第5話 ロイス
小さい頃、地球の日本という国に
迷い込んでしまったことがある。
怖くて泣いていると
「だいじょーぶ?」
と紺色の瞳の少女が心配そうに俺を見つめていた。
「綺麗だ」
「え?」
思ったことが口に出ていたことに気づき、
顔が熱くなる。
「な、なんでもない」
涙を拭い、立ち上がる。
「それにしても綺麗な赤い瞳だね」
無邪気に笑う少女。
この世界に来て気持ち悪いと言われていた俺の瞳。
それを綺麗だと言う彼女に何かが芽生えた。
「ありがとう」
「ところで、あなたお名前は?」
俺は魔族の王子。
異世界の人間に自分の身分を知られていいものか
迷った。
「俺はロイだ」
迷った末に偽名を教える。
「あたしは葵。よろしくね」
ニコッと笑うアオイがとても可愛らしかった。
「殿下、ここにいらしたのですね」
その声に振り向くとメイがいた。
「帰りましょう」
手を差し伸べるメイ。
「もう帰っちゃうの?」
アオイが瞳を潤ませる。
「アオイ、また会いに来るよ」
約束だ、とアオイと指切りをする。
「分かった、絶対だよ!」
それから十二年経ち、
女神の神託が授けられた。
『紺の瞳の聖女と魔王が結婚すれば世界に平和がもたらされるでしょう。』
戦争の最中なのに、アオイとまた会えると思うと胸が躍った。
そして、俺は異世界へと繋がる穴から落ちてアオイのもとへ向かった。
紺色の瞳を持つアオイに「俺の妃になってくれ」と
プロポーズをした。
「なんで、見知らぬ人と」など言っていたが
ほぼ強引にこの世界に連れてきた。
世界平和も望んでいるが、
俺はただ君を手に入れたかったんだ。
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