第3話 訳わからん



高校生の一日って本当にあっという間だ。

朝のスルメがさっきの事のように感じる。


今日もバイトなので、放課後に遊ぶ約束をしている友達を横目に私は急ぎ足で勤め先まで歩いた。


バイト先までは徒歩で10分程。

路地を入ったところの洒落た喫茶店で働いている。


夕飯の時間帯だが、バイトは基本平日なのでそこまで忙しくなくないのがこのバイトの利点だ。


いつものようにバイト先へとつづく路地を入ると少しの違和感を感じた。

自分の足の一歩一歩が何かに引っ張られているようですごく重い。


「なんか不気味だな…」


いつも通るときには不気味さなど一度も感じたことはない。もちろん霊感もない。


とりあえず怖いので走った。

いや、正しくは走ろうとした。

一歩目を踏み出そうとした時に地面がぐらりと揺れたのだ。


そしてそのまま私は暗闇の中に吸い込まれて行った。




ーーーーーーーーーーーーーーーー




そこは暗闇がどこまでも続いている。

何も見えない。

ここはどこ?



ポタ……ポタ…



水の落ちる音が辺りに響いて反響していることから、この場所が広く広がっている事がなんとなくわかる。


しかし自分の状況が全く理解できない。

バイト先に向かう途中突然地面が揺れた途端、暗闇に吸い込まれてしまったのだ。


「バイト…行かなきゃなのに…」


行かなきゃとは言ってもここが何処だかはわからない。戻り方も分からない。

迷子になったらむやみに動くなともどこかで聞いたことがある。


とりあえずバイト先に連絡を入れようとしたが、スマホには圏外の表示。


ここには電波が届かないらしい…非常に困った。携帯のライトであたりを照らしてみるが、周りに何もないのだ。ただただ、何もない空間が永遠と続いている。


不安と焦りが募る中、わたしは途方に暮れるしか無かった。









どれ程そうしていただろうか、


誰か通るかな?なんて期待もしていたが、誰も来ない。

ずっとここにいる訳にはいかないので、スマホのライトを頼りに、とりあえず出口を探してみる事にした。



「本当に何もない」


永遠と続く闇の中でひたすら歩いた。どれだけ歩いたかは分からないが、まっすぐまっすぐ歩いた。

しかし出口は愚か壁すらも見つからず、疲れだけが溜まっていった。



「痛ったーーーい!!!!」


スマホの時計は23時30分。バイト終了の時間を当に過ぎていた。

店長への言い訳を考えてたら突然右足に激痛が走った。


まるで炎で焼かれているかのような痛み。

もちろん焼かれたことなんてないけど、そんな感じの耐えられない痛みだった。


「…ぅ…なに…これ…」


痛みは増すばかり。

暗闇で自分の足がどうなっているかも分からない。耐えられなくなり崩れ落ちるように手を着くと辺りに炎が広がった。


暗闇だった辺りが一気に炎によって照らされていく。

何もないと思っていた周囲には数え切れない程のたくさんの目があった。


っ!?


なにこれ!なにこれなにこれ!!

たくさんの眼の正体は全てネズミだった。

足の痛みよりも気持ち悪さの方が勝った。


「気持ち悪いっ!!」


私が叫ぶとネズミが一斉に襲いかかってくる。


「やだやだやだ!!きも!!こないで!!」


もうダメだと思いぎゅっと目を瞑った。



…がいつまで経っても衝撃は来ない。


恐る恐る目を開けると、バイト先へと続く路地にいた。


「え?なんで…?」


もう訳がわからない。さっきまでのあれはなんだったのか。


そして辺りには焦げ臭い臭いが漂っていた。



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ある日、魔法使いになりました @1105saridog

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