第36話

 シエラさんに会いに行った翌日から、ウラナシ組合に所属している娼婦さんが来店してくれるようになった。


 シエラさんがそのように伝えてくれたからだろうけど、それだけ娼婦さんたちのことを心配していたのだろうね。


 すべてではないが、初めて見る娘には身体のどこかしらに悪いところがあった。


 ただ、自覚症状はまだないようでケアスキルを使うと不思議そうな顔をしていたね。


 でもね。俺にも不安はあったんだ。それは上の立場の人(上司的な人)に指示されたから仕方なく来店した。というような娘もいるんじゃないかとね。


 今のところは、そんな感じにみえる娘は見かけていないけど……もしかして、みんなお客様相手の商売だから愛想がいいだけとか? やめよう。考え出したら胃が痛くなってきた。


 そんな感じだけど、娼婦の娘が来てくれるから指名がもらえない日がほとんどなくなった。

 売り上げだって確実に伸びているからオーナーから首を切られる心配もなくなった。俺にとってはいい事だらけだ。だからね、それがなんだか申し訳なくてしかたないだ。


 だって初めて見るような娘はあまり売れていない娘がほとんどで着ている服装もとても質素なんだ。


 だから、ケアだけしかするつもりがなかったけど、着ている服や靴なんかにもクリーンしてリペアまでやっちゃったよ。


 幸い、店内は薄暗いから気がつくのは帰ってからになるだろうけど、これくらいのサービスはいいよね? おもてなしは大事だし。


「ゴローさん、きたよ」

「やほー」

「えへへ」


「あ、この前はお世話になりました」


「ウチらは何もしてないんだけどね、あはは……」


「そうそう、ゴローさん、サービスするから今度は指名してよ」


「私でもいいよ〜」


「あはは……そう、ですね。その時はよろしくお願いしますね。って、立ち話も何ですから、中にどうぞ」


「えへへ、私たち今日はお茶だけなんだけど……ごめんね」


「ぜんぜん大丈夫。来てくれただけて嬉しいから」


 今日はシエラさんのお店の娘たちが来てくれたようだ。

 この娘たちは一度だけ奥を利用してくれたんだよね。お金が貯まったらまた来るよって社交辞令でもうれしかったんだよね。


 実は、お茶だけでも楽しめるようにカフェっぽいメニューも考えたんだよね。

 ほら、俺が子どもたちに配っているパンケーキもどき。それにホイップクリームをかけるんだ。


 ホイップクリームも甘さ控えめなら砂糖も少なくてすむからさ、それでもあまりいっぱいはかけてやらないけど、なかなかいい出来だよ。


 少し値段は上がるけど、フルーツのトッピングだってできるようにしている。


 ほかにもメニューを考えたいところだけど、低価格で食べてもらえるのがいいから今度街の中をぶらぶらしてみようと思っている。


「お待たせしました。紅茶とパンケーキになります」


「わあ」

「これがパンケーキなんだ」

「美味しそう」


「「「んん〜おいしい」」」


「あはは、ゆっくりしていってくださいね」


 と言いつつみんなにケアスキルと、クリーンと、リペアを使っていく。


 みんながパンケーキに夢中になっているから、気づかれる事なくスキルが使える。

 

 ——ふふふ。


 手が良くスキルが使えるようになっている自分が誇らしい。ケアとクリーンとリペアにおいては職人の域に到達してるんじゃないだろうか。なんてね。


「ゴローさん、おいしいよ〜」

「私、このホイップクリーン? が好きだな」


「私も気に入っちゃった。でもゴローさん、これって採算合うんですか? 私たち的にはお手頃価格でうれしいけど」


「あ、それ私も思った」


「そこは大丈夫。心配しないでください」


「そう? ならいいけど、あ、でも足りないって言われたら身体で払うしかないんだけどね。あはは」


「そんな事にはならないから。大丈夫ですって」


「あはは、ゴローさん顔が真っ赤」

「かわいい〜」


「みなさんが変な事言うからですよ」


「あはは」


 しかし、ウラナシ組合に所属しているお店がどれくらいあるのか詳しくは知らないけど、不思議とみなさん、被らないように来店してくれるからありがたいよね。


 懸念があるとすればレイラさんやアンナさんだ。

 レイラさんとアンナさんはウラナシ組合とは関係ないから、いつか被るんじゃないかと不安しかない。


 特に最近は、討伐依頼を頻繁に受けているらしく、しかも泊まりがけ。だからいつ来店されるのかまったく分からない。


 あ、来てくれるのは間違いないんだ。森の砦に行った後も俺の水筒を必ず持ってきてはクリア水(面倒なのでそう呼ぶことにしている)を購入してくれるようになったからね。実際はいらないと言っても勝手にお金を置いていくんだけど……


 ——今日も試してみるか……


 普通の男娼さんは、指名があり奥に入っている場合は別の男娼さんが相手していたりするけど、俺の場合は治療も目的の一つとして来店してくれる娘がほとんどだから、他の男娼さんにはお願いができない。

 

 だから、アイススキルで作った氷を作る際にケアスキルも同時に使ってみたり、お冷で出す水にケアスキルを使ってみたり試しているんだ。


 他の男娼さんの常連さんは女性冒険者が多くケガも結構していたりするからね、帰り際に元気になっていれば成功って思えるんだけど、彼女たちは必ず奥の方に行くからなかなか確認しづらいんだよね。っいうか、なんですかあれ、え、今は流行り?


 なんか知らない間に、女性冒険者4人パーティーのみなさんと、ウチの男娼さん1人。奥に入っていったんだよ。


「ばーか。元々はお前が始めたんだろ」


「え、俺が?」


 どうやら俺がレイラさんとアンナさん2人を連れ込む? ところを見た他の常連さん(女性冒険者)が同じような指名をするようになったとか。セット料金なるものができていてお互いウインウインなのだそうだ。


 ——なるほど。そういうことか。


 雑務(クリーン作業)の時、他の男娼さんからケアスキルもしてくれと頼まれる事が増えた理由が分かった気がした。



※更新が遅くなりすみませんでしたm(__)m

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クラス転移に巻き込まれ用務員は魔力が0だった。 ぐっちょん @kouu

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