第6話 目覚め

アデルは殺人未遂で捕らえられた。


実の両親をも殺して、

あたしと魔王を殺そうとするなんてどうかしている。


あたしはこの現状を変えようと行動を起こした。


人間の国王にアデルのしたことを打ち明けた。

そして、魔族は悪ではないことを説明したのだ。


だから戦争はやめてほしいと訴えた。


国王は

「アデルが何の罪もない魔王を殺そうとしたとは……

わたしも勝手に魔王を恐れていた。すまなかった」


と謝ってくれた。


そうして、戦争は終わりを告げたのだった。




あたしはロイスの寝室を覗く。


あれから3日、治療師を呼んで治療を施したものの、ロイスはまだ目覚めなかった。


あたしはベッドに腰掛け、ロイスの寝顔を見つめる。


「ロイ……早く目覚めて」


あたしは五歳のとき、ロイという少年に会ったことがある。


つい最近まで忘れていたのに、

ロイスの赤い瞳を見て、思い出した。


ロイ、あの日の約束果たせたね。


でも、君が目覚めないと意味がないよ。


今頃、お父さんとお母さんはどうしているだろうか。

ちょっと寂しくなる。


立ちあがろうとすると手首を誰かに掴まれた。


振り返るとロイがあたしの手首を掴んでいた。


「ロイ!!目覚めたんだね!」

あたしはロイの両手を握りしめる。


「良かった、良かったよぉ」

ロイの胸に顔を押し付けて泣く。


「アオイ……思い出したのか。」


ロイがあたしの頭を優しく撫でる。


「うん、全部思い出したよ、会いたかったロイ。」


あたしは涙ながらにロイの顔を見つめる。

一目惚れだった。


ずっと、あなたと会える日を待ち望んでいた。


「俺も会いたかった」

ギュッとあたしを抱きしめるロイ。


体を離すとロイは

「ところで……今日は騒がしくないが、どうかしたのか?」と不思議そうに聞いてきた。


いつもは戦争で叫び声や、銃弾の音でうるさかった

けど戦争が終わった現在、聞こえるのは鳥の囀り

だけだ。


「戦争が終わったんだよ」


そう言うとロイは目を見開いた。


「それは、本当か?」


「うん、本当。大変だったんだからね!メイと一緒に王様に直談判に行ってさ。」


ちょっと怒ったふりをして見せる。


「ありがとう、アオイ」

優しく微笑むロイに毒気を抜かれる。


「でも、あたしが王妃になる理由

無くなっちゃったね」


沈んだ声で言うとロイは

「何を言ってるんだ。理由はある。」


「アオイ、俺はお前が好きだ」


突然の告白にあたしの顔は真っ赤

になっていると思う。


「あたしも……ロイスが好き」


あたしも自分の想いを告げる。


ロイは嬉しそうな顔になる。


「では、俺の妃になってくれないか?」


「もちろんだよ!」

あたしはロイに抱きついた。


嬉しくて涙が出そう。


ロイは幸せそうに微笑んだ。










終わり

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俺の妃になってくれ 藤川みはな @0001117_87205

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