第2話 スルメ
食堂へ向かう途中、ちょうど授業終わりの前島に遭遇した。
またあの大きな分度器とコンパスを持っている。朝のこともあったので素通りしようとしたら声をかけられた。
「スルメの花柳ー。」
名前の前にスルメ付けるなし。
「前島めっちゃ私に失礼」
「スルメに免じてお願いがあるんだけどさ、この分度器とコンパスを学習室に返してきてくれない?」
‘スルメに免じて‘とは?
普通に朝ごはん食べてただけなんですけど?
「断っていい?」
「スルメあげるからさ」
そう言ってポケットから取り出したのはコンビニとかで売ってる小袋のスルメだった。
何故?何故持ってるの?
そんなにスマートにポケットからスルメ出すやつ初めて見たけど!
まあスルメくれるなら分度器のお使いなんて安いもんだ。
私は二つ返事で引き受けた。ちょろいなー。
頼まれたのは私だが、巨大分度器とコンパスは綾が持ってくれている。
そして、周りの女子からの視線が痛い。そんなにスルメ女の噂が広まっているのか?
いや、多分こいつの隣を歩く私が邪魔なんだろな。
昨日も知らん女子に告白されてたし。
一応イケメンの部類に入るであろうこいつは全く気にもせずズカズカと歩いている。
「なぁ、お前最近ちゃんと食ってるか?」
「え?」
「いや、なんか最近痩せたなと思って。」
褒めてるのか?別にダイエットをしている訳ではないが、一応女子なので痩せたと言われたら嬉しい気持ちはある。
「あ、褒めてないからな?お前は元から細すぎなんだよ。昨日の夕飯は何食べた?」
んーなんだっけな。
「えーと、りんはお婆ちゃんの家で夕飯食べてきたよ」
「お前は?」
いや、まじで思い出せない。バイト終わった後何食べたっけ…
んーーー…
「あ、スルメ食べたわ」
「はぁ…親父さんが海外出張中だからって…親父さんにいい加減言いつけるぞ!」
「いやいや、それは勘弁!」
本当に過保護すぎなんだよこいつは!
別にスルメでも食べたんだからいいじゃんか。ちゃんと食べただけ偉い!
そんな話をしながら歩いていると学習室についたらしい。
「今日バイト何時?」
綾が扉に手をかけながら聞いてきた。
「え、5時時から9時」
「迎えいく。」
「いい。」
「迎えいくから」
真剣な目で見つめられてしまったら目が離せない…蛇に睨まれた蛙とはこの事か…
「はい…」
つい返事をしてしまった。
私が返事をするなり学習室の扉を開けて、前島に頼まれた物を片付けて戻ってくる。
「よし、飯いくぞ。」
「うぃ」
こいつには昔から全て見透かされている気がする。
あーー、腹へった
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