必死に生きる少女達(時々男性も登場)の多重奏的な物語

レビューをすることはおろかネットに書き込みをするのも初めてでして、読みづらい文章になっていると思いますが予めご了承いただければ幸いです。

これまでアイドル界隈の情報にほとんど触れたことがありませんし、オシを真剣に応援し追いかけるといった経験もありません。ですがこちらの作品を拝読して、テレビなどでご活躍のアイドルの方々を何やら感慨を持って眺めるようになりました。「あー、カメラの前で歌い踊るこのあどけない少年少女たちもそれぞれに人知れず努力を重ねて、色んな葛藤を抱えているのだろうか…」などなど。

それほどにこちらの作品には、これまでアイドルというものに興味のなかった人にも関心を抱かせてる力強さと、作品そのものに惹きつけられる魅力を感じます。
まず主人公達のほっこりするような日常と華やかなステージとその裏の苦悩と時に命に関わる緊張に満ちた場面と展開に緩急があって(若干、ジェットコースターな感が…)作品の世界に引き込まれました。
また登場人物達がそれぞれの視点から物語を進めていく構成となっています。どこかオーケストラのような多重奏的な印象を受けます。というのも各キャラクターの目線を通して、私たち読者は物語中に起こった一つの出来事に対してこれを幾重にも重奏的に捉えることになります。それがまた物語に深みを与えているように感じます。
各登場人物の描き分けが不十分だと文章が平板化してしまいそうなところですが、この作品では「この人ならこんなふうに考えるだろうな。こんな言葉を発するだろうな」と納得しつつ読み進めることができました。
これは原作者の方が各キャラクターと世界観の設定をかなり詳細に半端ないまでに作り込んだ結果だろうなと感じました。それも単に機械的にそれぞれの人物に細かな背景を与えるのではなくて、作者の方がメインの人物から脇を固める者、ひいてはほとんど物語の主軸に関わらない人々に至るまで相当な思い入れを持って描いていると言いますか…(月並みな言い方になりますが)原作者の方の並々ならぬ熱意が伝わってくるように感じました。一人一人の登場人物達、一つ一つの文章、そしてそれらが紡ぎ合わさって一つの物語となった、それぞれが原作者の方の産みの苦しみの結晶なのだと思わされます。
産みの苦しみと言っておいて恐縮ですが、続きが公開されるのがとても楽しみです。

物語の結末は私たち読者には全くもって分からないところでありますが、必死に生きている彼女達がそれぞれに希望を見出し、幸せになってほしいなと思いました。それほどに感情移入しつつ読ませていただきました。
駄文長文、失礼致しました。

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