最終話 かっこう



 ピンクの電話。

 天剣高校、学食の電話。

 黒電話はアナログ回線。ダイヤル回線の10と20。

 デジタル、プッシュ回線の現在。

ダイヤル回線の10と20に絶対合わせる筈もない現代人の中、その存在は、時代劇にかぶれているのか、株輝者とは反対に、株零者として企業内に巣食う存在。

 嫌な者、自分に不利益な存在を落とそうとする存在。

 れんを落とそうする女性の親。学食内で性別を偽り、男が女に化けていた嘗ての学食の人間。

 学校給食、学校食堂で、ライバルを蹴落とそうとする存在が混ぜしモノ。

 


「れん! ついでに焼きそばパン買ってきてよ! 学食まさか行かないよね!?」


「了解!」

 


 良家の子女であるれん。


 寮の中での生活。


 彼女を休日連れ出す仲間……。


 王 龍丹と愛崎 祭。

 愛崎 祭の縁談相手の企業から委託された存在。

 愛崎 祭と妹 愛崎 れん。

 血が繋がらない二人。

 最初から結ばせるつもりで近親ではない二人を同じ一族とした両家の親。


 

 ブラックフライデー、魔の金曜日になる筈だった、囚われの日はもう過ぎた。

 お互いの休日の始め。

 金曜日、土曜日、日曜日と、同級生と過ごすれん。

 寮から出た後、研修旅行の毎週。

 農村体験。

 嘗て中国の良家の子女は、農村で貧困な生活を体験していた。

 愛崎 祭は王 龍丹として縁談相手の大企業の株価を暴落させていた。


 その一カ月後、最初にこのゲームのシナリオをクリアしたプレイヤーの受賞式に現れたのは、れんとその父の愛崎正守、亜沙羅人生だった。

 彼、亜沙羅人生と愛崎連は、同じ農村共同体、イスラエルのキブツのような共同体で終末、週末を過ごしていた。

 その場に王 龍丹はいなかった。

 イングランド留学中にオーウェンの経済思想を学び、中国でキリスト教思想を基盤にした共同村作りを行い、独自の社会を形成しようとした王 龍丹。

 その王 龍丹も、それを実現すべく岩手の寒村に居たのだ……。



 『イーハトーヴォ』。宮沢賢治の考えた理想社会。


 龍丹はそこで星援隊(声援隊)を結成した。

 この地球を一つの国家連合にする構想。その為にまず経済システムの統合を龍丹は考えた。

 全ての会社を銀行のグループ統合で、一つにその利益を共有し合う。しかし、それぞれの利益として存在し、その消費運用で、利益の総体としての利益を分配し、それを消費で使う事で、経済を一つに融合する。競争社会の放棄と自由を矛盾ながら併存させたその共有理論。

 共産主義の国営企業は、国営としての銀行が預金を纏め、国家が国営企業の社員に給料を国営銀行の預金として預け、国営企業が作った製品を、国営企業社員が国民として消費する。その国営企業の利益として、製品売買の利益が国家の利益となった後、国営の銀行に償還される。

 共産主義の矛盾で、国民がタンス預金等の私有財産を容認しないのは、しはっら給料全額が国営銀行に償還されないから、共産主義派私有財産を認めない。そして国民に支払う給料を高額にしないように設定した事で、国民の自由が禁止されたのだ。

 共有主義で、その矛盾を補填する為の自由貿易主義。国民一人が法保体として、法で容認された保険ちして人間一人に支払う国民給料を、その国民一人が亡くなった時に、保険会社からその総額の給料分を償還する制度。日本の場合、サラリーマンが支払われるべきサラリーの総額は2億円だとも言う。

 国民皆保険が保険会社として民営化され、支払われる給料から天引きされる健康保険。その保険料が保険会社に支払われる。

 資本主義が投資家に解放する株式を30パーセント未満とし、国営企業を外資から保護した上、資本主義経済と融合する共有主義。


 それを王 龍丹は、聖法将軍となる事によって実現させようとしたのだ。

 王 龍丹。本名愛崎祭の手紙によって、彼が何を考えていたのかをれんは知った。

 その手紙を読んで、義父の愛崎正守は涙を流したという。

 涙より悲しい想い人の中に眠る微笑みを、いつまでも守りたい……。

 王 龍丹は心から笑っていた。

 龍丹は副将軍となった。代々愛崎家がそうだったように。

 涙の跡に伝う一輪の思い出が、永遠の闇を払い、魂の救済に泣いた。

 安らぎの幸せとなった歌が流れだし、優しい真実を包む時、宇宙は深遠なる奥義を解き明かすだろう。

 王 龍丹の魂は救われた。

 言葉という毒を与えられた白雪姫という心理は永遠に問い掛ける。



「私は綺麗?」



 自分が老いた後、永遠ではない自分が映る鏡に……。自分より年若いセカンドへ。セカンドとその連れ子へ。


 

 愛崎 祭の実母は鏡に問い掛けるだろう……。







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BD-1 飯沼孝行 ペンネーム 篁石碁 @Takamura-ishigo-chu-2-chu-gumi

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