第30話 兵器 3
ガチガチガチガチ…
自然と歯と歯がぶつかり合い無限に音が鳴り響く。
1歩歩く毎に膝下まで足が沈む。1歩…また1歩と歩くが、その度に体力が奪われていく。
北の大陸に降り立った一向だが、そこは雪に埋もれ、右も左も見えないくらいに吹雪が吹き荒れている。
ずっと気になってはいたのだが、北の大陸と言うのに、このパーティーはみんな厚着というのをしていなかった。
それもそのはずだ。ランドは、呪いの力で暑さや寒さを感じない体をしている。
ただの人間のライは、馬鹿なのか布1枚で作った様な東の国の服を着て、雪の上を大股で歩いているが、絶対寒いはずなのに我慢している様子であった。
愛花は大きくため息をついた。
またしても、この狼に誘拐されたとは言え、船に乗る前にプリムで厚手の服を購入するべきであった事を今更後悔をした。
「アイカ?どうしたんだ?」
不思議そうにランドが顔を覗き込んで来た。
この男の
「ラン君には一生分からないと思うけど、ものすごく寒いのよ!」
その言葉をひねり出すのに精一杯だった。また自然と歯と歯がぶつかり合い、止めようにも止まらずに、ガチガチと音が鳴り響く。
ランドは歩みを止め、自分の手のひらを見つめ何かボソボソと話し始めた。
愛花は足を止めその様子を見ていると、ポッと音を立てランドの手の中に小さな青い火の玉が現れた。
「ほら、これ…」
と、火の玉を受け取りそうになり手を止める。
例え、青だろうが黄色だろうが火の玉は火の玉だ。そんなもの素手で受け取ってしまえば火傷確定演出だ。
「これ、持ってれば寒さを防げるはずだからさ」
ランドは愛花の腕を掴むと、手の中に青い火の玉を置いた。
その火の玉は、不思議と熱くない…。むしろ、その熱が全身くまなく行き渡り、身体がぽかぽかと温かくなってきた。
「"
相変わらず、こんな至近距離で話しているのに精霊の名前だけは上手く聞き取ることが出来ない。
手練れの魔法使いですらも、普通の魔法とは違う精霊魔法を使うのですら長い詠唱とかなりの集中力と魔力を使うというのに、ランドはそれすらもものともせず、無詠唱でパッと使ってしまうのはズルく感じてしまう。
とここで、愛花の中でふと違和感が出てきたが、先を歩いていたハルの声で我に返り急ぎ足で追いかけた。
しばらく歩き続け、ライが凍死しかけた頃に、また海が見えてきた。
多分だが、大陸の端っこの方だったのか、そこまで歩かなくても大陸の横断が出来た。
途中に遠くの方に山や森が見えたが、ここに住む生物が襲ってくる気配は無かった。
ロウやランドが周りを警戒しながら歩いていたのだろう。その範囲に本能的に入ってこなかったのだ。
「よし…じゃあ、後はコレを海に投げ込むんだな」
ランドがまた小さな黒い箱を取り出した。
結局の所、この箱がなんなのかは分からなかった。ただ、このなんなのかは分からない箱を棄てる為だけに、長く続く海を渡らせられ、学校もサボらせられる。自分には全く利益の無いこの旅にイラつきを覚えていた愛花は、ランドからその箱を奪い取った。
「これ、私が投げていいでしょ?」
手の中で少し重みのあるその箱を、海目掛けて投げる。
海に着く頃には吹雪は弱まり、雲の間から太陽が少し顔を出し、投げた黒い箱に光が反射し、愛花は目をつぶった。
――――――
時は
「我々は、また新たなる兵器を造る事にしたのだ!」
大臣のその一言に、軍事関係者が立ち上がる。
「貴様ッ!それはどういう事だ!」
大臣はニタニタと気持ち悪い顔しながら周りを睨む。
「我々がせっかく感情の持たない
軍事関係者は机を叩く。ガンッ!という音とともに、机の上の物がグラグラと揺れた。
「
大臣の大きな笑い声が、部屋全体にこだまする。
軍の偉い人が命令をし、その者が急いで外に駆け出そうとしたのだが、大臣が
「今さらもう遅いわい。この会議が始まる頃には、奴は北の大陸の寒い海の中で凍っておるわい」
また大臣の笑い声が部屋全体にこだまする。
―――――――
カチッ…
小さな音がした。
それが何の音か分からない。
輝く箱から漏れた音だと言う事に気づいたのは少ししてからだった。
ロウとハルは、箱から飛び出してきた物に一瞬にして気づきお互いに手を伸ばした。
しかし、それは2
ランドも手を伸ばしたが、それよりも早く視界が真っ赤に染まった。
私立武装学園 ラムロト @arumorot
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