エピローグ

 それから。

 あたしとハルくんは連絡先を交換した。いつでもあたしが力になるからって、固く固く、指切りまでして約束もした。

 ハルくんは笑顔で頷いてくれた。


 これからまた、離れ離れだ。あたしと彼の距離は離れるし、身の回りだって何もかも違う。幼少の頃の思い出から、今日までの七年間のように、時間の共有なんて出来なくて、寄り添うことも出来なくて。

 だけどこれからは、少しだけ、違うのだ。

 どこか遠くで彼が頑張っていることを、あたしはこれから知っていてあげられるのだから。

「誰か入っちゃうんだ……」

 翌日にはもう、ハルくんの家に引越し業者が訪れていた。

 買い手が見つかったと聞いていたから、不思議では全然なかったけれど、その越してくる人物っていうのが予想外。

 まさかの転校生くんだった。

「転入が先になっちゃったけど、俺これからこっちで暮らすんで。よろしくお願いします」

「なんで昨日言ってくれないの!?」

「いやいやいやいや無視しただろ!?」

 なんてやり取りがありました。

 そう、そうだ、そうなのだ。

 きっとハルくんだけじゃない。あたしの身の回りだって、どんどんどんどん変わってしまう。

 七年も時が経ったのだ。お隣さんが変わるのは、悲しいけれど仕方がない。

 そうやってあたしも、前に進んでいきたいと思う。

 変わらないものだってあるんだから。

 ――不完全なジグソーパズル。

 額縁に飾られた、二匹のシャチの物語は、変わらないし、終わらないから。

「頑張ろう」

 彼に負けてはいられない。目の前のことから着実に。

 頑張り屋さんの彼にピッタリな……お嫁さんを? 目指して?

 親友に聞かれたら鼻で笑って「ふーん。重てえ女」って言われそうだ。

 腹バンしてやる。

 ……まあまあまあ。

 頬を叩いてしゃっきりと。

 伸び伸び、続けていこうじゃないか。

 だって、


 この物語はいつまでも延長線上。



 ――地続きに続く、人生なのだから。




(不完全なジグソーパズル。了)

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【19000文字小説】不完全なジグソーパズル。 環月紅人 @SoLuna0617

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