第5話 王都決戦編 後編

「【影の軍勢】って噂の…」

「おい、やべえんじゃねえのか?」

「お、おれ逃げようかな…」




影の軍勢の襲来を受けざわめくギルドハウスの冒険者達、だが動揺しないものもいた。




「君たち!【影の軍勢】だろうがなんだろうが関係ない!!このままだと僕達…いや!民衆が危ないからね!僕達のギルドは戦うよ!!」



「さすがAランク冒険者『スパンダム』!そしてそのギルド『キングダムナイツ』!!!」

「やっぱ違うなぁ…」

「ウチのギルドハウスのエースにはかなわねぇぜ!!」



どうやらスランダムと言うらしい冒険者は、影の軍勢に怯える冒険者達を鼓舞していた。

とっさにユウジ達に視線を合わせ声をかける。




「そこの君たちもそう思わないかい!?」



「お、おう…」

「そうだよネっ!!僕も嬉しいよ…新入りの冒険者が心を合わせ!!戦ってくれるのが!!」



「あのさ…」

「いや!!気にしなくていいよ!の君たちは僕達ギルド『キングダムナイツ』が守ってあげるからね!!」




スパンダムの暑苦しいセリフに気にせず、隣にいたシューナはユウジにコソッと声をかける。






「あいつ何か腹立つわね…」


「ま、まあ良い奴そうだし…いいんじゃないか?」




そうすると、王都兵がおもむろに扉を開け、ギルドハウス全員向けて声をかける。




「ギルド冒険者達に告ぐ!!現在!影の軍勢がこの王都に攻めてきている!

そこでだ、君たちにこの国の防衛を協力してほしい!!

