アイデア

高黄森哉

アイデア


 アイデアというのは、本来的には理路整然とした思考のことを指していた。それがあれで、あれはこう。だれでも理解できる。


 だんだんと、そのアイデアの創出は、洗練された。まともな人間が折り重なって、賢者がそれを整理して。アイデアは沢山生まれた。


 アイデアの消費は、文明の発達と共に加速していった。枯渇の方向へ。アクセルを踏みながら。枯渇の案内標識に従いながら。


 で、その、非常に言いにくいのだが、まともなアイデアは全て出尽くしてしまった。なにか新しいことをすると、必ず先行者がいるものだ。


 エッフェル塔の真下にも、カタコンベの上空にも、ペンタゴンの真ん中にも、貿易ビルの間にも。アイデアは隠れていない。簡単にアイデアは手に入らないのだ。


 その一方で、異常なアイデアは沢山あった。それが、だんだん評価されるようになってきた。今までにないからだ。焼き直しでないからだ。


 創作者は、安直にも飛びついた。アイデアの過酷なる探究をやめ、即物的、俗物的アイデアを、次々と世に出していった。それが、どのような作用を及ぼすか考えず。


 核戦争とか、少年犯罪とか、異常性癖とか、麻薬中毒とか、集団暴走とか、現代美術とか、純文学とか。すっごくエスカレートしていった。


 そんな世の中は、段々と、気が狂うんじゃないか。そんな創作が溢れた世の中に生まれた子供たちは、気が狂うんじゃないか。キガ、クルウンジャナイカ。


 どうして、そんな単純なこと、創作者は考えなかったんだ。それも無理もないか。小細工無しでは、アイデアを出せないレベルの人々だ。


 ほら、いわんこっちゃないぞ。首相が暗殺された、戦争が始まった、パンデミック、政府を操る新興宗教、CIA。


 ………… それは、関係ないだろうが。でも、少年犯罪や、異常犯罪、倒錯性癖、虚構現実視、空虚さ、鬱病あたりは、責任がありそうなものだ。



 どうしてくれるんだ。

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アイデア 高黄森哉 @kamikawa2001

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