真っ二つ地球

高黄森哉

別れる


 地球に亀裂が入ったのは日本では十二月だった。太平洋の真ん中、北極の軸から南極の軸までを引く線上に、地球は陥没したのだ。


 人々は、あの隕石のせいだと思った。それは、十一月に落ちた巨大な隕石で、それは、インド洋に落ちたのだった。


 調査団が分析に派遣される。その隕石が何で出来ており、そして、いかなる影響を地球に与えたのか明らかにするために。巨大な船は、ボーリング調査する。


 亀裂はどんどん深くなり、地球は二つのボールが仲良くめり込んだ形になった。亀裂に海水は集まって、真ん中の縦筋以外は干上がった。


 日本海が干上がったから、韓国や中国、ロシアと日本は地続きになった。そこで、多くのトラブルが起こった。


 例えば漁港だ。韓国や中国、ロシアは、今や内陸国であり、日本だけが海に面している。日本は三国に圧力をかけられ、港を貸さなければならなかった。


 あと、日本や台湾と大陸の間にある海が干上がった盆地を、どうするか、もめにもめた。もっとも、海峡やヘドロだらけで利用価値は乏しいのだが。


 赤道の国は、地球の直径が広がったことにより遠心力が増し、重力が減った。結果、メキシコではトウモロコシやマラカスが風に吹かれ、雨となって降り注いだ。


 そうこうしている間に地質調査が完了した。ボーリング調査の棒を引き抜く。すると、真ん中あたりに横筋が浮いているのが見て取れる。


 それは妊娠検査薬でいう陽性だ、というのが地質学者の見解で、つまり例の隕石は精子で、地球は卵子だったのだ。



 これがほんとの、


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真っ二つ地球 高黄森哉 @kamikawa2001

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