私に明日なんか存在しない。

 4月、桜の花びらが散る正門をくぐるとそこには「私立 山田中学校 入学式」

 の立て看板。ついにこの日が来た。ママは珍しく派手な服装、新品未使用の制服全てが新しかった。この気持ち以外は.....

「新入生のみなさん、明日は明るいです、明るい明日に向かって翔び立ちましょう!!!」

「.....」

〈何が明るいだよ、何が明日だよ...私に明るいなんて無いんだよ明日なんてないんだよ、明日は私にとって悪い日なんだよ悪日(あした)だよ悪日、HAHAHAHAHAw欺くんじゃないよ〉

そんな感じで入学式は終わった。


入学式が終わり教えられた教室に入った。すると、空気が一瞬で重くなり、みんなの目が私に集まった。

〈どーせ、中学校でもいじめられるに決まってるそんなの知ってる〉

 担任の柳村倫子が入ってきた。その姿はとてもキリッとしていて私とは180°違くてなんかイライラする。

その日は取り敢えず家に戻った。私は四畳半程の部屋に寝そべる。夜も1人。ママは理大の研究員で一日中研究に没頭している。酷い時は朝方に帰ってきた時もあった。

だから自炊ぐらいはちょちょいのちょい。でも、周りはみんなお母さんが作ってくれるらしい。

〈どうして私だけ.....〉

 慣れたことだけど孤独に押しつぶされそうだ。

翌日、ぎこちなく制服を着て、バスに乗った。普通の中学校はバス通なんて有り得ないだろうから、ちょっと得した気分だ。学校に着き、上履きを履く、こんな動作、久しぶりだ。


ホームルームが終わり、一時間目の理科が始まる。生物の授業だった。

担当は、あの厄介な柳村だ。

「皆さんは、コザクラと言うインコを知っていますか?」

 知っているに決まっている。だってこの前見たから。

「コザクラというのは梅雨の時期から秋の始めにかけて見られるもので種子食です。別名ラブバードと言うんですって、素敵な名前ですね」

〈ラブ...愛...そんなもん私は持ってない〉

 そして柳村は黒板にその写真を貼った。

〈はっ...これってあの時のコザクラ...〉

私はなぜか此処から逃げ出したいという衝動に駆られながらも外の空を見上げた。

「では、理科っぽくない話になりますが、なぜコザクラがラブバードと呼ばれるのでしょうか、うーん...杉岡さん、答えてください」

〈えっ、なんで私なの?〉

 私は呼び掛けに無視し、外を見る、すると、そこにはコザクラがぽつんと私を見つめていた。

「杉岡さん、答えてください」

私は「嫌だ!!!」

と言い、席をたち廊下に駆けだす。

〈もう、こんな授業なんて嫌だ!〉

すかさず柳村は私の後をついてくる。

しかし私はさっさと下駄箱で靴を履き、校庭に出た。流石に柳村も走る。すごい勢いで。

〈すごい勢い、体育会系?〉

「ドサッ!」

最終的に羽交い締めにされた。

〈教育者の立場の人間がこんな事してどうするんだ〉

 でも、これを訴えようとも、撮影者も目撃者も居ない。世の中不都合なものだ。

「離せっ!」

「うるさい!」

2分ほど揉み合いが続いた。その後、それを見た別の男性教師が駆けつけ、2人の体を引き離した。

暫くして、私は否々乍ら教室に戻ったお陰で制服がボロボロだ

〈またママに叱られるのか〉

私はその時思いついた。私が「遺書」って書いて、これまでの事全部書いて、机の上に置いてどっか遠いとこへ逃げるか、それともこの身ひとつ地獄に身を投げるか。私には2枚のカードが渡された。

でも私にそんな勇気等ないよ。逃げるって言ったってどこを彷徨うのかわかんないし、死ぬの怖いし。

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コザクラの鳴く先に さとる @satoru_shosetsu

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