第3話 平穏な世界へ

「転…生…?」

転生とはなんだ

転生の2文字などこれまで1度も聞いた事がない


私は困惑しているが、彼女は私が転生を知らなかったことに困惑しているようだった。


「本当に知らないのかい?」

知らないものは知らないので私は聞いたこともないと返した。

すると面倒くさがりの癖に演技が上手い彼女は転生に着いて話して見せた。


「転生とは同じ世界線の中でしか出来ない物だ。そして更に未来へしか転移出来ない物でもある。過去の自分や、神にはなれない。」


なるほど、この世界のいつかの未来で新しく生まれ変わること、それが転生と言う物なのだな。


「転生については理解出来たが、1つ疑問が残る」


言ってごらんと彼女に言われ私は

「今の記憶は保持されるだろうか?」と聞いた。


「やはり君もそこを気にするのね。転生では記憶を持って生まれ変わることは出来ない。だが、稀に過去を思い出す者もいるようだ。彼らがどのようにして過去を蘇らせたのかは私にも分からないが…君も記憶についてはあまり気にするな」


「今の記憶は全て無くなるのだな。悔いはあるが、それも良いかもな。」


「そうかい。なら早速転生させてあげるね!」

彼女は唐突に緑生い茂る地面を固い茶色い地面に変え、そこに大きな黄色い魔法陣を映し出した。

「マ、マーリン待つのだ!!」

私は唐突な事で動揺した。

半分死人とは言え老体ゆえに心臓の鼓動が激しくなっている。

「ひ、1つ気になるのだが!転生先ではマーリンには会えるのだろうな?!」

私は必死に質問した。

この時私の下に映し出されていた魔法陣は光度を上げ続け、次第にマーリンの姿も見えなくなってきた。

そんな中彼女の声だけが聞こえた。

「私を誰だと思っているんだい?魔術師マーリン様よ!きっと会えるさ!」

それだけが聞こえると、私の感覚・意識が全て消えた。



「なるほどねぇ~。それにしてもかなりしゃべってたね!一時間半くらいかな?」


私は少し夢の話に夢中になっていたようだ。

「でも話はこれで終わりだよ。こんな夢を見れる私を羨ましくは思わない?」


私も一度くらい壮大な夢でも見てみたいなと、うるは私が見た夢をうらやましく思ったみたいだった。


次瞬きをした瞬間、スマホの"ラウンドテーブル"に通知が入ってきた。

反射的にその通知バーをタップすると"彼女"からのメールだった。


「あーなるほどね。ねぇ、うる。10時に外行かない?集合場所は…」


「いつもの場所でしょ?分かったー!じゃあ後でね~」


私は通話を切って外に出る支度を始める。

何気に起きたまま髪や顔などを整えていなかった。

洗面所で顔を洗い、髪をといて部屋に戻る。

可愛げのない黒い上着と灰色のズボンで自分を隠し、解いた長い髪をポニーテールにする。

右手首に黄金色の小さく軽い腕時計を装着し、右肩にブラウン系のショルダーバッグをかける。


そんなファッションで私は外へ向かった。



"いつもの場所"へ5分前に着くと同じタイミングで崖家うるがやって来た。

黄色がベースの半袖に腕を通し、短パンを履いて綺麗な健康的な色白の脚を長く見せている。

腰には昔小学生の間で流行った長袖を腰に結んでいる"アレ"がされていた。

元々彼女が明るい性格な持ち主なだけあって彼女らしい活発さを露わにする様な良いコーディネートだと思った。

彼女は

「お待たせ~!この格好するの久しぶりでちょっと嬉しいんだぁ!」

彼女はニカッと笑って見せた。

太陽のように眩しい可愛い笑顔だ。


うるの笑顔に浸っていると後方から聞き覚えのある声が響いてきた。

「アスカ!うるー!おー待ったせー!」

私とうるの名前を呼んだのはショートヘアで半袖に長ズボン姿の探鳥たんとりすみれだった。

相変わらずうるさい奴だ。

そして彼女のあとから追いかけてきた者もいた。


「すみれちゃん足速いよぉ~…。なんなら2人の姿が見えた瞬間私の事忘れたでしょ?!」

そうすみれに文句を垂れ流す運動音痴は雨田あまだながえだ。

肩まで伸ばした髪は風に少し煽られるだけでふわっと浮き上がる。

それほどに柔らかくサラサラに整えた髪を自然に任せている。

黒縁メガネをかけているがアレは伊達メガネだ。レンズは入っていない。


すみれはながえに文句を言われると男っぽく「すまない、許せながえ!」と中々に低くかっこいい声をながえの耳元で囁く。

するとながえは小さくキュウと鳴きながら顔を赤らめた。

彼女にとってすみれのイケメンボイスはツボになっているのであろう。

私からすれば何やってんだと思うところではあるんだが...


「はいはい。久しぶりにこの”円卓駅前公園”でみんなに会えたのはうれしいけど、ながえ!今日なんで私たちを呼んだのか説明してもらえるかな?」

ながえはスゥーと息を吸うと次の瞬間、そのすべてを吐き出した。

「今日はあすかちゃんの家でお泊り会をするのだぁ!」


私は驚きのあまり心の内で思ったセリフが口に出てしまった。

「うそぉでしょぉ!!??」

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ゆるゆる円卓活動日記! 澄豚 @Daikonnorosi

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