第40話
***
すでに壊れてしまったとある世界。
敵のクリーチャーと従来のモンスターが跋扈する、とある世界。
そこに、調査隊として派遣された少年たちがいた。
「ゴブリン食べちゃダメなんて、あんまりだよ」
気品のある少年が焚き火の番をしながらもらす。
ツーとかツイ廃と、調査隊の仲間から呼ばれている少年である。
焚き火には、スープが入った鍋がかけられている。
それを焦げないようにクルクルとかき混ぜる。
かき混ぜながら、呟く。
「あの脳みそが美味しいのに」
その呟きに答えたのは、
「ぎゃう?」
真っ白いドラゴンだった。
ツーはそのドラゴンへ返す。
「ねー?ゴンスケちゃんもそう思うでしょ?」
「ぎゃうるるる!!」
尻尾を変形させて、以前ツーがゴンスケへご馳走した光景を再現する。
ゴンスケも珍味が好きらしい。
と、そこへ周囲を調べてきた仲間たちが戻ってくる。
「一般的な現代日本人に、あのサバイバル飯はちょっとなぁ」
1人の少年が言ってくる。
「あ、冬真さん、おかえりなさい」
ツーに冬真と呼ばれた少年、その横からもう1人少年が現れる。
「そうか?俺は美味しかったけどな」
「食ったんか、すげぇな、異世界人」
冬真が呆れる。
「ユートさんも、おかえりなさい。
ゴブリン禁止令が出てるので、普通のスープを作りましたよ。
飲みますか?」
「いる」
「のむ」
二人が口を揃えて言ってくる。
ゴンスケの分も用意する。
「それで、成果はありましたか?」
2人と1頭がスープを味わう。
ツーの問いかけに、ユートが答える。
「なんもなし。
俺の魔眼で見ても、人はいなかった。
いるのは、あのクリーチャーとモンスターだ」
「あの化け物、人の部分はともかく獣の部分は食べ応えありそうですよねぇ」
その会話に、冬真がツッコミを入れる。
「悪食だなぁ。
あんなの食べたら腹壊すぞ」
「……たまに、牛とか豚とかが混じってるやついるじゃないですか。
そこだけ切り取って煮たら、いい出汁取れそうじゃないですか?」
ツーの言い返しに、冬真がスープの入った容器を凝視する。
「おい、まさかとは思うが……」
冬真が恐る恐る聞いてくる。
しかし、ツーが答える前にユートが、
「支給されてるスープだ。変なものは入っていないから安心しろ」
そう言ってきた。
冬真は、ホッと息を吐き出してスープを飲み干した。
その横で、
「ぎゃうぎゃう!!ぎゃうるる!!」
ゴンスケがお代わりを催促してくる。
「はい、どうぞ、ゴンスケちゃん」
その光景を、冬真がどことも繋がらなくなった携帯端末で撮影する。
「あーあ、ネットさえ生きててくれればなぁ」
冬真がボヤく。
「ですねぇ、僕たちが組まされたのって三人とも実況者っていう理由ですし。
掲示板が復活しててくれればなぁ、ほかの頭いい人たちに助言求められたのに」
ツーも寂しそうに言う。
「ほんと、それな」
ユートも頷いた。
冬真がさらにボヤく。
「こっちも動画撮影して実況したのになぁ」
「世界が滅んでるから、見る人もいないですけどねぇ。
でも、あの毎日は大変だけど楽しかったなぁ。
あの人たち、もうほんとにいないんですよね」
ツーが言った時だ。
冬真の携帯端末が震えた。
見ると、非戦闘員のため基本的に【役所】にいるもう一人の特別な瞳をもった少年――トオルからの着信であった。
彼からもたらされた情報に、実況者である3人は色めきたった。
曰く、掲示板が復活したとのことだった。
【救世主】さぁ、世界を救おうじゃないか少年【プロジェクト】 ぺぱーみんと @dydlove
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