もちろん!タダでとは言わない、活躍した順に王都直々に礼金を満足するほど送ろう!!」




「まじかよ…」

「ついに俺たちにもチャンスが!」

「やべえ…俺も参加しようかな…」



王都兵の言葉により更にざわめく冒険者達、それを気にせず、スパンダムは全員に声をかける。





「君たち!!せっかくの依頼!!自分達のため…いや、この国の為にも戦おうじゃないか!!!」



「「「「「「「おおおおおおおおお!!!!!」」」」」」」







「ユウジ…参加する?」


「金は欲しいし…一応参加するか。」



王都のギルドハウスはかつてないほど盛り上がっていた。










〜王都・宿屋 夜〜



ギルドハウスで起こった事から数時間後、ユウジとシューナは宿屋で休息をとることになった。




「そんで、作戦とか考えてんの?」


「いや、特には…」


「ちょっ…それどうすんの?アイツらめちゃくちゃ強かったじゃない!!」


「まあ、なんとかなるんじゃないか?お前も少しずつだけど強くなってきてるし」



「そ…そう?アンタがいいんならいいけど…」



「何照れてんだよ…」


「照れてないわよ!!」



「「……」」




夜のせいだろうか、普段は騒がしい二人だが、何故か今だけは沈黙が続いていた。

それを無理やり破るようにユウジが口を開く。





「シューナ、飲み物要るか?」



「え、ええ…ありが…とう。」



ユウジがベットから立ち上がろうとした瞬間、足を滑らせてシューナをクッションにするように押し倒していた。




「って何胸触ってんのよ!!」



「すまん!!悪気は…」






「……でも、ユウジならいいかも…」




「……!」




気づけばユウジはシューナの胸を揉んでいた、夜のせいだろうか、何故か彼女がいつもより淫靡に見えた。




「ユウジ…脱がして…」





シューナはユウジに身を委ねるように、上着…更には下着を脱がせ、上半身だけだが彼女の大きな胸と淡いピンクな乳首がユウジの前で露出していた。




「…優しくしてよね…」






そのままそっと胸を揉むユウジだが━━━━━━━━━━━━突如彼の頭にノイズが走る。





「うっ……!!」


「どうしたの?ユウジ……ってホントにどうしたの?ユウジ!!ユウジ!!起きて!!!」





突然彼の視界が暗闇に包み込まれた。











〜王都・宿屋 朝〜



「んっ…俺は何で……」




気づけばもう、朝になっていた。

昨晩はなぜ倒れていたのだろうか。

いや…考える必要も無い、過去の【あの記憶トラウマ】が俺の邪魔をしているんだろう。


横を見ると、自分を看てくれていたのだろうか椅子に座りながら、自分が寝ていたベットに体を寄せて彼女はぐっすり眠っていた。


自分が体を動かしたのが気づかれたのだろうか、彼女はゆっくりと体を起こし、顔を見た瞬間、眠そうな顔から一気に普段の顔に戻っていた。




「ってユウジ!!大丈夫なの!?心配したのよ!」



「あ、ああ…今んとこは問題ない。」


「アンタ…何かあったの?」




「…ちょっと昔の記憶がな。」


「…まあとにかく、アンタが無事ならいいわ!」





突如、シューナの顔がの顔に変わる。



『とにかく…ユウジが無事で良かった…』


『ねえ…私達最高の冒険者だよね?』


『ユウジ、キて…』




『ユウジ…苦しい…助けて…』



『ユウジ!!!!』







「やめろおっ!!!!!!!」







「えっ…アンタ…どうしたのよ急に…」



気づけばアイツの顔はシューナの顔に戻っていた。



「いや…何でもない。」


「アンタ今日どうしたの?ちょっとおかしいわよ?」


「本当になんでもないんだ、気にすんな」



「そ!それならいいわ!将来の結婚相手に何かあったら困るしね!」



「……そうだな。」












〜王都壁前・決戦の地〜





「君たち!!!戦う覚悟は出来てるかい!!」



「「「「「「「おおおおおおお!!!!!!」」」」」」」





「お前らぁ!!民のため、王都のため!死力を尽くしてこの国を守れえ!!!!!」


「「「「「「「おおおおおおおおおおお!!!」」」」」」」




王都決戦当日、ギルド陣営、王都兵陣営両方が士気も十分に上がってきた頃、ユウジ達も装備品の手入れをしていた。




「シューナ」


「どうしたのよ、いきなり。」



「絶対死ぬなよ」



「もちろん!アタシはアンタを超えるまで死ねないから!!」



「…ならいい。」





数分後、装備品の手入れを終えたユウジ達。

そうすると慌てて監視塔の男が声を荒らげる。




「【影の軍勢】が攻めてきたぞおおお!!!!」




「遂に来やがったか…」

「へへ!報酬はたんまり頂くぜぇ〜」

「スパンダムと一緒に戦えば…俺たちだって」




更に湧き上がる冒険者と王都兵達。

数分後、前方に敵が見え始めたため、スパンダムと王都兵隊長達が声を大きくあげる。





「全軍!!前へと進めぇ!!!!」


「「「「「おおおおおおおおーー!!!!!」」」」」





「君たち!!僕達も行くよ!!!!」


「「「「「おおおおおおおーーー!!!!!!」」」」」






今、影の軍勢の王都連合軍が衝突する。

数 熟練度共にほぼ互角、戦いは拮抗していた。



を除いては…




「シューナ、お前に合わせるぞ。」



「ええ!任せて!!

…風よ!私に力を貸して!【風神斬・龍】!!」




シューナの風の魔力を纏わせた斬撃によって影の軍勢の大半が空中へと舞う。それをユウジが一瞬の内に屠る。

黒く塗りつぶされた軍勢は数秒の内に色は変わっていた。

もちろん、大衆はそれを見逃さなかった。




「な…なんだあいつら…」

「たしか、まだ新入りのDランク冒険者らしいぞ!」

「なんかインチキしてんじゃねえか…?」




もちろん、王都連合軍側だけでなく、影の軍勢側も見逃すものはいなかった。






〜王都決戦地・影の軍勢 後方〜



「空中であの身のこなし…まさか伝説の……!」


「シルベール様!!王都のやつらがもうそこまで!攻めてきてます!!」





「なにィ!?数は?」


「たった二人です!!」



「……まさか!?」





そう、剣王とその弟子がもうそこまで来ていた。





「おいシューナ!俺に力を貸せ!!」



「ええ!風よ…汝らの力をあの者に!!

