第33話 学校の謎
弁当を食べながら俺は次の授業について考える、次は数学で今日の林間学校限定の授業は6限目の地域社会学だけだ
焼肉は少し辛めのタレがかけられており桜澱粉の乗ったご飯と共に食べると辛味が消えて美味い、肉が少ないのは少し不満だが最後に甘いご飯で後味が良い
「ねえ、知ってる?この学校の噂」
「えっと……幽霊の話?」
「そうそう、怖いよねー」
「やめてよートイレが外にしかないんだからー!」
幽霊か、まあこんな静かなところじゃ怖い話は王道か…実際に幽霊が出ても俺は霊薬があるから倒せるがな、なんて思いつつ俺は食事を済ませてコテージへと戻った
コテージの鍵は全員に渡されていて授業の合間に帰ることが許されている、と言っても一眠りする時間もないため教科書を取ってくるとか体育の前にジャージに着替える時くらいしか使わないが
俺は授業が始まるまで本を読むことにした、手に取ったのは桜山脈神話の上巻だ
「第一章、桜の種…」
桜山脈は桜の神が桜の種を植えたところ間違って桜と山を反転させてしまい地下に桜の枝や葉が伸びて空洞になったと書かれている、随分不器用な神様だ
俺はソファーに腰掛けて読み耽るその後、地下の桜の花が散ると花弁は鉄となって桜山脈には豊富な鉄資源などが埋まった……
桜市の誕生の方を取り出し鉄資源が本当かどうか調べてみる、すると予想に反して合っていた。桜山脈は地下資源が豊富で鉄だけでなく温泉や石油が少量だけわき桜市の発展に大きく役立った
そうして気がついた頃にはもう6限目の中盤に差し掛かった時間だった、急いで俺は校舎へと向かったのだった____
ついた頃にはもう授業が終わる寸前だった、説教を喰らった俺は申し訳なさそうな顔で教室に入る
吉山先生に軽く会釈し俺は空いた席に座った
「さて、授業を続けます。このように我々の住む桜市にはいくつもの神話があります。なぜかわかりますか?これは桜花大右衛門が信条としていた『言伝』からきています、桜花大右衛門は幼少期から文学に目覚めいくつもの手記や童話などを残しました。彼はこの言葉を残しました『人は言葉を遺して人となる』、動物と違い人々は言葉と文字を持っています。人は子孫だけでなく音楽、絵、本などに生きた情報を残すことこそが人であると言ったのです。彼は一騎当千の強さを誇っていましたがそれ以上に文学の強さを知っていたのです」
「文学の強さ、ねえ」
つぶやいた俺の言葉はチャイムによってかき消された、学級委員長が挨拶をして俺たちはまたコテージに戻ってきたのだった
「初日からやらかすじゃん」
「本に熱中しすぎた、やらかしちまったー!」
現在時刻は午後4時だ、七時に始まるBBQまでは自由時間なため俺たちはコテージで休むことにした
「さて……俺は今から廃坑に向かおうと思う、紫乃ついてきてくれ」
「えー僕っすか?」
「暗闇で動くのは本来ならアサシンのほうがいいが……いないからな」
他のメンバーは適当に時間を潰し、クロエは生徒会の予定があるため向かった
コテージまで続く道は線路の枕木のように木材が植えられており紫乃はそれをぴょんぴょんとジャンプして移動していく
すると少し斜面が急な場所で体制を崩してしまった、俺は焦らず彼女の制服の襟を掴んで抱き止めた
「大丈夫か?」
「は、はいっす」
紫乃を立たせて気をつけろと言い聞かせる、そうして俺たちは坑道が隠された場所にたどり着いた
鍵は簡単に外せそうだ、俺はピッキングツールを取り出しアーチャーの感覚強化で素早く解錠し内部に入った…
薄暗い、それだけが俺たちの脳内に浮かんだ。アイテムボックスからライトを取り出し光をつける
いつから放置されてるのかわからない、湿気で朽ち果て錆びついたピッケルやスコップ…地面の中央にはトロッコ用の線路がある
俺たちはそこから歩みだし硬い土や岩を進んでいく、ただ暗く狭い…そんな最中俺は気配を察知した小さく天井にいる…
「まずい!!!」
咄嗟に俺は土魔法で壁を作り紫乃を連れて出て行った
「何がいたんすか!?」
「コウモリだ、こんな場所に住んでるコウモリがどんな病気持ってるか体験したくないだろ!?」
「ヒエー!!」
疫病について俺は耐性を持っていない、鉱山を調べるのはやめておいたほうがよさそうだ____
7時ごろ、俺たちはBBQ場に向かう
炭火の良い香りが鼻腔をつき次に肉を焼く音が届いてきた、場所を見るともう3班ほどがバーベキューを始めていた
愛理がこっちこっちと手を振り場所を示す、俺たちは席について早速始める
二つの安い牛肉の入ったパックから適当に取り出して野菜と共に焼く
「なあ、玲。俺らと一緒にすまないか?どうせバンディットとかスキルのことで手を組むことも多いし」
「うーん、でも弟が人と住むの嫌だし」
「そうかー残念」
愛理はストーカー被害で、沙奈は帰りたくない、紫乃は家にいたくない
いろんな理由で集まってるので別に来なくてもいいか
玲は飲んでいた緑茶のコップを置くとトイレへと向かって行った
「うートイレトイレ」
玲は野外に置かれたトレイに向かっていた、コテージ内に水道は通っておらず電気のみがつながっている
冷蔵庫にはペットボトルの水とお茶が入っており頼めば補充してくれるが、トイレや風呂は集合して入る必要がある。多少不便だがまあキャンプ場よりは過ごしやすい
トイレに入ると玲は眼前に立つ男の子に気がついた、青白い肌をした少年
小学生ほどだろうか
だが玲は知っていた
学校で噂になっている幽霊のことを
「ぎゃああああ!!!!」
情けない声が山の中に響いた___
異世界から帰ってきたらスキルのせいで倒した魔王の力引き継いでました @Karasienadori
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