第58話
アカネちゃんと喋りながら歩いて、大体30分で駅前のモールへと到着した。休日の昼間な為か、人通りが非常に多い。
「うーん、すっごい混んでる……友達は今どこら辺居るって~?」
「えーと……今は駅前の像で待ってるそうです」
「あ〜反対口のあの像!」
絵本作家がデザインした、市のマスコットを象った石像。あまり意識してなかったが、待ち合わせには良いのかもしれない。
「それだと結構人が居たりしないかな?」
「今はあんまり居ないそうです。ほら」
「あ~……ホントだ」
アカネちゃんの見せてくれた画像だと、人でごった返しているこちら口と違い、どこか
「とりあえず行きましょっか」
「そうだね~」
最初から石像前で待ち合わせれば良かったのではと思ったが、私は口にしなかった。
駅構内を進み、反対口まで移動すると、待ち合わせ相手を見つけたのかアカネちゃんは石像のある方へと駆け寄っていく。
「お待たせしましたー!」
「んにゃー別に待ってないよ」
アカネちゃんと同じ……いやほんの少しだけ背の低い女の子は、私に気付くと向き直る。
「こんにちは」
そう言って彼女は、深めに被っていたパーカーのフードを取る。風で
目が合った瞬間、心臓が早鐘を打ち初め、彼女から目を逸らすことができない。
「……?」
「あ、えっと、こんにちは……」
「えっと……どうかした?」
「うっ、ううん? 大丈夫だよ〜」
改めてまじまじと彼女を観察する。彼女の格好は、白が基調のオーバーサイズのパーカーに黒いスキニーパンツ。髪は手入れが行き届いてないのか、寝癖とは違うボサボサ感。手入れをしていない訳では無さそうだが……。
顔は整っていているが、やや頬が欠けている。そして気付く、彼女に刻まれた深く黒いくまを。重そうな瞼と相まって、どこか痛々しい。
「……あぁ、これ? 昔からだから気にしなくて良いよ。」
そう言って彼女はニコリと笑うと、私は耳の先が熱くなるのを感じた。このドキドキは何なのだろうか。
「あのーハクさん、自己紹介とかいいんですか?」
「あ~そうだったそうだった。ボクは『
「初めまして、よろしくね荊さん」
私は見逃さなかった。握手を求める荊さんの顔が何故か悲しげだったのを。
「えっ!? 荊さん同じクラスだったの!?」
「そうだよー。覚えられてなかった?」
「ごめんね荊さん……」
今はモール内の珈琲ショップで軽い昼食を摂っている。私は紅茶とホットドックを、アカネちゃんはカフェオレとサンドウィッチを、荊さんはエスプレッソを。
「別に平気だよ、津名さんが人の名前覚えるの苦手ってのは有名だし」
「うぅ、申し訳ありません……」
うーん、荊さんの様なインパクトがある人なら絶対忘れないんだけどな。例えば
「別に良いってば。それよりさ、この後どうするの?」
「あー……うち、なんも決めてませんでした。どうしましょうハクさん」
「ボクに振るなよ……うーん、映画はそそられるラインナップじゃないしなぁ」
そういえばアカネちゃんからは何も予定を聴いていなかった。多分勢いだったのだろう。
「津名さんは何かある?」
「私も特に思いつかないなぁ……あ、そうだ」
私は良いことを思いつく。荊さん次第ではあるのだが。
「荊さんって、お化粧に興味ないかな?」
「あー……あんまり?」
「なら化粧品見て回ろうよ。アカネちゃん諸共バッチリ可愛くしてあげる!」
「えっ!? うちもですか!?」
驚いたアカネちゃんと荊さんが視線を合わせる。
「あー……急に言われても困るかな? 化粧品って高いし」
「そう……です……ね。うちもあんまり高いのは」
正直な所私も厳しい。バイトしてるとはいえ、学生には限度がある。
「それならボクが出すから気にしなくていいよ」
「え、いやいやそn「大丈夫、金ならある」」
荊さんは怪しく微笑みかけてくる。なんだか怖い。
「そんなに変な意味じゃないよ。バイト代とは別で、お母さんが身だしなみ様にってくれたお金だから」
あぁ、荊さんってお金持ちなんだ……。羨ましい気がしないでもない。
「折角だし、ここもボクが
あ、可愛い。今度はニコリとする荊さんがとても刺さる。
「ならハクさん! うちおかわり良いですか!?」
「しゃーないなぁアカネは。津名さんも何か頼む?」
「え~、ならそうだな~」
荊さんの行為に甘えることにした。決して羨ましさからでは無い。
【後書き】
先週は多忙で更新できませんでした。
睡眠不足の吸血姫 Ω(おめが) @omegarex96
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