【風神の舞・疾風】!!」




「サンキュ!!」





風神の舞・疾風によってユウジの俊敏性が普段と段違いの速さになり1秒も経たぬうちに、200m先のシルベールの目の前まで来ていた。




「よっ、影の軍勢の幹部さん」


「…やはり、そなたは【剣王ユウジ】だな。」



「そんなことより、さっさと決着つけようぜ。」




「無論だ!!塵も残さぬぞ!!」





そういうとシルベールは自分の剣に手をかざし、力を込め始める。

もちろんそれはユウジも同じだった。





「影の王よ、私に力を恵みたまえ!!!

【暗黒の剣・剛】!!!」




「……ちょっと力貸せ、レーヴァテイン。」







「「うおおおおおおおおおおお!!!!!!」」







決して勝負は長くは無かった。

お互いが力を込めたすれ違いざまの一閃、

勝者は━━━━━━━━━━━━━━━





「お見事……剣王よ……」






ユウジの方だった。


先程まで後ろで追いかけていたシューナが駆け寄る。






「ちょっとユウジ!!先に突っ走って…大丈夫なの?

あのシルベールとか言うやつの魔力…半端じゃなかったわ。」




「ああ…なんとか…な。」




「ユウジ何ふらついてんのよ!!

…って出血してるじゃない!!早く止血しないと…ちょっと待っててね。


……風よ汝の癒しの力…我に与えたまえ…。」





シューナは魔力を使って、ユウジの治療を行おうとする。━━━━━━━━━━━━━━━が、







「おい!!インチキ野郎ども!!!」

「そーだそーだ!!」

「大体、こんな決戦ヤラセだっだんじゃないのか!?」




「まて君たち!!彼らにも…」




「うるせえスパンダム!!大体お前もグルだったんじゃねえのか!?」




この一連の流れを見たギルド陣営は、不満の声が多発した。

それがエスカレートし、ギルド陣営の暴徒化を抑止しようとする王都兵すらものともせず、やがてユウジ達を襲おうとする様子もあった。




「アイツらさえ、殺れれば…実力がホンモノかわかるなあ…?」

「そ、そーだ!!Dランク風情が…」






「…くそっ!あいつら……ガハっ!!」


「ちょっと無理しないでユウジ!!血ぃ吐いてるじゃない!」






ユウジ達の焦りをよそにギルド陣営の数人が、王都兵の阻止を振り切って、ユウジ達の方へ襲いかかって来た。






「Dランク冒険者ぁ!!キサマの首頂くぜぇ!!」

「しねぇえええええ!!」







「待て!」





だが、ある一声が彼らの動きを止めた。





「お、お前は!!騎士団長アルベルト!!!」

「なぜこいつを…」





ザワつく暴徒化した一部のギルド陣営だけではなく、アルベルトは戦場にいる全ての民衆へと声をあげる。





「ギルドの方々、今回の決戦、御協力感謝する!

…そしてこの男、【剣王ユウジ】の功績に関しては我々が決定する!!

