フォルクスワーゲン太郎

教祖

フォルクスワーゲン太郎

むかし、むかし、ある所におじいさんとおばあさんが住んでいました。

おじいさんは山へしば刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。

おばあさんが川で洗濯をしていると大きなフォルクスワーゲンがどんぶらこ、どんぶらこと流れてきました。

「これはおどろいた」

おばあさんは大急ぎでフォルクスワーゲンを拾いあげて家に持って帰りました。そしてフォルクスワーゲンの中を見て驚きました。なんということでしょう。中に赤ん坊が入っていたのです。

「なんともかわいそうなことをしましたねえ。でも、これもなにかの縁でございましょう。

 おじいさん、なんという名前を付けましょうか?」

「そうさのう、フォルクスワーゲンから生まれたから、フォルクスワーゲン太郎というのはどうじゃろうか。」

「まあ、すばらしい名前をありがとうございます。では今日からこの子はフォルクスワーゲン太郎です。よろしくね、フォルクスワーゲン太郎ちゃん」

こうやってフォルクスワーゲン太郎はおじいさんとおばあさんの新しい子供としてすくすく育ちました。しかし、それから1ヶ月もたたないうちに大変なことがおきてしまったのです。それはある日のことでした。

フォルクスワーゲン太郎の四肢が、タイヤになっていたのです。

それだけではありません。頭まで車のボンネットになっています。

「なんということだ!」

二人はたいへん驚きましたがすぐに気をとりなおして、その日以来ずっと一緒に暮らしています。

それから何年かたったある日のこと、突然フォルクスワーゲン太郎がいいだしました。

「僕はもう大人になったんだ!だから鬼退治に行ってきます!」

「まぁ、フォルクスワーゲン太郎や。じゃあ、このガソリンだんごを持っておいき。」


こうして、フォルクスワーゲン太郎は鬼ヶ島に乗りこみました。

しかし、鬼ヶ島についたとき、あたりには誰もいませんでした。

かわりにそこにはボロボロの服をまとった老人がいました。老人はいいました。

「おお……なんというかわいそうな若者よ……。わしらは今ちょうど引越しをしてここにきたのじゃが、鬼にやられてこのざまじゃ……」

「まあ!なんということでしょう。

 そのままやられっぱなしではいやでしょう。

 このガソリンだんごを一つあげますから、一緒に鬼退治に行きませんか?」

すると老人はいいました。

「ガソリンだんごとは何ですか?私にも食べさせて下さい。」

フォルクスワーゲン太郎は困り果ててしまいました。なんといっても彼はタイヤ人間なのです。とてもガソリンを食べさせるなんて無理です。でも仕方ないのでフォルクスワーゲン太郎はそのガソリンだんごを分けてやりました。

「なんとおいしいだんごでしょう。わしも鬼退治についていきますじゃ。」

そうして、ボロボロの服をまとった老人が仲間になりました。

三人はそれぞれ鬼ヶ城へと乗り込みました。

「鬼たちめ、出てこい!僕が相手になるぞ!」

フォルクスワーゲン太郎がそういうと鬼たちがたくさんあらわれました。

「なんだよあの車!気持ち悪い!」

「おいお前ら、あいつらをやっつけろ!」

そういうなり、鬼は三人を取り囲みました。

「バカめ、生き物が車に勝てるとでも?」

フォルクスワーゲン太郎はそういうと、えんじんをばるばるばるとふかしこみました。

ぶーぅうう!!どどどっ!!! たちまち炎に包まれる鬼たち!

「ぐわあああっ!!」

あまりの熱さに、彼らはみんな逃げだしてしまいました。そして三人とも助かりました。

こうして鬼たちをこてんぱんにして、3人は無事村に帰ることができました。

老人、フォルクスワーゲン太郎、おじいさんは村の人に大歓迎されました。

3人で住むことになった家の前庭では、今もまだ炎がちろちろ燃えていました。

3人が家に入るため玄関に向かうとおじいさんが言いました。

「おとうさんおかえりなさい」

おわり

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フォルクスワーゲン太郎 教祖 @yamada-gulu

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