エルフの森編

第6話 過去

『おーい!ユウジ!!来て来て!』



『ちょっと待てって!!○○○!!』





『……ユウジ、これあげる!!』



『…ん?赤いバラ?』


『そ!この花の花言葉分かる?』



『さあ?』



『それはね…【貴方を愛しています】って言う意味なんだよ!』



『…!』




『ユウジはどうなの?私の事愛してくれるよねねねねねねねねねねねねねねねねねねねねねねねねねね』





突如、目の前の○○○の顔がぐちゃぐちゃになる。






「ハッ……!!!……夢か……。」



「……ん、ユウジぃ?どしたの?」



「いや…なんでもない。」


「あっそ……おやすみぃ……。」




勢いで王都を出た俺たちは何も食料を買っていなかったので、近くにある森林に食料を野宿覚悟で調達しに来ていた。





「……クソっ、またかよ…」




自分が行った「過去」の出来事が最近、頭から離れない。

…これも罰なのだろうか、それとも呪い…なのだろうか。






そんな物思いにふけっている自分の耳元にふと、声が入る。





「どうしました?旅人さん?」





「うぉっ!?」


「きゃあっ!?」





「ってなんだ…エルフかよ…」


「『なんだ』ってどういう事ですか!?これでも一応エルフの中では偉いんですよ!」




「そ…そうか…ところで何故エルフがここに?」



「なぜも何もここはエルフの領地ですよ!

…せっかく旅人さんを出口へと案内して上げようと思ったのに〜」




不貞腐れるようにそっぽを向くエルフ、基本的に容姿が優れている種族なだけあって

…正直その動作すらもかわいい。




「それはすまなかった!正直に言うとここの森には疎くて、すぐにでも協力して欲しかった。」




そう言うと、彼女はエルフ特有の細長い耳をぴくっと動かし、「その言葉待ってたわ!」と言わんばかりにこちらに振り向いた。


……もちろんこの言葉は嘘だ。

この森で以前『アイツ』と出会った、今回はここ「エルフの森」である事がやりたかったからだ。





「ホント!?〜ったくしょうがない人ですね!

人間は私たちの『同胞』ですもんね!

…でも待って、今日はもう遅いし私達の住処で過ごしていいですよ!」



「本当か!?ありがとう!助かった!!」






正直ここでエルフに会えたのは幸運だった。

だが、これから俺がすることは決して「正しいこと」では無い。

…本心はこのエルフを騙しているのが心苦しい。




「ゆうじぃ〜おはよ〜って何よこの女ァ!?」



「おう、シューナ…このエルフがどうやら寝床を1晩貸してくれるらしい。」






「エルフが!?ここに!?……ってホントだ!!え、うそ、信じられない!ホントにエルフ!?絵本の中でしか見たことないのに!あのエルフさん!私エルフ大好きなんです!!特に伝説のハイエルフ『ユーカレア』様が!!で…あの……」



「え…ええ…そうなのね…ありがとう…」







シューナのエルフオタクぶりに若干ドン引きなエルフ

……「ユーカレア」か彼女の名は王国内でも有名らしい







その瞬間ユウジの頭にノイズが走る。





……

…………

………………




『貴方が異世界から召喚された勇者なのね?ユウジ。…初めまして私の名前はユーカレア、風と回復魔法…あと弓は少しだけ使えるわ。』



……



『……恥ずかしいけど、ユウジの事好き…』




『…本当?なら、同じ気持ちだね。』




…………





『なんで…なんでっ!ギルバートは!いないのっ!?!?』





『あ…ああっ…大賢者さまっ!!』






『ユウジ……ごめんね護ってあげれなくて………ごめんね【約束】叶えられそうにないや。』







━━━━━━━━━━━━━━━




ノイズが終わる。




…そうこれは誰の記憶でも無い、「俺自身」の過去の記憶だ。


俺は過去に俺のせいで仲間を全員死なせてしまった。


今日来た本当の理由はその謝罪をする為だ。






「どうしたのユウジ?今日調子悪いわよ?」



「あ、ああ…すまん…ちょっとな」


「ったく調子悪いなら早く言いなさいよね!

一応…私の師匠なんだから!」



「…分かった。」



「話は終わりましたか?…それではエルフの森へ魔法で転移しますよ?」




「ああ…」「ええ。」







二人が返事をするとエルフは詠唱を始める。

その瞬間、3人の足元に魔法陣が出現し3人の体が光の粒子になって消えた。







〜エルフの森〜



「ここがエルフの森ね〜!初めて来たけど沢山のエルフと独特な木造建築物があってすごいわね!」




「でしょでしょ!…まだすごい人やすごい物があるんですよ!!」



転移魔法により、光の粒子が「エルフの森」で身体が再構築されたユウジ達は、エルフの言う通りに案内される。




「…とりあえず、この森で1番偉いハイエルフ『グレメリア』様の所に行きますか!」



「ええ!そうしましょう!ワタシも色んなエルフ見てみたいし!!

……ほらユウジ、何ぼさっとしてんのよ、置いてくわよ?」



「あ、ああっ…すまない。」






シューナに引っ張られるまま連れていかれる。

気づくと3人は『グレメリア』の館玄関前まで到着していた。

エルフがドアをノックし、グレメリアを呼びかける。



「グレメリア様〜!いらっしゃいますかー!?」



「はいはい、私になんの用?」





そうすると、180cmくらいだろうか、女体とは思えない他のエルフとは頭1つ抜けている身体、整った妖艶な顔に、エルフでは珍しい豊満な胸と尻、それでいて引き締まったウエスト、

まさに完璧と言った容姿に添えられた少しはだけさせた服が更に欲をそそられるハイエルフ、

『グレメリア』がドアからでてくる。





「グレメリア様!こちらの旅人の方が森で迷いまして…時間も遅いですし、夜が開けるまで宿を貸してもよろしいでしょうか?」




「ああ…ありがとう、森の見回りお疲れ様。

もう今日は休んでていいわよ…」




「はい!グレメリア様!ありがとうございます!それでは失礼しました!!…それではユウジ様!シューナ様!また!」





エルフはそう言うと、颯爽と飛び立って言った。少しの沈黙が流れる中、グレメリアは気だるそうに声を出す






「……んで、またあんたぁ?剣王……いや、『死神ユウジ』。その子はダレ?また仲間でも…」


「いや、墓参りに来た。」



「あーはいはい、『いつもの』…いや2ヶ月ぶりだっけ?」


「…ちょうど1年ぶりだな」



「そーかい、エルフは人間と比べて寿命が長いからね…時間なんて気にしてないや。

…転移魔法陣作っとくから、準備できたら早く言っといて…」


「承知した。」





ユウジとグレメリアが何の滞りも無く話していると、シューナが割り込むように口を開ける。




「ちょ…ちょっとまってよ!!ユウジが死神ってどういう事!?ユウジの仲間は故郷に帰ったんじゃないの?」




「ユウジ…まだ話してなかったのか?」


「いずれ話す予定だった。」




「……ふぅ〜ん、まあいいや。お嬢ちゃん知りたいかい?コイツの『過去』を」





……私は正直師匠である「ユウジ」について何も知らない、これから共に旅を続けていくであろうユウジの事は知っておきたい



だから……




「…はい、聞かせてください。彼の過去を」





続く




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異世界で最強剣士だった俺はスローライフを送ろうとしたがよくわからん女が絡んできてめんどくさい 黒米 @ao1666

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