女にしてるんです。幸せをかみ締めてくださいね?」
「あぁ、俺はとても幸せ者だよ」
そんな話をしていると、後ろにいた幸也が俺の肩を叩いてきた。
それを受けて振り返ると、幸也は呆れたような表情で俺に言ってきた。
「ねぇ、凛太郎。全部聞こえてるからね?」
「……え?」
幸也の言葉で隣を見ると、ニタニタと笑う奏と桜井さんの姿があった。
「いやー優花ちゃんは可愛いね!!」
「は、はい!?」
「もー!!私はお兄ちゃん一筋だから心配しなくて平気だよ!!海野くんはただの友達だからね!!」
「み、美鈴さん!!??」
どうやら俺たちの会話は後ろの三人には筒抜けだったようだ。
「海野くんと優花ちゃんは家でもあんな感じなのかな?」
「まぁ……そうだな」
「ふふふ。仲が良くて良いね!!……っていけないいけない。あまり君と楽しく話してると優花ちゃんに嫉妬されちゃうかな?」
「もー!!美鈴さん!!からかわないでください!!」
「……あまり大きな声ではしゃぐなよ。他の人の迷惑だろ」
「あはは。まぁ周りに人が居ないからそこまで気にしなくても良いと思うけど、食堂では静かにしようね」
こうして、俺たちは朝と同様に、賑やかに会話をしながら食堂へと辿り着いた。
腹ぺこお嬢様の飯使い ~隣の部屋のお嬢様にご飯を振舞ったら懐かれた件~ 味のないお茶 @ajinonaiotya
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