第3話 森の中で
鬱蒼とした森の中を私達3人は進んでいた。
先日上から賜った天啓に従って森の奥地へと歩を勧めていった。
はるかなる昔ここはなにもない荒野だったという。
今でこそ強大な魔物が跋扈し、草木が生い茂る前人未到のこの大地は、龍神様が一夜にして作り上げたという。
そのため、この森の奥深くには龍神様が暮らす屋敷があり、そこにたどり着いたものは、多大なる力を与えられ英雄になれるという逸話がある。
しかし、おとぎ話であろうとも、この森を踏破したという話は聞いたことがない。
それに、この森のどこにあるかもわからない屋敷にたどり着くという時点で、もう人間を逸脱した力を持っていると言える。
そんなわけで、人間の物差しでは測れないほど危険な場所なわけだが、森に入ってすぐの場所だったら、強力には違いないが、ある程度の実力があれば撃退できる強さの魔物と、ここでしか取れない豊富な資源によって、上級冒険者にとっては、絶好の稼ぎ場所である。
さて、そんな土地を私達は進んでいるわけだが、妙な感覚が捨てきれない。なにかに監視されているような、後をつけられているようなそんな感覚だ。
だが、あくまで感覚的なものでしかなく、確証があったりするやけではないのだが。
そんなふうに歩いていると、隣りにいる黒髪美女のマイに話しかけられた。
「やはりへんですね…アリス様、索敵魔法に異常はありませんか?」
そう彼女に聞かれた私は先程感じていた感覚について話そうかと思ったが、今は周りに変な心配をかけるべきでわないと思い、聞かれたことだけに淡々と答える。
「いいえ。この森の中に入ってからここまで異状はないわ。あなたの索敵にもなんの反応もないでしょう、シュミット。」
「はい。魔物どころか虫の一匹すらいません。」
シュミットと呼ばれた彼は淡々とそう答えていった。
彼は赤髪で、服、でわなく全身鎧を身に着けておりその鎧の胸には、翼をひろげている青い龍の絵が刻まれている。
背中にたなびく真紅のマントにも青い龍が描かれていた。
腰には一振りの剣が吊り下がっており、一目でわかるほど上等な品だった。
顔は、イケメンと呼ぶにふさわしく、とても整った顔をしていた。 そんな街を歩けば振り向かぬ女は居ないのではないかという彼は、教国の最強の騎士団と言われている聖竜騎士団の序列第三位というとてつもない猛者である。
そんな彼が、かしこまりながら私に質問をしてきた。
「あの、アリス様、龍神様が住んでいると言われている屋敷は本当にここにあるんでしょうか?」
「いくらなんでも失礼ですよ、シュミット我が国の聖女であるアリス様にそのようなことを申してわなりません。」
シュミットに対して少し威圧した態度の彼女は、マイという名前であり黒目黒髪の女性である。
来ている鎧はシュミットと同じ物だが、たなびくマントと腰にさげた剣だけは、彼のものと異なっていた。
マントは吸い込まれるような蒼色の下地に白の刺繍で龍が描かれていた。
そして腰にさげた剣は、シュミットのものとは比べ物にならないほどの存在感を放っていた。
それもそのはず、この剣は、教国の騎士団長にしか持たされない神器なのである。
この剣は、「グラディオス」と呼ばれ、その昔天神がも持っていたとされており、へと振りでどんな魔物も砕け散ったと言われている。
そんな会話を続けながら、森を進んでいるとシュミットがいきなり足を止めて周りを見回し始めた。
「どうしたのですか、シュミット?」
アリスがそう言い、シュミットの顔を覗き込むと彼は大量の汗を流していた。
そうしてぢならぬ異変を感じたアリスは、シュミットが見つめる先を眺めていると、目の前に漆黒の金棒を持った巨大な鬼が突然現れた。
「なっ!」
「何なの!尋常じゃないプレッシャーは!」
「まずいっすよ。なんでこんなに強大な気配に俺は気づかなかったんだ!」
三者三様の反応を見せる中、アリスはよく見ると、このモンスターが自分が読んだ文献の中に書いてあったことを思い出した。
「漆黒の金棒に、このプレッシャーは…間違いありませんこのオーガはただのオーガじゃありません。竜に匹敵する危険度を持つオーガキングです!」
その声を聞いた二人は唖然とした。
なぜならオーガキングは、単独で街を蹂躙できる化け物なのだ。
ここにいる三人がいくら教国最強の一角と言っても、このモンスターが相手だったら、勝率は高くて3割だろう。
そう思っていると、マイとシュミットが同時に剣を抜いた。
「私とシュミットが引き付けますから、援護をお願いします!」
「わかりました!」
そうして、一瞬たりとも気を抜けない戦いが始まったのだった。
竜の心臓 @pochi7974
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。竜の心臓の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます