第2話 紫色

しまった...どうしよう...


私、大山千景湯船につかりながら自分が勢いでやったことを今更ながら頭を抱えて後悔していた


(雨で濡れていたとはいえこれって誘拐になるのかな、、、いや本人も同意の上だったし!)


ずぶぬれだったので先に湯船につかった彼女は今、リビングでココアでも飲んでいるだろう。

あの物静かな感じだと部屋を物色しているとかもなさそうだ、きっとソファーに座ったままだろう。


(どうしてこんなことをしちゃったんだろうな~、これって下手したら捕まる・・・!?)


今頃テレビでは『女子高生失踪!?』なんてニュースが流れているのであろうか。

もしそうだとすれば、今頃警察の方では作戦会議室みたいなところで犯人の動向を追っていることだろう。

捕まれば明日のニュースに私の顔と名前が晒されることになるはず


「いやいやそんなバカみたいなこと起こるわけがない…はず…」


自信はない、けれどあの時は体が動いたのだ。雨に濡れているのもそうだったが

あの表情。悲しみに暮れてどこか途方に暮れている顔をしていた。自分よりも年が若い子がそういった表情をするのは我慢できなかった


「あ、まだ名前を聞いていないわ・・・」




「うぃーす、お風呂あがったよ~ってか、ずっとソファーに座ってたの?スマホとかは?」


「持ってないです、すべて回収されたので」


机の上に置いてあったマグカップには既にココアはなくなっていた。本当に座ったまま過ごしていたのだろう

私は自分のと一緒に二杯目を入れて上げ、彼女の横に座り話を聞くことにした。


「そういえばさ、名前聞いていなかったんだけどなんて言うの?」


「・・・・・・・・・・・・・・・」


え、もしかして話したくないものだったりした?それとも出会って間もない赤の他人に話すのは流石にって感じとか!?

顔には出していないが内心は物凄くひやひやしている、この沈黙を早く終わらせなければこっちの身が持たない


「家の電話番号とか知ってる?友達の連絡先とかでもいいよ!」


「・・・ないです、そんなもの今の私にはもうないんです」


彼女はそう口にした、唇をかみしめてそう呟いた。言いたくなかったのか入れたばかりで熱いはずの

マグカップをぎゅっと握りしめている。心なしか先程見せていた笑顔もなくなっていた


「私、捨てられたんですよ。親って言っていいのか分からないけどいなくていいって言われました」


「それって・・・酷くない!?自分の娘のことをいらないなんて親の言うセリフじゃないよ!!」


「えぇ、親じゃないので。だからこそ、捨てられても何にも思えないんです。私、孤児院出身なので」


淡々と述べているが整理が追い付かない。孤児院?捨てられた?最初はこの子の親に対しての怒りが湧いていたけど

今は話を整理するので精一杯であった。


「孤児院でも親ではあったんでしょ?だったらとりあえず児童養護施設に、、、」


「無理です、受け付けてくれませんよ。私の出生をたどったらそれもやむを得ないです」


まじか、もう打つ手がないじゃないか・・・

けれど、もし私がここで見捨てたりしたらこの子はまた露頭をさまようことになるはず

いや、もしかしたら汚いおっさんどもに捕まって屈辱的な思いをするかもしれない。

それだけはしたくない…だったらそうだ!


「ねぇ、一緒に住まない?」


「え・・・それって」


「言葉のまんまだよ!あなたみたいなかわいい子は誰か大人がついていなきゃいけないんだって!!」


「それでどう!?」


「わ、わかりました…よろしくお願いします」


「紫音(しおん)っていいます。髪が紫色なので」


ようやく話してくれた、物は勢いだ。こうして奇妙な出会い方をした私たちの生活が始まっていった











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拾いっ子姉妹? Rod-ルーズ @BFTsinon

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