目指すべき道
「最初に言わないといけないことがあるんだが。」
お互いのことを何も知らない2人は男が見かけたという池のほとりで話をすることにした。
「俺は殺し合いなんてしたくないから、必要に駆られない限り戦いは避けるつもりだ。それでも構わないか?」
「私も死ぬのは怖いので戦いたくはありませんけど…私たちは戦わせられるためにこの世界に呼び出されたのに大丈夫なんでしょうか…?」
男は一瞬顔を顰めたが、答えてくれた。
「そもそもそんなのに取り合う必要はないだろう。俺たちは本の中の住人なんだ、自由なんて望むべきじゃない。」
「そうですね…」
気落ちした様子の少女を見て男は言葉を続ける。
「だが、自由ってのは俺たちにとっては夢のような話だ。もし全員でそれが叶うならそんな道を目指すのも悪くはないと思うぞ。」
「それです!一緒に自由になれる方法を探しましょう!」
少女が興奮気味に詰め寄る。
「それは構わないが、いきなり一緒に戦おうと言ってきた訳を聞かせてもらえるかい?」
「そ、それは…」
少女は言い辛そうにしているが、男は黙って待つ。
「あなたが似ていたからです…」
やがて赤面しながら小さな声で少女が答える。
「似てる?」
「物語の中で狼から私のことを救ってくれた猟師さんがいたんですが、さっきの貴方の姿がその方と重なって……一緒にいたいと思ったんです。」
最後の方は消え入りそうな声だったが、男には何とか伝わった。
「…はははっ!」
嫌われると思っていた少女は驚いた様子で男を見る。
「なるほどな、いきなり一緒に戦おうなんて言われたから何を企んでるんじゃないかと警戒してたよ。そういうことなら猶更みんなで自由になれる方法を探さないとな。」
「お嬢ちゃん、これから俺たちは仲間だ。名前を聞いてもいいかい?」
「……”赤ずきん”です。」
「赤ずきん…?それは作品名かな。 俺は”なんでもござれ”だ。好きに呼んでくれ。」
赤ずきんは少し考え、
「じゃあ、おじさん!これからよろしくね。」
笑顔の赤ずきんを見てなんでもござれは苦笑する。
「おじさんって…もう少し俺自身のことを意識して欲しいもんだが…。」
目指すべきものを共有し、この相手とならやっていけそうだと心のどこかで思う。
End of Story けーと @kate20
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