それでも彼を斬るつもりなら……命はないと思え!!」






「まさか…あいつがあの伝説の【剣王ユウジ】だったなんて…」

「しかも王都内最強騎士団長アルベルトもいるのかよ…やべえな…」







衝撃の発表に更にザワつく民衆たち、

それをよそにアルベルトは、ユウジ達に声をかける。




「シューナ姫!ご無事でしたか!?」



「私は無事よ!それよりユウジを!!」





「分かってます、…救護兵この男を城内へ!!」




ユウジを抱え、担架に乗せるアルベルト。

薄れる意識の中ユウジは少しだけ言葉を紡ぐ。




「今回は……マジで助かった…」



「まったく、君は昔からいつも無茶をする…」



「……悪ぃな」












〜王都・アルストロメリア城 寝室〜




「んっ…ここは?」



「…!ユウジ!!!」



「んおっシューナぁ!!いきなり抱きつくなよ…!」





「だって…だって…3日を目覚めなかったんだもん…」



「俺…そんなに寝てたのか…。」




唖然とするユウジと抱きつきっぱなしのシューナをよそに、アルベルトが部屋へと入る。





「失礼するよ…おっと、邪魔だったかな?」




「違う!こいつがいきなり…」

「なによ!大体アンタが無茶するから…」





「はいはい、二人とも相変わらず仲良いね。

…後今回の影の軍勢の件なんだけど」



「あぁ…そうだったな、確か…シルベールだったか?」




「ああ…調べた結果なんだけど、あのシルベールという男影の軍勢のトップ3の1人だったみたいだ。」



「へえ…通りで、久しぶりに強いなと思ったら…」



「それは君が無茶な戦い方するからだよ…

大体なんであんな事…」

「そーよそーよ!」




「いや…強いヤツとあったら同じ条件でおもしろい勝負したくないか?」



「…ったく、君らしいというか。

とにかく、今回の影の軍勢の襲撃の件僕の方でも詳しく調べることにするよ。」



「おう、よろしく。」










〜王都・ギルドハウス〜



報酬を受け取りにギルドハウスに着いたユウジ達、扉を開けると驚きの光景がユウジ達の目の前に現れた。




「来たぞ!剣王ユウジだ!!」


「「「「「「うおおおおおお!!!きたああああ!!」」」」」」





「祝いたまえ!!君たちあの剣王ユウジのまた新たな旅の門出を!!!」



「「「「「「「うおおおおおおお!!!」」」」」」」





「…なあ、スパンダム…だっけ?これはどうゆうことだ?」



「これは剣王ユウジ!!君に出会えて光栄だっ!!いや、君たちの功績を祝いにね!僕達で個人的にパーティをしていたのさ!!」



「そ、そうか…」



「あとそこの風の少女!!」


「あ、アタシィ!?」





「そうさ!!君も剣王程では無いが素晴らしい実力のようだね!!!」



「え、ええ…ありがとう…。」




「ゆ、ユウジ…なんか…凄いことになってるわね…」

「…そうみたいだな、とりあえず報酬貰いに行くぞ。」




ユウジ達は受付の女性の方へと向かう、すると女性は笑顔で今回の件の案内をし始めた。




「こちらが賞金となります。」



「「!?」」




二人はその金額に驚いた。

少ないのでは無い、むしろ多すぎるぐらいなのだ。




「ユウジ!…これって…夢?」


「いや…夢じゃねえみてえだ。」




驚きが止まらない2人をよそに受付の女性は説明を続ける。





「御二方は今回の防衛戦の結果を鑑みて、DランクからBランクへと昇格が決まりました!」





「…ユウジ…アタシ…こんなの初めてで、何が起こってるか…」



「大丈夫、俺も久しぶり過ぎてかなり驚いてるわ。」





驚きの連続が続く彼らに冒険者達が近づく。




「なあなあお二人さん…俺たち友達だよな?」

「なあ!俺だよ俺!こないだお酒奢った!!」






「ねえユウジ…これって…」

「ああ…」




「逃げるぞ!!」「逃げるわよ!!」






「あっちょっと待て!!!」

「俺にもお酒奢ってくれよぉ〜!」

「剣王〜!!」




「君たち!!!」





「どうした?スパンダム」




「そう、お金に執着しなくとも『剣王』が見れただけで十分じゃないか!!

今日の酒は僕が全て奢ろう!!!」




「「「「「「「「「うおーーーー!!!!!」」」」」」」」」




(君たちの活躍を楽しみにしてるよ…『剣王とその弟子』くん…)














〜王都 近郊〜




「ぶえっくしょん!!!」


「どうしたシューナ、そんな汚ねえクシャミして」




「うるさいわね…きっと誰かがウワサしてるのよ!『最強の女剣士』が居たって!!」



「あっそ。」



「なんでそんな反応薄いのよ!!

…んで勢いで王都出たけど次どこ行くのよ?」




「…決めてないわ。」



「え?」





王都決戦編 終了

まだまだ彼らの旅は続く!!

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